ロッキー・マルシアノ(米国)49勝無敗。【世界ヘビー級王者】評価A

〝無敗王者のまま引退〟。このテーマを語るとき、必ず登場するのがマルシアノです。

49勝無敗の記録は、フロイド・メイウェザーJr.が、プロボクシング経験ゼロのど素人コナー・マクレガーを倒して更新するまで半世紀以上に渡って不滅の大記録でした。

ジョー・ルイスの偉大な時代が終焉し、ヘビー級のレベルが下落、中量級でシュガー・レイ・ロビンソンが恐るべきパフォーマンスを魅せていた50年代に活躍した〝ブロックトンの高性能爆弾〟は、歴史的な評価こそ低いものの(と言ってもあくまで無敗のUndisputed Championという数字と肩書きにしては、ということですが)、米国ボクシング全盛期でロビンソンを大きく凌ぐスーパースターでした。

その勝ち数に届かない、45歳という若さでセスナ機墜落によって幕を閉じたマルシアノの人生は、ドラマティックな生き様を見せてくれるボクサーの中でも際立ってカラフルなものでした。

少年時代は野球の天才、ボクシングプロデビューは1947年3月のことでしたが、この同じ月にシカゴ・カブスの入団テストに合格、マルシアノもまた〝二刀流〟だったのです。

しかし、カブスのマイナーで3週間プレーしますが、戦力外通告を受け、ボクシングに専念。

ここから、不滅の大記録への伝説が始まります。

1951年、伝説の元王者ジョー・ルイスとのメガファイト。28歳の〝ブロックトンの高性能爆弾〟と、37歳の〝褐色の爆撃機〟の対決は、残酷な世代交代の見本のような試合になりました。

自らのアイドルを殴り続け、8ラウンドにリング外に叩き出したマルシアノは、試合後の会見場で人目を憚らず号泣します。

ロッキー・マルシアノ!

酔っ払ってるので、話は脇道に逸れます。しかも私は馬鹿だから、名前だけでメロメロになることがあります。

ジョン・L・オサリバン、シュガー・レイ・ロビンソン、ロベルト・デュラン、マービン・ハグラー、ヘクター・カマチョ、オスカー・デラホーヤ…単なるカタカナの音で、実際にはハグラーは「ヘイグラー」と発音しますし、ボクマガでもそう表記していましたが、そんなの関係ねぇ!です。

もう、名前からして強そうじゃないですか!

ロッキー・マルシアノ、ロッキーでマルシアノなんです。しかも、本当に不憫なほど小さな体で無差別級を支配し、無敗のまま引退したのです。

井上尚弥が来月戦うジェイミー・マクドネルと1㎝しか変わらない身長179㎝、リーチはそのバンタム級王者よりも10㎝も短い173㎝、80㎏をやっと超える体重は前日計量の今ならミドル級のボクサーでも軽くリバウンドする数字です。

この、伝説の無敗王者は、21世紀ならウェルター級で戦っていたかもしれない小さな体格に加えて「強い相手と戦っていない」という批判からも過小評価を余儀なくされてきました。

しかしルイスを倒し、ジョー・ウォルコットからタイトルを奪い、エザート・チャールズ、アーチー・ムーアを相手に防衛と、4人もの殿堂ボクサーに勝っているのです。

マイナーリーグとはいえカブスの球団テストに受かり、小さな身体でヘビー級のUndisputed Championとして君臨した才能は、どう考えても尋常なレベルではありません。
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リング誌2017年5月号=「ヘビー級歴代最強は誰だ?」

「50年代はヘビー級のレベルが低かった」というのは、ジョー・ルイスとモハメド・アリの時代に挟まれたがゆえの相対評価に過ぎません。

そもそも米国でボクシングが最も活況を呈していた1950年代で、レベルが低いわけなどあり得ません。

リング誌の「ヘビー級歴代最強は誰だ?」で、マルシアノはアリ、ルイス、ジャック・ジョンソンというボクシングを超越した時代を代表するグレートに続く4位にランクイン。

ソニー・リストンもジョージ・フォアマンもジョー・フレイジャーも、マイク・タイソンも、その時代では地上最強と信奉されたファイターも、マルシアノの後塵を拝しているのです。

リング誌のマルシアノの評価は正しい!上から目線ですみません。

例えば、マルシアノとタイソン。お互いの時代に入れ替わっていたとして、80年代に全盛期を迎えたマルシアノはタイソンよりも強いファイターに成長していたでしょう。

タイソンが過酷な50年代に放り込まれたら、現実以上に精神的な脆弱さを曝け出して、悲惨なキャリアを送っていたことでしょう。

それでも、個人的にはマルシアノは最高評価は出来ません。それは、マルシアノの責任ではなく、米国メディアの責任です。

「無敗王者」を担ぎ上げる前に、もっと評価しなければならないことがあるはずなのに。

マルシアノがあまりに魅力的だったがゆえに「無敗王者」、もっと正確に言うと「49勝無敗」を特別視したとしても、米国メディアは良くない、です。