2年近いブランクがあり、今年で37歳になるコットに全盛期の実力が無いことは明らかです。

加齢によって最初に失われる要素はスピードだと思われがちですが、現実には「反射」です。技術や理屈ではなく、反射的に防御したり、攻撃に転じたりする一瞬の反応は加齢によって真っ先に鈍化してしまいます。現在のマニー・パッキャオはその典型です。

次に衰えるのが「動体視力・視野」です。全盛期のフロイド・メイウェザーは相手のつま先(実際に動きだす方向)と目(フェイント)を同時に見ることが出来たと言います。余程の距離を取ればありえますが、マネーは接近戦でも見えたと言うのですから驚きです。これは川上哲治の「ボールが止まって見えた」と同じ話ですね、現実にはありえないことです。そして、その超人的な〝動体視野〟が衰えてからは、防御優先のタッチボクシングに傾倒していきました。

加齢によってじわじわと進行するのが「打たれ脆さ」です。激戦を重ねることで、鋼鉄のアゴでもグラスジョーに変質してしまいます。鋼鉄のアゴと聞いてすぐ思い出すフリオ・セサール・チャベスも、エリック・モラレスも、晩年は打たれ脆くなりました。

さらに、脚のスピードと、試合でのスタミナも年齢とともに失われてしまいます。練習のインタバルで若い頃よりも速いタイムで走れても、現実のリングではその脚は動いてくれません。パッキャオもメイウェザーも、そしてコットも加齢に伴い省エネボクシングに傾いていきました。

しかし、ハンドスピードの喪失の執行猶予は、意外なほど長い時間が与えられています。アンチエイジングの象徴的な存在であるジョージ・フォアマンと、バーナード・ホプキンスはそのことをリング上で実証しました。

そして、年齢を重ねても最後まで残るのがパワーです。

「私の左ジャブは40半ばでもイベンダー・ホリフィールドを止め、シャノン・ブリッグスを幻惑させる速さがあった。そしてパンチの威力は若い頃よりも間違いなく大きかった」(フォアマン)。「とにかく相手に考えさせることだ。まずパワーパンチを見せて警戒値を膨らませ、ジャブを差し合ってチェスのような展開に持ち込むことだ」(ホプキンス)。


【多くのスーパースター同様、プロモーターやトレーナーとの関係は長続きしないコットですが、フレンチブルドッグの愛犬とはどこへ行くのも一緒、良好な関係を続けています。】

今のコットは、往年の反射や動体視力・視野、軽快なフットワークを失っています。それでも、フォアマン並みのジャブの名手であることはパッキャオやカネロ・アルバレスとの一戦を見るまでもなく明らかです。

身長、リーチでコットを上回る亀海ですが、コットとジャブの差し合いをしても勝負になりません。

偉大なプエルトリカンの全盛期はスピード自慢のザブ・ジュダーとシェーン・モズリーを破った2006〜2007年のウェルター級王者時代ですが、その左右フックのパワーは階級を上げた今でも健在です。

一発殿堂確実、コットのジャブとフックは、世界のトップレベルで戦った経験のない亀海にとっては異次元の代物です。序盤でコットの左右フックの威力に怯んで、左ジャブで翻弄される展開になると、試合は早く終わってしまうでしょう。

一方で、マルガリートとの2戦で露呈したようにコットは体力で押してくるスラッガーへの対応能力は高くありません。

肉を斬らせ続けるラウンドを重ねて、徐々に体力勝負の乱打戦に引きずり込む。美しくジャブを差し合うクラシックな戦い方では勝負になりません。亀海が勝つ方法は、それしかありません。

亀海の大金星を後押ししてくれる記事を見つけました。リング誌電子版で、今月15日のオマール・フィゲロア戦で生涯初のTKO負けを喫して引退宣言したロバート・ゲレーロが「BEST I FACED(私が戦った最強の相手)」の中で、亀海をBEST CHIN(最も打たれ強い)と評価してくれています。「会心のパンチもヒットさせたがビクともせずに向かってきた。亀海の過去の試合を見ればわかるが、どんな強打にもひるまず打ち返してくる。あの打たれ強さは信じられない」。

ゲレーロが認める打たれ強さで序盤の劣勢をジワジワ挽回して、終盤に乱打戦に持ち込めるか。大番狂わせを期待したいですね!

***閑話休題***

…もうすぐ大田区総合体育館でライトフライ級(WBA/田口良一vsロベルト・バレラ)、ミニマム級(ホセ・アルグメドvs京口紘人)のゴングが鳴ります。複数の日本人がトップ戦線を走る階級だけに、今後の日本人対決も実現して欲しいところです。

意外というと失礼ですが、田口がアバウト3−1、京口が2−1で明白に有利のオッズが立っています。

…先日のザ・フォーラムで三浦隆司に完勝したミゲール・ベルチェルトの防衛戦に、ジョニー・ゴンザレスが名乗りをあげました。今日の試合で無敗のフィリピン人、ジェシー・ロサレスを2ラウンドで粉砕、WBCラテン王座の初防衛に成功、リング上からベルチェルトとの対戦を熱望しました。

そろそろ無名の相手にコロッと負ける頃と思ってましたが、どっこい生きてたジョニゴン。フィニッシュのボディブローはお見事でした。三浦との打撃戦も見てみたいところです。