月に一度くらいの頻度で、米国の雑誌類が私の通う(重度の不登校でしたが…)図書館に届けられていました。

お気に入りは簡易な英語で書かれた、THE RING MAGAZINE とSports Illustrated でした。

座布団2枚を重ねたくらいのボリュームがある、雑誌を包んだ茶色い包装紙は厚くて固く、ハサミを入れるのは指が痛くなるほどかなりの力が要りました。図書館の一番大きなテーブルの上でジョギッ、ジョギッ、ジョギッ…と包装紙を切っていくと、雑誌がスルスル〜ッと床まで落ちて、床でも1メートルくらい滑走するのもありました。

最も滑走しやすいのは、表紙・裏表紙が薄くてツルツルのスポーツ・イラストレイテッド誌でした。当時のスポイラは、タイム誌やニューズウィーク誌などと同じ週刊。ESPNは開局して間もなく、スポイラは米国で圧倒的な存在感を持つスポーツメディアでした。


IMG_4084

スポイラの没落から現在は提携関係はないようです。


このスポイラと提携して、文藝春秋から1980年に創刊されたのがSports Graphic Number誌でした。高校図書館にこの雑誌はなかったのですが、リクエストするとすぐに定期購読してくれました。

良い意味での、昭和な話。私にとっては、最高に素晴らしい環境でした。

ナンバー誌が取りあげたのは、日本のプロ野球や競馬、ラグビーなどで、せっかくスポイラと提携しているのに世界(米国)スポーツを大々的に取り上げることはほぼありませんでした。

しかし、世界のプロボクシングは大々的に特集されました。


IMG_0886
第1回のGOD BLESS THE 〝RING〟はマービン・ハグラーvsトーマス・ハーンズを中心に特集。


その中心的特集「GOD BLESS THE 〝RING〟」はシリーズ化され、そのときどきの米国リングシーンを伝えてくれたのでした。

オスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスのメガファイトが詳細に語られ、彼らが表紙を飾るようなものですが、21世紀になってからは「世界のボクシング」を伝える特集は途絶えてしまします。

GOD BLESS THE 〝RING〟は米国ボクシングのスターシステムや、軽量級がそれとは無縁の人気のない〝別競技〟であることも思い知らされました。

GOD BLESS THE 〝RING〟
は5回のシリーズで終わり、Number誌から世界のボクシングを知るパイプを見失ったこともあり、ボクシングファンは「軽量級でもラスベガスでメインでPPVでファイトマネー20億円、井上尚弥は日本ではもう見ることができない」と幻覚してしまうようになります。

このGOD BLESS THE 〝RING〟がスポイラの特集をほぼ丸ごとパクった(もちろん提携してるので盗作ではありません)内容でした。

二つの雑誌を並べて読んだり、スポイラでよく解釈できない文章があったらナンバーで答え合わせする、さらにリング誌でも同じ試合についての解説を読む…それは、私の貧弱極まる英語力にとって凄まじいアクセルになり、最初はチンプンカンプンだったタイム誌など他の雑誌も読めるようになりました。

IMG_7669
チャンドラーはPFPでも中位までランキングされる実力者でしたが、日本のリングに引っ張り上げられるなどその待遇、人気は無惨なものでした。人気階級でなければ相手にされない、それが欧米のボクシングの残酷な現実です。



GOD BLESS THE 〝RING〟は日本の多くのボクシングファンにとっても「海の向こうに日本が好き勝手している軽量級とは全く別のボクシングがある」ことを教えてくれました。

ラスベガスやニューヨークの大会場を軽量級の試合がメインでフルハウスにする、ボクシングビジネスを肥大化させたクローズドサーキットが軽量級でも展開されるーーーそんなことは一切ない、起こり得ないことも GOD BLESS THE 〝RING〟が問答無用に教えてくれたのです。