サーマン対ガルシアの第3弾です。

昨年世界中に惜しまれて天国へと旅立ったモハメド・アリがリングを去ってからボクシングの中心階級はヘビー級から中量級、とりわけウエルター級へとシフトして約40年が経とうとしています。ボクシングの盛んなアメリカでヒスパニックの人口・存在感が大きくなったことが、彼らの体格に近いより軽い階級への注目度が上がった、鈍重なヘビー級よりもスピードとパワーが最も高い水準で結晶する中量級の人気が高まった…。こういう分析をよく聞きますが、それらはボクシング業界の醜い言い訳でしかありません。

この40年でボクシング業界に起きたことは承認団体と階級の増殖による「世界王者の粗製乱造」です。サッカーなら FIFA、男子テニスならATPが統括しW杯や4大大会を頂点とする試合を管理、世界ランキングも発表しています。サッカー日本代表の52位、錦織圭の5位は正確にその実力を表した数字ではないかもしれませんが、公平なポイント制によって決められたランキングで多くのファンが納得できるものでしょう。しかし、FIFAやATPのような統括団体が存在せず、アルファベットをいたずらに組み合わせただけのFIFOやCTPみたいな怪しい承認団体があちこちに出現して独自にランキングを作成、世界タイトルマッチを組んで自分たちのアルファベットを冠した世界王者をネズミ算のように生み出していくとしたら?誰が本当に一番強いのかがわからないプロスポーツが理解、評価されるわけがありません。

もちろん、選手に罪はありません。日本が誇る左強打の山中慎介も、ローマン・ゴンザレスにも勝てると期待がかかる井上尚弥もWBC、WBOが承認した「世界王者」に過ぎません。さらに個々の承認団体の中でも、暫定王者、スーパー王者、名誉王者などが、ガン細胞のように増殖しています。また、アメリカのビッグファイトは PPV(試合番組を購入して視聴する)で放映されることが多く、その金額は安いもので20ドル、上はメイウエザー対パッキャオの約100ドルまで幅広いとはいえ、軽い興味を持った潜在的なファンが買うことはまずないでしょう。「誰が最強がわからない魑魅魍魎の世界」「軽い気持ちで観るには垣根が高い」という分厚く高い壁が、ボクシングに興味を持つかもしれない一般のスポーツファンを遠ざけ、マニアが支持するだけのニッチのスポーツに貶めているのです。

今回のサーマン対ガルシアもWBAとWBCの統一戦ですが、IBFのケル・ブルック、WBOのマニー・パッキャオと主要団体だけでも二人が世界王者の看板を掲げています。それでも、2階級上の絶対王者ゲンナディ・ゴロフキン相手とはいえ手酷い1敗を喫したブルック、6敗という数字ではなく心身ともにプライムタイムは遠い昔のパッキャオとは違い、サーマンとガルシアは未だ無敗でともに28歳の若さ。この決戦の勝者が少なくともウエルター級最強「と目される」という表現には異論はないでしょう。アメリカのメディアでも1985年のドナルド・カリー対ミルトン・マクローリー、1999年のオスカー・デラホーヤ対フェリックス・トリニダードの系譜に連なる史上3度目の無敗のウエルター級王者同士の統一戦と喧伝しています。また、無敗対決ではなかったもののウエルター級はもとよりボクシング史上最高の試合と賞賛されることもある1981年のシュガー・レイ・レナード対トーマス・ハーンズもウエルター級の統一戦と聞いてすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。

サーマン対ガルシア。塩気の多い凡戦にならないことを祈りつつ、次回に続きます。


土曜日だというのに仕事で普段は絶対に近づかない原宿を降りると、駅前のスニーカー店に大きなレナードのポスターが!
そこから1、2分歩くと3月オープン予定のパッキャオジムが!