5月20日、有明コロシアムで行われたアッサン・エンダムvs村田諒太の第1戦は、大方の予想を真っ向から裏切る結果となりました。

ガードの固い村田と〝起き上がり小法師〟のエンダムの対決は「判定にもつれ込む」のが濃厚と予想され、その結果も、エンダムが村田を明白に圧倒しない限り、地元判定で村田に勝利が転がり込む、と考えられていたのですが…。

リング誌をはじめ海外メディア、ほとんどのブックメーカーが「村田勝利」を推した最大の根拠は、五輪金メダリストの実力を評価しただけではありません。「微妙なラウンドは全部、村田が持って行く」。そう考えられていたのです。

そして、もう一つの予想。何人ものミドル級のトップと拳を交えてきたエンダムに対して、村田が世界のトップ10と戦うのは、この時が初めて。「村田は勝利を収めるだろうが、簡単な試合にはならない」と言われていました。

「判定勝負」という予想こそ当たりましたが、しかし、その内容は全く正反対のものでした。

「ジャパンマネーが結集して支援する村田には、地元判定の強烈な力学が作用する」「ピーター・クイリンやデビッド・レミューがそうだったように、村田は簡単には勝てない」。いずれの予想も、完全に覆される結果になったのです。

リング誌もESPNもほぼ全てのメディアが、ついでに〝お前が言うな〝のヒルベルト・メンドサWBA会長までもが、大差で村田が勝っていたと、公式のジャッジを批判しました。

この結果を踏まえて、22日の再戦は、より村田有利の予想、オッズが立てられています。「村田がエンダムをKO出来るかどうか」、それが焦点になっている感すらあります。


【村田勝利は1.2倍、エンダム勝利は3倍、アバウト3−1で、村田有利のオッズが立ち上がっています。この数字通りに試合が展開されて、正しいジャッジが下されることを願います…というより今回はジャッジ不要の試合にしてほしいですね。】

村田の右の威力は階級屈指だが、エンダムには目立った武器はない。

確かに、エンダムは長らくこの階級のトップ戦線を戦い、その実力の輪郭線はハッキリしています。「スピード、パワー、テクニックは世界基準としては平均点だが、打たれ強さ(回復力)は全階級を通じても最高クラスで、ミドル級では図抜けている」。

クイリンのパワーパンチを受けても、レミューの強打を食らっても、驚異の回復力で反撃してきたエンダムですが、村田の右ショートで倒されたときのダメージからの回復には、最も時間がかかりました。

村田の右を過剰に警戒いたことから「キャリア最強のパンチャーだつたのか?」と問い詰められたエンダムは「クイリンやレミューの方がはるかにパンチがある」と躍起になって否定していましたが、当面の試合相手について本音を吐くボクサーは稀です。

一方で気がかりな点もあります。一発のパワーとガードの固さ、プレスの掛け方は世界トップレベルであることを証明したものの、手と足のスピード、パンチの回転力はエンダムに劣っていました。

もちろん、パワーボクシングの村田は、軽快なフットワークを駆使して、速射砲のようにパンチを打ち込むスタイルではありません。スピードや回転力を前面に出して勝負するボクサーではないなです。

しかし、カネロ・アルバレスやゲンナディ・ゴロフキンらとのメガファイトに勝利する村田の姿を夢見るファンとしては、これまでの試合から引き出しが少ない印象が見て取れるのは、少し気になります。

また、カネロとゴロフキンがともに打たれ強さ、強靭なアゴの持ち主であるのに対して、村田のアゴはまだ一度も試されていないことも、今後の心配材料の一つです。

とはいえ、エンダムがその実力を丸裸にされているボクサーなのに対して、村田の輪郭線はまだまだ明確に見えていません。〝そのとき〟が訪れたら、スピードを見せ、高速回転のパンチを放つこと、ゴロフキンのパンチをアゴに受けてもひるまず反撃する姿を期待しましょう。

プロよりも遥かにパワーとスピードが濃縮された3ラウンドの世界で、4年に1人しか許されない五輪金メダルを掴み取った男に、その能力が欠如しているわけがありません。