1980年代初め、私が米国のボクシングに惹き込まれた強烈な磁力の発散元は、高校図書館に届くスポーツ・イラストレイテッド誌やリング誌などの魅惑的な記事でした。

そして、ヘミングウェイの小説や、沢木耕太郎のノンフィクションから立ち昇る The Undefeated(敗れざる者)の芳しい香りにも、引きこもりの陰キャな私は一人でクラクラと酔い痴れたのでした。

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ラスベガスやニューヨークで開催される華やかなメガファイトは、具志堅用高や渡辺二郎らが放っていたものとは全く異なる光を放っていました。

そして、その煌びやかな光に包まれるのはアメリカのボクシングの中でも一部の人気階級の限られたスターだけ、というカラクリもすぐにわかりました。

スポイラやリング誌で大きく報じられるのはヘビー級やミドル級、ウェルター級のスターたちの戦いであり、大きなイベントで軽量級の試合がメインを張ることはありえなかったのですから、ほんの少しでも海外の事情を知れば、誰にでもわかる話でした。


この10年ほどで、インターネットの普及により、ローマン・ゴンサレスや井上尚弥ら軽量級の強豪王者が専門家やマニアから高い評価を得る時代になりましたが、軽量級は今なおカジュアルなボクシングファンが興味を持つ対象ではありません。

それどころか、団体と階級が膨れ上がったことで王者のステイタスは暴落、ボクシングがマイナースポーツの底なし沼に沈み続けている現状で、そのデメリットを痛々しいまでに被っているのは軽量級でしょう。

はるかな昔、オリジナル8の時代はここまで蔑ろにされていなかったことは、当時のスポイラやリング誌がはっきりと伝えてくれています。

ちなみにファイティング原田の異名〝Frantic Windmill〟(狂った風車)は、スポイラが原田を特集した記事の中で命名されたものです。

当時と今ではボクシングのステイタスが全く違いますから単純比較は可哀想ですが、井上尚弥や井岡一翔らは一般スポーツ誌であるスポイラで特集されたことは一度もありません。

時代は移ろい、スポイラの権威もESPNに取って代わられていますが、スポイラのSportsman of the Yearに匹敵する〝ESPY 賞〟は井上らはもちろん、人気階級のスターボクサーですら一度も受賞できないまま。

世界ヘビー級チャンピオンが当たり前にSportsman of the Yearに選ばれていた時代は、とうの昔に終わってしまいました。

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このシリーズでは日本とアメリカ、イギリス、メキシコ、フィリピン…迷走を続けるボクシング界で、特に〝五大国〟の現状から拳闘世界地図を編集してゆきます。