今週末にIBFジュニアバンタム級王者フェルナンド・マルチネスとの統一戦のリングに上がるWBA王者の井岡一翔。

まずは、32歳の無敗のアルゼンチン人を撃破することが大前提ですが、その先にはLineal/The Ring/WBC王者ジェシー〝バム〟ロドリゲスとの大一番が視界に入っています。

「21世紀に入って日本人が戦ったビッグネーム」となると、2022年4月9日に村田諒太が挑んだゲンナジー・ゴロフキンが飛び抜けた存在です。

しかし、当時のGGGはPFP1位は過去の話、40歳で劣化の綻びをあちこちに露呈させていました。その意味では、淵上誠や石田順裕を破壊したバージョンのGGG、PFPキングに駆け登る途上のGGGこそが人気階級という意味ではもちろん、実力的にも抜きん出て最強だったともいえます。

欧米の人気階級という枠を外して、旬の強豪という一点を突き詰めると、2012年10月13日に西岡利晃が玉砕したPFP3位のノニト・ドネアも有力候補です。

あのときのドネアは29歳、この年の活躍が評価されて Sugar Ray Robinson Awardに輝くなど世界評価は沸騰していました。

残念ながら、村田も西岡も、そして淵上も石田も勝利を飾ることはできませんでしたが。

勝利を条件にすると、井上尚弥が粉砕したオマール・ナルバエスか、劣化バージョンのドネアでしょうか。

しかし、2人とも当時はPFPとは無縁で、ナルバエスに至ってはキャリアを通してPFPにはカスリもせず、数字だけ素晴らしい戦績とは反比例して世界評価は低迷したままでした。



。。。もし今年の大晦日に井岡がバムに勝利するようなことがあれば、21世紀の日本ボクシング界にとって間違いなく最大の勝利です。

しかも、24歳という年齢と才能を考えると、井岡が引退した後もバムが活躍するたびに井岡の強さが彷彿される可能性が高い、これ以上ない美味しい相手です。

日曜日に、井岡が番狂せに泣くことも十分にあり得ます。マルチネスには全くもって失礼な話ですが、井岡vsバムのお話です。





井岡のプロキャリアは15年以上にわたり、319ラウンドを戦い抜き34試合(31勝16KO2敗1分)。34戦のうち世界戦が25試合という濃密さです。

ストロー級からスタートしてジュニアバンタム級まで4階級でアルファベットのストラップをコレクション、35歳という年齢は軽量級のボクサーとして完全に下り坂となっていてもおかしくありません。

階級を上げても自分の持ち味を失わない、加齢による劣化をほとんど感じさせないことは高い規律を守って日々の練習に打ち込んできたからでしょうが、最も大きな原因は打たれないスタイルです。

BoxRecの被弾率17.8%という数字は世界基準のボクサーとして3位(1位はドミトリー・ビボル、2位はシャクール・スティーブンソン)。日本人ボクサーとしてはトップ。

井岡の防御がシャクールのような専守防衛ではなく、相手にプレッシャーを与えながら攻撃に繋げるスタイルであることはこれまでの試合でも明らかです。

ただ、数値上はバムは全階級を通じても非常にバランスの良い、総合的に優れた攻撃力を持っています。

全階級でNo.1の着弾率(39.7%)、最も特徴的なのはこのパンチの正確さ。

ある意味当然ですが、ジャブとパワーパンチでもNo.1。

ジャブの着弾率は28.7%。ジャブといっても、これはリードパンチなのでサウスポーのバムの場合は強烈な右フックや右アッパーも含まれてしまっています。立ち上げから39年も経っても、ほとんど進化していません。没落マイナースポーツの悲哀です。

このカテゴリーでは、1ラウンド平均の手数で寺地拳四朗(40.1発)が2位、中谷潤人(36.5発)が5位に入っていますが、バムはトップ10圏外。しかし、1ラウンド平均のジャブの着弾数では7.6発で拳四朗も中谷も上回って5位に出現します。

バムと同じ傾向が見られるのが、井上尚弥。ジャブの着弾率は26.6%ながら、手数としてはトップ10圏外、2ラウンド平均の着弾数は8.4発とバムを上回ってビボル(8.8発)に次ぐ2位。

着弾率に戻ると、1位がバム(28.7%)で2位は意外?にもデオンティ・ワイルダー(26.9%)、そして井上(26.6%)。

拳四朗や中谷はジャバー。リードの目的がダメージを与えることではなく、さらにヒットさせることですらない、距離を測ったり、相手の反応を見る触覚の役割としてもリードを使いこなすジャバーの的中率が下がるのは当然です。精度は目的ではないのです。

この数字だけで「拳四朗や中谷はジャブの手数は多いけど精度が悪い」と見るのは大間違いです。

また、ワイルダーや井上のCompuBox上の「ジャブ」には、試合を決定する狙い済ました強烈極まる「左フック」などのパワーショットが数多くブレンドされています。

また、井上は完全に手首を返した左ストレートをジャブのように打ち込んできます。厳密にはジャブとは呼べませんが、破壊を目的としたジャブともいえるでしょう。

そして、バムの場合は拳四朗型と井上型の中間でしょうか。ここにも、万能型の一面が見て取れます。

さて、井岡です。彼はこのカテゴリーでは手数も精度もトップ10に入っていません…。