
リング誌2月号の表紙はオレクサンデル・ウシク。「The New All-time Great(新たな史上最強)」として特集されています。
タイトルの価値が暴落、階級と団体もいたずらに増殖した現代では安易な複数階級制覇が横行していますが、ヘビー級に乗り込む複数階級制覇はいまなお難攻不落。
近代ボクシング150年の歴史上、ヘビー級を制した2階級制覇はボブ・フィッツモンズ(ミドル級=ライトヘビー級王者になったのはヘビー級制覇後)、マイケル・スピンクス(ライトヘビー級)、イベンダー・ホリフィールド(クルーザー級)、マイケル・モーラー、ロイ・ジョーンズJr.(ライトヘビー級)、デビッド・ヘイ(クルーザー級)、オレクサンデル・ウシク(クルーザー級)の7人だけ。
最弱王者を狙い撃ちにしたロイとヘイ、明白に有利と見られたジョージ・フォアマンに歴史的な勝利を与えてしまったモーラーを除いた、不利予想の中で最強王者を倒してのヘビー級制圧はフィッツモンズ、スピンクス、ホリフィールド、ウシクの3人に絞られます。
この四半世紀、25年間だけでオスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオの3人が5階級制覇に成功していますが、「ヘビー級を制する2階級制覇」とどちらが難しいか?と聞かれて答えに迷うボクシングファンは1人もいないでしょう(パックマンのフライ級起点のジュニアミドル級までの8階級制覇の難易度については一旦ここでは考えません)。
安易な複数階級制覇が横行している腐ったボクシング界でも「優秀なライトヘビー級王者は愚鈍なヘビー級に駆逐される」という古くからのマキシムは色褪せていません。
ヘビー級の世界でもSize is Matter (体重が問題)であるのは明らかで、最近だけでもクリチコ兄弟やタイソン・フューリーがそれを証明してきました。
さて、史上4人目のウシクです。
技術面でウシクよりもはるかに高い評価に浴しているウクライナの同胞ワシル・ロマチェンコがフェザー級からライト級の〝わずか〟9ポンド(約4.1kg)で停滞しているのに対して、ヘビー級のウシクは常に自分よりも遥かに重い相手と戦い、直近のタイソン・フューリーとの再戦では55ポンド(約25.0kg)もの体重差で跳ね返して勝利を手繰り寄せました。
55ポンドも重い相手に勝つ。
井上尚弥に例えるとジュニアフェザー級の肉体のまま、アルツール・ベテルビエフらが跋扈するライトヘビー級を2ポンドオーバーするクルーザー級を相手に戦うようなもの。
「体重同一じゃないけど遥かに重い相手を翻弄しちゃうよ〜ん」というウシクの所業は、ボクシングではSize is Matter (体重が問題)だから、あらゆる階級を平等に見たてたpound for pound(体重同一時)という仮定の中でファイターをランキングするPFP妄想を根本から否定するものです。
こと、ウシクに限るとボクシングではSize is not Matter(体格は関係ない)のです。
妄想が作用していないのですから、ウシクのことは見なかったことにして、あらゆるPFPから追放すべきです。
ーーー確かにウシクは、例外的に凄い。では、ウシクは本当に史上最高、サウジアラビアバージョンのリング誌がいうようなThe New All-time Greatなのでしょうか?
ウシクがヘビー級タイトルマッチで手玉に取ったのはアンソニー・ジョシュアとダニエル・デュボア、タイソン・フューリーの3人だけ。
PFP破壊という衝撃を無視して、この3人に合計「5試合全勝(1KO)/2スプリットデジション」という結果だけを見つめると、到底The New All-time Great とはいえません。
ウシクはどれほどグレート(最高)なのか?ウシクが勝ち抜けている現代ヘビー級は、歴史的にどの程度のレベルにあるのか?
いつのまにやら、シリーズ第7回目になります。

1892〜99年代はB、1900〜09年はB+、1910年代のレベルはB。
そして、デンプシー全盛期のRoaring TwentiesのグレードはC+。デンプシーは1910年代に続いて、ディケイド最高評価。
専門家評価が意外なほど低いのは、世界が経済危機に大きく揺らいだことも関係しているのかもしれません。
後世、2020年代のヘビー級シーンはどう査定されているでしょうか?
この時代になって「WORLD」と「U.S」のトップ5の名前が一致。ボクシング市場の中心が米国へと、大きく軸足を移した時代です。
さて、デンプシーの体格は身長・リーチともに185㎝、体重は190ポンド前後。現在ではクルーザー級(200ポンド)にも満たないウエイトで、当時としても軽量のヘビー級でしたが、自分よりも重く大きな相手を沈めていました。
ウシクの55ポンド差ほどではないにせよ、デンプシーも20ポンド前後の体重差を問題としない世界ヘビー級王者だったのです。
コメント
コメント一覧 (5)
今や無名のクルーザー
ヘビーが例外なのはそうですが単にボクシングのレベルが低いという観点からの節穴さんの総括を待ち続けています
フシ穴の眼
が
しました
論理的に考えるとウシクが一番強い。
ウシクはフューリーに勝った。
フューリーはウラジミールに勝った。
ウラジミールは・・・
といくとずっと昔に遡れる。
フシ穴の眼
が
しました
モハメド・アリは若い頃はずうううっと動き回ってKOもしていたので当然、比較は出来ないしジャック・デンプシーも巨人キラーで無尽蔵なスタミナなんで難しい処ですけれどね、でもウシクは快挙を成し遂げたのには間違いないです、疑惑のダニエル・デュボアのローブローダウン?以外は完璧なんで。
フシ穴の眼
が
しました
フシ穴の眼
が
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