プロボクシングの実態について、日本のプロボクシングファンが多くの誤解をしてしまっていることがあります。
「米国でも軽量級はそこそこ尊重されている」という誤解は、昨年の井上尚弥の〝興行事故〟と今年のデビッド・ビナビデスの大盛況というT−モバイル・アリーナの定点観測などから、大きな間違いであることはようやく浸透してきたようです。
しかし「ボクシングは世界においてメジャー競技」という誤解は、まだ拭えていないかもしれません。
この誤解に起因して「フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオは米国ではスポーツファンなら誰でも知っている」「リング誌は世界的に権威のあるスポーツ誌」「野球がメジャーなのは米国だけだから、大谷翔平よりも井上尚弥の方が世界的に有名」というトンデモ認識を刷り込まれてしまっている人もいます。
米国に行ったことがある人、友人・知人が住んでいる人ならボクシングが全く注目されていないことはよくわかるでしょう。
そんな経験がない人でも、米国の主要メディアでほとんど扱われていない現実はすぐにわかるはずなのですが、井上信者をはじめ日本のメディアのフィルターがかかった海外の情報しか見ない人が多いのも〝長年のボクシングファン〟の特徴です。英語は読めないし、そもそも米国の主要メディアがわからないという人が大きな誤解を脳内で拡大してしまう原因には、メディアのミスリードにも責任があります。
日本で紹介される海外メディアのほとんど全てが、ボクシング専門ネットニュースです。雑誌を発行しているのもリング誌と英国ボクシングニューズ(BN)誌だけ。リング誌とBN誌にしても、米国や英国で人気とは口が裂けても言えないレベルの超マイナー専門誌。専門ニュースサイトは、それ以下。
例外なのはESPNですが、今年からボクシング放送から撤退。斜陽のボクシングから、MMAとプロレスに大きく軸足を移しています。ボクシングと比較したら人気があるUFCやWWEにしても、メジャースポーツとはやはり口が裂けても言えません。
そして、そんなボクシングニュースサイトでも、当たり前の話で人気階級の報道がメインです。そこで取り上げられた軽量級の記事が、THE ANSWERなどによって〝提灯記事〟化されています。
一方で、野球はESPNはもちろん、CNNの一般ニュースやABC、CBS、NBCで当たり前に取り上げられています。
現在、米国限定のスポーツ報道ならESPNに代わって最も強力で鋭い取材能力を持っているのがニューヨーク・タイムズ参加のTHE ATHLETICですが、ここでもボクシングが取り上げられるのは極めてレア。4大スポーツの野球はレギュラーですが、大谷翔平はスターの中の1人にすぎません。
昨日の大谷の5勝目と本塁打は、日本では「圧巻」と報じられていますが、米国では「他の誰にも真似できないこと」と断りながらも「ノーヒットが不思議な不安定な制球。規定投球回数はシーズン後半で追いつくように調整するだろうが、そのときの防御率は大きく下落している可能性が高い」「打者としては全盛期の『この当たりがスタンドに届くのか!』という驚きの飛球は影を潜めた。そう、もはや彼は全盛期ではないのかもしれない」と非常に冷静な見方です。
一方で、驚異の44.2イニング連続無失点中のクリストファー・サンチェスが大きな注目を集めていますが、日本での報道はほとんどありません。
この偏向報道の行き着く先は、大谷翔平の衰えでNHKのMLB中継の視聴率が大きく下がり、年間35億円ともいわれる放映権料が予算として組まれなくなることでしょう。
現在の日本ボクシングが黄金時代ではないとは何度も書いてきましたが「井上尚弥の黄金時代、那須川天心の水銀時代」とは言えるかもしれません。しかし、井上と那須川がリングを去ったあとは氷河期が待ち構えているでしょう。
現在のMLBは〝ほぼイコール大谷人気〟であり、MLB人気ではありません。また、ボクシングも黄金時代ではなく〝ほぼイコール井上尚弥の黄金時代〟。ボクシングの場合はサウジ並みの採算度外視のネット配信企業の実験的・先行投資で潤っているだけともいえます。

前置きが長くなりました。
矛盾に満ちたプロボクシングの世界、そこに正論で迫ってきたズッファ・ボクシングという黒船。
20世紀には「団体統一戦など言語道断」という姿勢だった認定団体は、ボクシング産業の没落ととともに地域タイトルや暫定などセカンドタイトルの新設、自己増殖に走ります。また、ファイトマネーが大きくなる統一戦にもそれに比例する認定料が大きくなることから前向きになり、カネロ・アルバレスのような認定料が巨額になる人気選手にはそのままタイトルを預け、テレンス・クロフォードやオレクサンデル・ウシクのような不人気選手には指名試合を突きつけてタイトル剥奪という〝素晴らしい統一戦ビジネスモデル〟を確立します。
そこに出現したのが、サウジアラビアの資金力を背景とする「ボクシング復興の唯一の最適解は『世界タイトルは一つ、8階級』。ボクシングを堕落させた認定団体と欧米のプロモーターは去れ」というズッファ・ボクシング。
米国ボクシングが史上の低迷と、茶番劇横行の迷走、最悪の迷路に迷い込む中で、この国を出自とするIBFとWBOが急接近。今後、両団体の統一戦が増えるとみられています。
加盟国の85%が重なっている両団体の合併は認定料の激減を意味しますから、完全合併はありえないにしてもPremium Unified Championshipのような団体をまたいだ上位タイトルの創設を画策しているとも噂されています。
ズッファの侵略がどんな結末を招くのか?「サウジが本気なら、欺瞞に満ちた既存のボクシング界のレジームはズッファの正論の前に完全に破壊される」「サウジがゴルフのように無責任に撤退すると、人気スポーツのゴルフとは違うボクシングは選手報酬の暴落や、裏切り者選手の〝粛清〟など大混乱になる」…。
日本でのズッファは「第5の認定団体」のように軽く扱われていますが、メディアは彼らの正論を伝えなければなりません。「サウジアラビアが創設した団体で〝第5〟ではなく唯一を目指しているということ。ジュニアバンタム級以下の4階級は不要で、水増し階級も廃止して8階級制を標榜していること。そして、その資金力は主要4団体を合計しても遠く及ばないこと」を大きく伝えることで、世界における超軽量級の立ち位置などもよく理解できるでしょう。
そして「そんなことしたら日本から世界王者がいなくなる。ズッファ基準だと井上はまだバンタム級の1階級でしかタイトルを獲ってないなんて受け入れ難い。具志堅用高は世界王者になってないことになるの?」「THE ANSWERでは軽量級でも注目されてるって書いてたのに」「木村悠さんはPFPに入ったら軽量級でも20億円でラスベガスで日本では見れなくなるって書いてたけど?本当は人気がないならどうしてそんな嘘をつくの?」「正論はズッファにある。そもそも世界王者が日本人だけで何人もいるほうがおかしい」…ど正論が突きつけられたときは、突きつけられた方でいろんな意見が交わされることが重要です。
認定団体の成り立ちをおさらいして、WBOが認められてIBOが主要に数えられない理由などもからめながら、サウジが本気ならIBFとWBOの〝合併〟などドン・キホーテ(蟷螂の斧)に過ぎませんが、サウジがどこまで本気なのか?
サウジの支援が絶たれたとしてもUFCグループ単体でも4つの認定団体の資金力をはるかに上回りますが、米英のプロモーターや、超軽量級を無視された日本やタイの勢力も合わせた連合軍の息の根を止めるのは不可能です。
「ボクシングファンに1団体8階級の本当に価値あるチャンピオンシップを、PPVのような余計なお金をかけさせずに提供する」というのは、ど正論です。しかし、最近の「ウシクvsキックボクサー」は価値あるチャンピオンシップとは到底考えられず、DAZNに加入していても課金されるPPVでした。
サウジはボクシングから撤退はしていないものの、ボクシング復興とは真逆の「茶番劇とPPV」という安易なビジネスに舵を切っています。採算度外視のサウジの支援がなければ実現しなかった「アルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル」のような不人気だけど超絶実力者の激突は、マニアが涙を流して喜んだだけで興行としては大赤字。
サウジは開けっぱなしにしていた〝油水〟の蛇口を締めているのは、もう間違いありません。
「米国でも軽量級はそこそこ尊重されている」という誤解は、昨年の井上尚弥の〝興行事故〟と今年のデビッド・ビナビデスの大盛況というT−モバイル・アリーナの定点観測などから、大きな間違いであることはようやく浸透してきたようです。
しかし「ボクシングは世界においてメジャー競技」という誤解は、まだ拭えていないかもしれません。
この誤解に起因して「フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオは米国ではスポーツファンなら誰でも知っている」「リング誌は世界的に権威のあるスポーツ誌」「野球がメジャーなのは米国だけだから、大谷翔平よりも井上尚弥の方が世界的に有名」というトンデモ認識を刷り込まれてしまっている人もいます。
米国に行ったことがある人、友人・知人が住んでいる人ならボクシングが全く注目されていないことはよくわかるでしょう。
そんな経験がない人でも、米国の主要メディアでほとんど扱われていない現実はすぐにわかるはずなのですが、井上信者をはじめ日本のメディアのフィルターがかかった海外の情報しか見ない人が多いのも〝長年のボクシングファン〟の特徴です。英語は読めないし、そもそも米国の主要メディアがわからないという人が大きな誤解を脳内で拡大してしまう原因には、メディアのミスリードにも責任があります。
日本で紹介される海外メディアのほとんど全てが、ボクシング専門ネットニュースです。雑誌を発行しているのもリング誌と英国ボクシングニューズ(BN)誌だけ。リング誌とBN誌にしても、米国や英国で人気とは口が裂けても言えないレベルの超マイナー専門誌。専門ニュースサイトは、それ以下。
例外なのはESPNですが、今年からボクシング放送から撤退。斜陽のボクシングから、MMAとプロレスに大きく軸足を移しています。ボクシングと比較したら人気があるUFCやWWEにしても、メジャースポーツとはやはり口が裂けても言えません。
そして、そんなボクシングニュースサイトでも、当たり前の話で人気階級の報道がメインです。そこで取り上げられた軽量級の記事が、THE ANSWERなどによって〝提灯記事〟化されています。
一方で、野球はESPNはもちろん、CNNの一般ニュースやABC、CBS、NBCで当たり前に取り上げられています。
現在、米国限定のスポーツ報道ならESPNに代わって最も強力で鋭い取材能力を持っているのがニューヨーク・タイムズ参加のTHE ATHLETICですが、ここでもボクシングが取り上げられるのは極めてレア。4大スポーツの野球はレギュラーですが、大谷翔平はスターの中の1人にすぎません。
昨日の大谷の5勝目と本塁打は、日本では「圧巻」と報じられていますが、米国では「他の誰にも真似できないこと」と断りながらも「ノーヒットが不思議な不安定な制球。規定投球回数はシーズン後半で追いつくように調整するだろうが、そのときの防御率は大きく下落している可能性が高い」「打者としては全盛期の『この当たりがスタンドに届くのか!』という驚きの飛球は影を潜めた。そう、もはや彼は全盛期ではないのかもしれない」と非常に冷静な見方です。
一方で、驚異の44.2イニング連続無失点中のクリストファー・サンチェスが大きな注目を集めていますが、日本での報道はほとんどありません。
この偏向報道の行き着く先は、大谷翔平の衰えでNHKのMLB中継の視聴率が大きく下がり、年間35億円ともいわれる放映権料が予算として組まれなくなることでしょう。
現在の日本ボクシングが黄金時代ではないとは何度も書いてきましたが「井上尚弥の黄金時代、那須川天心の水銀時代」とは言えるかもしれません。しかし、井上と那須川がリングを去ったあとは氷河期が待ち構えているでしょう。
現在のMLBは〝ほぼイコール大谷人気〟であり、MLB人気ではありません。また、ボクシングも黄金時代ではなく〝ほぼイコール井上尚弥の黄金時代〟。ボクシングの場合はサウジ並みの採算度外視のネット配信企業の実験的・先行投資で潤っているだけともいえます。

前置きが長くなりました。
矛盾に満ちたプロボクシングの世界、そこに正論で迫ってきたズッファ・ボクシングという黒船。
20世紀には「団体統一戦など言語道断」という姿勢だった認定団体は、ボクシング産業の没落ととともに地域タイトルや暫定などセカンドタイトルの新設、自己増殖に走ります。また、ファイトマネーが大きくなる統一戦にもそれに比例する認定料が大きくなることから前向きになり、カネロ・アルバレスのような認定料が巨額になる人気選手にはそのままタイトルを預け、テレンス・クロフォードやオレクサンデル・ウシクのような不人気選手には指名試合を突きつけてタイトル剥奪という〝素晴らしい統一戦ビジネスモデル〟を確立します。
そこに出現したのが、サウジアラビアの資金力を背景とする「ボクシング復興の唯一の最適解は『世界タイトルは一つ、8階級』。ボクシングを堕落させた認定団体と欧米のプロモーターは去れ」というズッファ・ボクシング。
米国ボクシングが史上の低迷と、茶番劇横行の迷走、最悪の迷路に迷い込む中で、この国を出自とするIBFとWBOが急接近。今後、両団体の統一戦が増えるとみられています。
加盟国の85%が重なっている両団体の合併は認定料の激減を意味しますから、完全合併はありえないにしてもPremium Unified Championshipのような団体をまたいだ上位タイトルの創設を画策しているとも噂されています。
ズッファの侵略がどんな結末を招くのか?「サウジが本気なら、欺瞞に満ちた既存のボクシング界のレジームはズッファの正論の前に完全に破壊される」「サウジがゴルフのように無責任に撤退すると、人気スポーツのゴルフとは違うボクシングは選手報酬の暴落や、裏切り者選手の〝粛清〟など大混乱になる」…。
日本でのズッファは「第5の認定団体」のように軽く扱われていますが、メディアは彼らの正論を伝えなければなりません。「サウジアラビアが創設した団体で〝第5〟ではなく唯一を目指しているということ。ジュニアバンタム級以下の4階級は不要で、水増し階級も廃止して8階級制を標榜していること。そして、その資金力は主要4団体を合計しても遠く及ばないこと」を大きく伝えることで、世界における超軽量級の立ち位置などもよく理解できるでしょう。
そして「そんなことしたら日本から世界王者がいなくなる。ズッファ基準だと井上はまだバンタム級の1階級でしかタイトルを獲ってないなんて受け入れ難い。具志堅用高は世界王者になってないことになるの?」「THE ANSWERでは軽量級でも注目されてるって書いてたのに」「木村悠さんはPFPに入ったら軽量級でも20億円でラスベガスで日本では見れなくなるって書いてたけど?本当は人気がないならどうしてそんな嘘をつくの?」「正論はズッファにある。そもそも世界王者が日本人だけで何人もいるほうがおかしい」…ど正論が突きつけられたときは、突きつけられた方でいろんな意見が交わされることが重要です。
認定団体の成り立ちをおさらいして、WBOが認められてIBOが主要に数えられない理由などもからめながら、サウジが本気ならIBFとWBOの〝合併〟などドン・キホーテ(蟷螂の斧)に過ぎませんが、サウジがどこまで本気なのか?
サウジの支援が絶たれたとしてもUFCグループ単体でも4つの認定団体の資金力をはるかに上回りますが、米英のプロモーターや、超軽量級を無視された日本やタイの勢力も合わせた連合軍の息の根を止めるのは不可能です。
「ボクシングファンに1団体8階級の本当に価値あるチャンピオンシップを、PPVのような余計なお金をかけさせずに提供する」というのは、ど正論です。しかし、最近の「ウシクvsキックボクサー」は価値あるチャンピオンシップとは到底考えられず、DAZNに加入していても課金されるPPVでした。
サウジはボクシングから撤退はしていないものの、ボクシング復興とは真逆の「茶番劇とPPV」という安易なビジネスに舵を切っています。採算度外視のサウジの支援がなければ実現しなかった「アルツール・ベテルビエフvsドミトリー・ビボル」のような不人気だけど超絶実力者の激突は、マニアが涙を流して喜んだだけで興行としては大赤字。
サウジは開けっぱなしにしていた〝油水〟の蛇口を締めているのは、もう間違いありません。
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