大学スポーツが大きく様変わりしています。

日本では「大学スポーツファン」は珍しい部類かもしれません。かくいう私も大学スポーツファンという自覚はありませんが、箱根駅伝や六大学野球、大学ラグビー関東対抗戦を見てるというだけで一般の生活者よりも〝そっち寄り〟かもしれません。

3150FIGHTみたいな「日本再興戦略2016」が発表されたのは、ちょうど10年前。日本経済の新たな市場創出に向けて、10の重点プロジェクトが設定されました。


1. 第4次産業革命の実現
(IoT、ビッグデータ、AI、ロボット)

2. 世界最先端の健康立国へ
(予防・健康づくり、医療ICT、介護ロボット等)

3. 環境・エネルギー制約の克服と投資拡大
4. スポーツの成長産業化
5. 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化
6. サービス産業の生産性向上
7. 中堅・中小企業・小規模事業者の革新
8. 攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化
(ローカルアベノミクスの深化)

9. ロシア経済分野協力プラン
10. ジーン・エコノミー

(シェアリングエコノミー等の推進)


いやー、見事に「言うは易し」なのが10個並んでいます。良く言うと、10年後に見直しても目の付け所は悪くありません。

さて「スポーツの成長産業化」です。目標は「スポーツ市場規模(2015年:5.5 兆円)を 2020 年までに 10 兆円、2025年までに 15兆円に拡大することを目指す」。

コロナ禍の影響で15兆円計画は、2030年に後ろ倒しされました。

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1934年生まれのハンク・アーロン(現役:1954〜1976)は、1936年生まれの長嶋茂雄(現役:1958〜1974年)や1940年生まれの王貞治(現役:1959〜1980)とほぼ同世代。

全盛期のアーロンの手にしていた年俸は約20万ドル。1ドル360円で換算しても9,800万円、1億円に届いていませんでした。

一方、長嶋の最高は4,920万円。王は8,160万円。そして、長嶋と王の年俸が他の選手への「長嶋が4,900万円なのに、お前はこんなもんだろ」)という〝牽制球〟として使われたことは良く知られているように、実際はもっと多かったのは間違いありません。

その金額は、口に蓋ができない野村克也が落合博満の「史上初の1億円」を聞いて「ゆうたらアカンということやったけど、ほんまは俺ももらっとったわ。長嶋、王はもっともらっとったやろ」と暴露したように、1億円は優に超えていたはずです。

つまり、1980年代初めまでMLBとNPBは、報酬面でほとんど変わらなかったのです。

サッカーでも、1994年に当時世界最高峰のイタリア・セリエAのジェノアに移籍が決まった三浦知良の契約金は1億円。ケンウッドが大口スポンサーがついたにもかかわらず、今思うとたったの1億円でした。しかし、1億円は当時の世界トップ選手でも頭抜けたレベルの金額でした。

Jリーグ発足時に大物選手が相次いで日本のクラブと契約したのは「サッカー選手は伝道しとしての使命感が強い」なんて綺麗事ではなく、ジャパンマネーの引力でした。

日本のスポーツ界が貧しくなったのは21世紀になってから。中田英寿やイチロー、松坂大輔らが日本ではあり得ない金額で世界最高峰リーグと契約していきました。

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「スポーツの産業化」にいち早く着手した米国と欧州との選手報酬はあっという間に逆転し、その差はもはや比較対象にならないほど広がっています。

ボクシングの軽量級はいまだに「日本が最も多くのファイトマネーが稼げる国」である理由はたった一つ。スポーツの産業化が進んだ欧米では商業的な関心が全く払われず、人気階級と比較して薄すぎる選手層が貧困国に偏っているため日本の円は依然として絶大な力を持っているからです。

21世紀になって世界最高峰の輪郭が明らかになってしまい、NPBやJリーグは〝下部リーグ〟の扱いに落ち込んでしまいましたが「最高峰への滑走路」として、新しい存在価値を見出しています。

また、家族でスポーツ観戦、地元チームを応援という新しいスタイルを浸透させ、観客動員数を伸ばしています。20世紀の「王貞治の本塁打世界記録」的な楽しみ方ではない、地元チーム、そして日本代表を応援する、健康的な発展を続けています。

ボクシングの場合は欧米で認知が低い軽量(ライト)級以下の超軽量級だけといっても差し支えない市場では「最高峰(人気階級)への滑走路」など、そもそも敷くことすらできません。日本のボクシングファンにそこに目を向けさせるような報道は極端に少なく「黄金時代」と囃し立て、一つの興行で3つの〝世界〟タイトルマッチを盛り込むようなバーゲンセールを自国内で繰り広げているばかり。

現在、政府レベルで取り組まれている「スポーツの産業化」はアリーナやスタジアムなどのハコから、選手が「世界最高峰に翔ける」プロジェクトまで広範囲に渡っています。

ボクシングの場合「世界最高峰」から目を逸らしているのですから、置いてけぼりです。今後も日本スポーツ界の潮流とは関係なく、貧困国の選手や、母国では全く無名の欧米の選手との〝世界〟タイトルマッチを日本のリングで毎月3本立てペースで量産してゆくのでしょう。

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政府目標の15兆円のお話に戻って…。ここには、大学を含めたアマチュアスポーツの3,000億円も含まれています。

「大学スポーツ」にくくって、2019年に設立されたのが「一般社団法人 大学スポーツ協会(UNIVAS)」です。このUNIVASがモデルとしているのがNCAA(全米大学体育協会)で〝日本型NCAA〟と呼ばれています。

このNCAAですがとんでもない化け物団体です。ディビジョンⅠからⅢまで1,100校が参加している年間収益は15億ドル(約2200億円)を超え。これは、各大学の収益合計ではなく、統括団体の収益です。大学の収益はディビジョンⅠだけで130億ドル(約2兆円)を超え。

スポーツ産業革命の波に最も乗ったのは欧州サッカーでもMLBでもなく、NCAAです。

UNIVASの発足から、日本の大学スポーツも徐々に様変わりしています。

日本のアマチュアスポーツでも、シューズやユニフォームなど道具類の提供を受けるスポンサードは存在しましたが、大学スポーツで2020年にスポンサーロゴが解禁されます。

青山学院大学の駅伝チームが合宿でお世話になっている新潟県妙高市を胸に付けたのは2021年。大学と地域が互いにエールを送るような友情関係にも映りました。

しかし、今季から妙高市は練習用ユニフォームのみでスポンサーに。胸にマークされる新たなスポンサーはレッドブルです。

多くの大学が企業とスポンサー契約を結ぶ中、距離を置いていた早稲田大学も今季から大和証券とNTT docomo Buisinessの記号ロゴを胸にマークして、公式戦を走っています。

スポンサー契約の金額は非公表ですが、100万円単位のお金でないことは誰にでもわかります。次の単位でもないかもしれません。

これまで清貧なイメージだった大学スポーツ選手が、しっかりした経済支援を支えに競技に打ち込めるのは素晴らしいことです。

駅伝選手でいうなら、競技成績が飛躍的に伸び続けている原因は厚底シューズだけではないでしょう。

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日本の大学選手は個人がサポートされているわけではありませんが、米国ではあからさまに個人をサポートします。最もわかりやすいのは、日本からスタンフォード大に行った佐々木麟太郎。ビザの関係で米国内での活動は制限されますが、日本のルールにも縛られません。

JALなど14社とスポンサー契約を結んだ佐々木は米国の恩恵を受けて、日本で肖像権が使われ企業の広報活動を進めています。

佐々木麟太郎は、競技能力以上の経済的恩恵に浴しています。彼よりも評価が高かったライバルたちよりも経済的収入は上です。

しかし、彼は野球選手としての実力・知名度だけでなく「前例のない挑戦をした」という生きる姿勢も付加価値として評価されたのです。

ドラフト1位でNPB入団しただけの若者なら、10社を超える企業がスポンサーに名乗りをあげません。

米国の大学生には佐々木を大きく上回る、NPBの最高報酬選手を超えるようなスポンサー収入を得ているアメフト選手やバスケ選手もいます。

彼らが「商品」であるのは明らかです。それを自覚しているから、より良い報酬を求めて大学を移籍するのも当たり前です。

日本でやったら「えーーー?そんなやつ、応援できるかッ!」なことを、いっぱい引き起こしています。

彼らは「学生」なのか?「労働者」なのか?





【お昼のクイズ】米国で最も人気のあるスポーツと、2番目に人気があるスポーツはなにでしょうか?