▶︎世界返り咲きを逃した比嘉は会見で試合の感想を問われると「覚えておりません!すみません。あまり記憶が……飛んでますね」と答え、色濃いダメージをうかがわせた。

ダウンシーンについても「覚えてないんですよね。どういう試合だったか、飛んでおります。入場してリングの上にいた時や、序盤は覚えている。(試合後に掛け合った言葉も)覚えてないんですよね。『ありがとう』じゃないですかね」といい、「覚えてない」を繰り返した。

野木トレーナーもそのダメージを証言。10回の前に声掛けした内容を問われ「(比嘉が)『自分はどこにいますか? 誰とやってますか?』と言っていた」と説明。

聞いていた比嘉が「ヤバ!」と驚き、野木トレーナーは「意識を呼び戻そうとする声かけで精一杯でした。何言ってもわからないだろうと。あの一発はそれだけの打撃でしたね」と9回のダウンについて振り返った。

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ーーー比嘉が脳震盪を起こし、非常に危険な状態に追い詰められていたことは明らかです。

他のスポーツなら、接触行為で比嘉のような状態になれば一発で交代。試合に出場し続けるなんてことは絶対に許されません。

しかし…私たちボクシングファンは、そんな危険な状態から立ち上がって拳を振るって反撃するファイターの姿に感動を覚えてしまうのです。


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NFLが現代科学を駆使して研究、なんとプロボクシングの過去データを収集してまで対策を講じている脳震盪。

NFLだけでなく、ラグビーや野球、激しい接触プレーが起こりうるスポーツではルール改正に踏み込んでいます。

そして、昨秋からはメジャースポーツの中のメジャー、サッカーでもFIFAがこの問題に対して本格的なキャンペーンを展開しています。

FIFA Concussion campaign としてSuspect and Protect(疑って守れ)と大々的なキャンペーンを展開しているのです。

Concussion、脳震盪と聞いて具体的にどういうことなのか、言葉で正確に表現できなくてもボクシングファンなら1人残らず知っていることです。

「いまのパンチ、効いた!」というのは全てそうです。

FIFAでもNFLでも、頭部に直接打撃をうけなくても顔などを打たれて脳が揺さぶられて脳震盪になることに対して厳重な注意を払い、とくに顎を強打して倒れた選手へのケアは最も慎重に対応しなければならないとしています。

そんな話をボクシングファンが耳にしてしまうと、聞こえないふりをしてその場を離れるしかありません。

いまでは、中高生の部活でも「脳震盪の症状と評価法」などの研修があります。

「意識を失う」「けいれん」「吐き気・嘔吐」「めまい」「ボヤけて見える」「足がふらつく」「光や音に敏感になる」「眠い」「いらいらする」などの症状が出たらすぐにフィールドを離れて試合に復帰させてはいけません。

また、接触して倒れた選手が「大丈夫」と言っても心配なときは試合を止めてバランステストを速やかにおこなわなければなりません。

「利き足を前にしてその踵に反対の足のつま先をつけて、両手を腰に両目を閉じて20秒その姿勢を保つ」。この姿勢を5秒キープできない、20秒間で5回以上よろける場合は脳震盪を疑わなければなりません。

Suspect and Protect .

当然のことながら、このバランステストは試合開始前にもやっておかなければなりません。ほとんどすべての選手は試合続行を望みます。

「俺、この姿勢が苦手なだけで脳震盪じゃない」なんて言い張る選手を「お前は試合前に出来てたことが今、全く出来ない状態なんだよ!」と納得させなければならないからです。

サッカーやラグビーの選手が脳震盪を起こしながらもプレーを続行、その間の記憶がない、なんてことがあります。

先日の比嘉の例を持ち出すまでもなく、ボクシングのリングでは同様のことが当たり前に起きています。

当たり前といえば、当たり前です。

他のスポーツがどうしたら防げるかを考えている脳震盪を、ボクシングでは競技の目的として追求しているのですから。

脳震盪を狙うボクシングの存在、存続はいつまで許されるのでしょうか?