9月9日、井上尚弥が米国初上陸を果たす、HBO BOXING AFTER DARK、SUPERFLY まであと1ヶ月。

リング誌電子版で対戦相手のアントニオ・ニエベスが紹介されていたので、そのまま拙訳しちゃいます。

★★★ニエベスは、プロキャリアを通じて一貫したルーティンを守ってきた。起床したら早朝ロードワークに出かけ、帰宅したらすぐにPNC銀行に向かい住宅担保融資の銀行マンとしてフルタイムで働き、業務を終えたらストロングスタイル・ジムでプロボクサーとしての練習に励む。

プロボクサーと銀行マン。二つの顔を持つクリーブランド生まれの30歳は「みんなから大変なのによく出来るなと感心されるけど、ずっと続けていることだから苦にならないよ」と笑う。

しかし、キャリア最大の試合を控えてニエベスは銀行の仕事を休み、無敗の日本人に黒星をつけるべくボクシングに集中している。

HBOが全国生中継するBOXING AFTER DARKの興行、世界タイトルマッチの舞台に自分が選ばれたことに、ニエベスは驚きを隠せない。

「直近の試合(NABOバンタム級タイトルマッチ:ニコライ・ポタポフ戦)で負けているし、何よりジュニアバンタム級で戦った経験が一度もないしね。スーパーフライじゃないんだけど、スーパーフライって興行に出るんだから、驚きだよ」。

確かにニエベスはフェザー級でプロデビュー、最近はジュニア・フェザーかバンタムで戦っているが、ジュニアバンタムでリングに上がったことは一度もない。

井上の咬ませ犬扱いされていることについては「それだけ評価の高い相手と戦えるのはモチベーションが上がる。井上はほとんど見たことなかったけど、今回の試合が決まって調べてみると好きなように戦っているね。彼の思い通りにさせないこと、嫌がることをやることが作戦になる。こっちはジュニアフェザーやバンタム級で戦ってきたから、体格的には有利、体力で押し込んでラフな展開に持ち込みたい」。

長年、ニエベスのトレーナーをつとめてきたジョー・デルガイドは「速いし、パンチがあるのは認めるけど、対戦相手はやる気がないように見える。デビッド・カルモナなんかは勝つ気が無いじゃないか。今回はそうはいかない。井上は東京から出て戦ったことがない。彼が、東京以外の場所で同じように戦える保証はどこにもない」と、日本最高のボクサーにも付け入る隙があると考えている。

ニエベスが初めて格闘技に触れたのは、両親にマーシャルアーツの教室に連れられていった7歳のとき。次にキックボクシングを始めて、それからボクシングの道へ進んだ。両親のルーツ、プエルトリコの英雄、フェリックス・トリニダードに夢中になったニエベスは、次第にこのスポーツにのめり込んでいく。

ニエベスによるとアマチュアでは約90戦をこなし、クリーブランドのゴールデングローブ大会で5度優勝、2011年には全米ゴールデングローブで2位になりロンドン五輪出場にあと一歩まで迫った、とのこと。

デルガイドは「中学時代から野球部のスター選手で運動神経は抜群、勉強も出来る優等生だった。チャンセラー大学に進学したニエベスから『プロボクサーにななりたい』と相談を受けた時は、卒業が先だと止めたんだ。卒業式に参列した私を見つけたニエベスは『さあ、約束を守ってくれよ。今日から私はプロボクサーだ』と駆け寄ってきたんだよ」と呆れ顔で、ボクシングへの情熱の炎を絶やさなかったニエベスを回想している。

いきなり飛び込んできた世界タイトルマッチ。ここで勝てば、ニエベスが描く大きな目標を叶えることが出来る。

ニエベスが目指すのは、ストロングスタイル・ジムで「二人目の現役世界チャンピオンになる」ことだ。

一人は、スティーペ・ミオシッチ。UFCのヘビー級王者。ボクシングで五輪を目指していた二人は長年の大親友で、ニエベスもアマチュアながらMMAの試合経験があるという。「キックボクシングと聞いてたのにMMAの試合だったんだ。びっくりしたけど、もう出るしかないし、なんとか引き分けに持ち込めたよ」。

銀行マンとボクサー。二つの顔を持つ男に生涯最大のチャンスが、突然舞い込んできた。

ニエベスの仕事は顧客の資産を有効活用することだが、井上から番狂わせを起こせば彼自身の口座もまた、しっかり潤うことになるはずだ。★★★

…これまで一度も115ポンドの体重を作ったことがないニエベスにとって、減量をクリアするのも大きな課題ですね。減量で衰弱してしまうようなら、勝ち目はありません。

また、順調に115ポンドまで落とせても陣営が期待している「体格差で押す」ことは難しいでしょう。井上自体がリバウンド効果を最大限に発揮してパワーを解放するタイプなだけに、身長(井上164㎝/ニエベス163㎝)とリーチ(171㎝/174㎝)でも大差なく、体格での優位性はありません。

それどころか、ニエベスは前日計量から大きくリバウンドするタイプでないだけに、当日のリングでは井上の方が重い体重で上がることになりそうです。

初めての海外、というのも精神的には問題ないでしょう。ただ、リバウンドという点では、じっくり体重管理できた日本とは違うスケジュールで体重を落とすでしょうから、同じように増量して元気な肉体でリングに上がれるかどうか。

また、いつもと違う減量スケジュールだけに、ピーキングにも影響が出るかもしれません。

日本のリングに上がる井上尚弥のままで、9月9日のスタハブセンターに登場するのなら、何の問題もないでしょう。

しかし、思うようなリバウンド効果を上げられず、ピークも外してしまうようだと、もたついた試合になることも予想されます。

ストロングスタイル・ジムで技を磨き、あのミオシッチが同門で大親友というのも何だか不気味です。ミオシッチは、スケジュールさえ合えば大親友の応援にスタハブのリングサイドに駆けつけて、194㎝120㎏の巨体を揺さぶり大声援を送るでしょう(これも楽しみですね〜)。

しかし、最近はボクシングだけでなくMMAも含めた格闘技全般を練習するジムが増え、そこを拠点とするボクサーも増えました。フレディ・ローチやワシル・ロマチェンコらがボクシング技術をMMAに提供、スポーツの世界でボーダレス化、交流が進むのは悪いことじゃありません。

自国で戦うとはいえ、コンディション面で不安を抱えるのは、初めての115ポンド戦となるニエベスの方でしょうが、井上にはベストに仕上げてもらいたいですね。

井上勝利は間違いないでしょうが、全米デビュー戦です。メインイベントを喰うような圧倒的な戦いぶりを見せて欲しいですね。

米国では人気の低いジュニアバンタム級を中心に興行を打つ冒険的な試みだけに、視聴者数が心配ですが、BOXING AFTER DARKは100万人以上が視聴することもあります(古い話ですが2013年のマイキー・ガルシアvsファンマ・ロペスはピーク時130万人が視聴しました)。

ここは、一発!多くの米国のボクシングファンに、井上尚弥の頭抜けた強さを見せつけてやりましょう!