ケース④マネーの算盤(大成功)
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リング誌電子版2009年9月14日11:03pm 「メイウェザーが戦うべきだった10人 (アルファベット順に)ホルヘ・カサマヨル、ミゲール・コット、レオナルド・ドーリン、アセリノ・フレイタス、スティーブ・ジョンソン、アントニオ・マルガリート、シェーン・モズリー、マニー・パッキャオ、ポール・スパダフォーラ、コスタヤ・ジュー」


フロイド・メイウェザーJr.。古今東西、このボクサーほど数多くの対戦相手から「逃げた」とメディアやファンから糾弾されたボクサーはいないでしょう。

恐らく、その原因はメイウェザーがハメドのように強豪を怯懦してしまったからではありません。

一つには、「マネー」のヒールキャラを演じるためのスパイスの一つだったことは間違いないでしょう。

もう一つは「(コットと)やってもビジネスにならない」という決まり文句も、パッキャオ戦を除く全てのケースで真実を突いていました。正確に言うと「(今、コットと)やってもビジネスにならない」ということです。


では、パッキャオに対しては本気で怯えて逃亡したのでしょうか?フロイド・メイウェザー・シニアが「フィリピンが国家ぐるみで開発した薬物を使っている」と狂乱したように、ジュニアもパックマンの説明不可能の強さに恐怖して、ライバルが衰えるのをじっと待っていたのでしょうか?


「ハグラーが衰えるのを私が待っていた?なるほど、あなたはハグラーだけが歳をとると信じているのか?」。レナードの言葉を借りると、確かに時計は誰にも平等です。

しかも、ハグラーとレナードの関係とは逆に、メイウェザーが年上でパッキャオが年下。時計の針は、メイウェザーの肉体に、より残酷に突き刺さるはずです…。


時計の針を2008年12月6日に巻き戻します。

MGMグランドガーデナリーナから系列のマンダレイベイのボールルームに場所を移した試合後の記者会見。THE DREAM MACTHのポストカンファレンスです。

精密検査のため救急車で病院送りになったオスカー・デラホーヤは「6人の敵と戦っているようだった」「パンチの出所が見えなかった」という短いコメントだけを司会者に託して、会見を欠席してしまったので、質問を受けるのはマニー・パッキャオと、フレディ・ローチだけでした。

ーまた歴史的な大番狂わせを起こしました。次の試合はすでに交渉がまとまっていると言われるリッキー・ハットン戦、その次は同じプロモーションのミゲール・コットが候補に挙がっていますが、いずれもすでにオッズは大きく有利です。

ここからあとは、ビッグイフの世界です。

ローチ「番狂わせを起こせないのは物足りないですね、でもご安心を。パックマンは次の試合でも番狂わせを起こしますから」

ー今のウェルター級でパッキャオがオッズで不利になるボクサーはいませんが?…いや、…1人だけいます…、しかし彼は引退状態です…まさか?」

ボブ・アラム「すでにフロイドから完全合意のサインをもらってる。あとはここにマニーがサインしたら契約成立だ」

…もし、メイウェザーvsパッキャオが最短の2009年に実現していたら?

パックマンがまだ命知らずの踏み込みから壊滅的な拳を繰り出していた2009年。

メイウェザーの足がまだオリーブオイルのように滑らかに動いていた2009年。

もし、あのメガファイトが、考えうる最も早いタイミングで実現していたなら…。

まだHBOがメイウェザーとパッキャオとの関係が強固だったときです。PPVの売上は400万世帯、両者の報酬は合計1億5000万ドルになると言われていました。


しかし、6年間焦らして実現した現実世界では440万世帯のPPVを売り上げ、報酬は合わせて3億ドル超、〝ビッグイフ〟を上回る商業的な成功を収めました。


それでも〝ビッグイフ〟は2009年です。メイウェザー32歳、パッキャオ30歳、第2戦、第3戦が期待できる時間が十分残されていました。

初戦を上回ることはなかったかもしれませんが、それなりのメガファイトになったはずです。

もし、第2戦も初戦と同じ報酬というマックスの試算で考えると、2戦合わせた両者のファイトマネーはちょうど3億ドル、〝現実〟の数字に並びます。

しかし、それでもメイウェザーとパッキャオ、二人を「チーム・マネー」として考えると、やはりこの6年に及ぶ引き延ばし工作はビジネスとして大成功だったと言わざるを得ません。

旬の激突を見れなかったボクシングファンや、一般のスポーツファンを取り戻す大きなチャンスを逃した業界にとっては全くもって苦々しく、腹立たしいことですが。

ここからは試算ではありません。最短での激突を避けたばかりか、6年間もファンのリクエストを無視した2人は、この犯罪的に長い時間を有効に活用して、超の付くローリスクハイリターンの試合を繰り返し、とんでもない荒稼ぎをしたのです。
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「チキンウェザーがパッキャオから逃げた」。真実はそんな単純ではありません。パッキャオもまたTHE MONEY TEAM の片割れです。

もし、2009年に激突、そこで決着がついていたら、一方の商品価値が暴落していたことは間違いありません。勝ち残った方も、最大の果実をもぎ取ってしまったのですから、ミドル級制覇に乗り出すような大きなリスクを犯さない限りハイリターンは望むべくもありません。

しかし、現実には「次こそ」「今度こそ」とファンに期待させながら、このボクシングファンの幻滅の6年間でメイウェザーは10試合、パッキャオは12試合もローリスクハイリターンの試合を性懲りも無く繰り返したのです。
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プロレス団体WWEのビッグイベントレッスルマニアXXIVにも参加したメイウェザーは、ビッグショーにパンチを浴びせ鼻の骨を折りました。もちろんプロレス的な演出ですが、メイウェザーのヒール役は天下一品です。

メイウェザーは、2009年からファン・マヌエル・マルケス、シェーン・モズリー、ビクター・オルティス、ミゲール・コットとの4試合で1億ドル以上を稼ぎ、2013年にはShowTime/CBSと6試合2億ドルの破格の契約を締結(現実にはPPV歩合が加算されるため4億ドル以上を稼いでいます)、この6年間で5億ドル以上の報酬を手にしているのです。

パッキャオ戦で稼いだ2億ドルは1試合で考えるととんでも無い数字ですが、パッキャオ戦を除いた9試合で得た5億ドルは、“焦らしまくった6年間”によって産み出されたと言い切ってよいでしょう。

パッキャオにしても同じです。2009年にメイウェザーに負けていたら、リッキー・ハットンやコット、モズリーらと戦った11試合、合計約4億ドルの報酬は半分以下になっていたかもしれません。

ファンを無視したアスリートがスポーツ史上最高の報酬を手にする…絶対にあってはいけないことが、起きてしまったのです

フロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオ。2人はボクシングを殺しました。ボクシングとボクシングファンは敗者です。

そして、口惜しいかな、スポーツビジネスの歴史においては2人は傑出した成功者であり、勝者なのです。