もうすぐプレーボール!NYヤンキースとSFジャイアンツの一戦で開幕するMLB2026シーズン。

注目はロボット審判、Automated Ball-Strike System(ABS)です。直訳すると「自動ボール-ストライク判定システム」。

ストライクゾーンは「打者の肩の上部とズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上端とし、膝頭の下部のラインを下端」としています…あれ?私の認識とは少し違いましたが、そうだったのか…。

一方で、ABSのストライクゾーンは「打者の身長データ」で決めます。上端を身長の53.5%、下端を27%とします。

なんか、違う気もしますが…。ストライクボールの判定は、本当に微妙です。

MLBによると、球審がストライクと判定するのは上端が最大で55.6%、下端が24.2%だそうですから、ABSはこれよりも投手に厳しい、打者の有利なゾーンとなります。

そして、ここが大きな問題なのですが、ABSの判定は平面=二次元で下されるということ。投球がホームベースの真ん中を通過した時点で切り取って判定するのです。現実のストライクゾーンは五角形のホームベースを底辺に五角柱の立体・奥行き=三次元で判定するのがルールですから、ABSの死角を通るストライクが存在することになります。

マイナーリーグの実験で多くの選手が違和感を感じていた要因の一つです。



どのように判定は検証されるのか?…ラフィックがTモバイルのアドバンスド・ネットワーク・ソリューションズから5Gネットワ​​ーク経由で送信され、ビデオボードで会場の観客と、自宅の視聴者にほぼ瞬時に投球結果のアニメーションが、球場のビジョンやテレビ中継でほぼ即時に表示されるのです。


マイナーリーグでは2022年、韓国では2024年から導入されているロボット審判。韓国では初年度に3割打者が激増するなど、予想された打高投低が現実となりました。

審判の間では「やりがいが奪われるような気分」、捕手にも「フレーミングの技術が高い選手の価値が無くなってしまう」と戸惑う声もあります。

今回のABS導入では9回までに2度申告(判定が覆った場合は回数は減らない)出来ますが、全ての投球をABS判定にしたマイナーリーグの実験では四球が増え、ピッチロックによる時短制限が相殺されたとする分析も出ています。

多くの課題を抱え、まだ未完成の〝ロボット審判〟をMLBの舞台への導入を踏み切った背景には、米国で合法化が広がるスポーツベッティングの問題が横たわっています。

明らかな誤審の判定への非難・批判、誹謗中傷は度を超えて、審判の自宅に脅迫状が届くケースもあるそうです。

先日のWBC準決勝、米国が2−1でドミニカを下しましたが、見逃しストライク三振となった最後の1球は明らかに低めに外れたボール。ドミニカに賭けていた人の怒りは、純粋なスポーツファンのそれとは違う種類のものでした。

米国でスポーツベッティングが合法となったのは2018年。今では39の州にワシントンD .C .で解禁。球場の看板、CMでブックメーカーの広告を目にするのは日常の風景になりました。

シカゴ・カブスのリグレー・フィールドにはカジノのように、専用のベッティングブースが設けられているほど定着しています。

スポーツベッティングを認めた時点で、「誤審も野球の一部」というおおらかな気持ちで楽しめる時代は終わってしまいました。

ストライク・ボールと同様に、多くの議論を呼んでいるハーフスイングについても5月から3Aでの実証実験が始まります。すでに実施している1Aでは3%以上三振が減ったそうです。



野球というのは良い意味でも雰囲気のスポーツでした。野手が澱みない一連の流れでボールを回したケースは、微妙なタイミングでもダブルプレーが成立することが多く、微妙な投球でも手元で伸びるボールはストライク、お辞儀する(垂れる)のはボール。

落合博満が悠然と見逃せばボール、マダックスが自信満々に投げ込んだ外角低め一杯はいつだってストライク…。

そんな時代とお別れする時間が来てしまったようです。