1966年3月29日、カナダ・オンタリオ州トロントのメイプルリーフ・ガーデンズでメガファイトが行われました。

当時、世界で最も有名だった人物の1人、世界ヘビー級王者モハメド・アリが地元カナダの英雄ジョージ・シュバロを迎えた3度目の防衛戦。

世界ヘビー級タイトルマッチが、サッカーのW杯はもちろん、オリンピック並みの大きな注目を集めていた、今では信じられない時代のことです。



この巨大イベントを手掛けたのはMain Bout(メインバウト社)。アリが立ち上げたプロモーションで、これが最初の大仕事でした。

メインバウトはネーション・オブ・イスラムの信者である実業化のジャビール・ハーバート・ムハンマドが出資、ネーション・オブ・イスラム指導者イライジャ・ムハンマドの首席補佐官であるジョン・アリらが株主に名前を連ねていました。

イスラム色が濃厚な新興プロモーションのメインバウトでしたが、副社長に抜擢されたのは異色の人材でした。

あまりにも異色。

その大きな理由は二つありました。

つまり、その男はボクシング産業には全くど素人だったのです。

そして、それ以上に異色だったのは、彼がユダヤ人だったということでした。

1966年3月29日は、メインバウトという奇妙な船が、ボクシングという奇妙な海に出航した記念日です。

もしかしたら「メインバウト」というプロモーションの名前を知らないボクシングファンがいるかもしれません。

しかし、メインバウトは今でも存在しています。

メインバウトが前身となった「トップランク」というプロモーションの名前を聞けば、知らないボクシングファンは誰一人いないでしょう。


21世紀に実在する、ボブ・アラムという名の妖怪のお話です。