アイドル人気を集めていたフェザー級の福田健吾が映画「ウエルター」に主演すると知った後楽園ホールのお行儀の悪いボクシングファンは「フェザー級のくせに、嘘つくな〜。正直に『フェザー』にタイトル変更しろ!」と、予想通りのヤジを福田に浴びせました。

日本のボクシングファンは「ウエルター級」が、どういうクラスなのかを、よく知っているのです。

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ウエルター級は、オリジナル8の一つ、他の7階級とともに日本ボクシング界とは最も付き合いの長いクラスです。

しかし、1952年のJBC設立以来、世界王者はたったの一人も生み出せないまま73年もの歳月が過ぎ去ってしまいました。

同じオリジナル8のフライ級は23人、日本人にとって最も重いミドル級でも2人がストラップをつかんでいますが、ウエルター級はミドル級よりも2クラスも軽いというのにゼロ。

1986年に新設されたストロー級は39年の歴史で15人も王者を輩出していますから、ストロー級ペースならウエルター級も30人くらい王者を送り出していてもよいはずというのに、ゼロなのです。

ウエルター級には、日本人を寄せ付けない結界が張られているのでしょう。

しかも、結界は二重に張り巡らされています。

まず最初に、ライト級〜ジュニアウエルター級〜ウエルター級〜ジュニアミドル級〜ミドル級の日本人にとっての重量級クラスは、日本のコントロールが効かない欧米の人気階級であることです。

逆に、欧米の不人気階級、軽量級は日本が好き勝手できるわけです。

その結果、タイトル獲得の手前、挑戦することすら超難関という事実が突きつけられています。

73年間でウエルター級に挑戦した日本人は辻本章次、龍反町、尾崎富士雄、佐々木基樹のわずか4人に過ぎません。結果は、尾崎が2試合戦っているので、5戦5敗。

しかし、この4人全員が王座奪取に成功していたとしても、たったの4人しかウエルター級王者は誕生していないのです。

そして、欧米の人気階級ウエルターは体格的に小さいフロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオが主戦場にしたように、報酬も注目度も高いことからタレントを引き寄せる磁力が強烈で、当然競技レベルも跳ね上がります。

人気階級であるがゆえに、日本に回ってくるチャンスが極端に少なく、レベルも非常に高いーーー日本人にとってはただでさえ壁が高い階級、下手な鉄砲しか持ち合わせていないというのに、撃つ回数も極端に制限される…下手な鉄砲を5発しか打てなかったのですから、全部外れても何の不思議もありません。

しかも、5試合のうち2試合はアウエー。

これが軽量級のように、地元日本で月に何度も世界戦が開催されるなら「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」と期待できるのですが、そうもいかないのが人気階級、ウエルター級なのです。


辻元章次(1976年10月27日vsWBA王者ホセ・クエバス)、龍反町(1978年2月11日vsWBC王者カルロス・パロミノ)、尾崎富士雄(1988年2月5日vsWBA王者マーロン・スターリング/1989年12月10日vsWBA王者マーク・ブリーランド)、佐々木基樹(2009年10月3日vsWBA王者ビチェスラフ・センチェンコ)…高く分厚い、世界の壁に挑んだ4人の戦いを振り返ります。