ファイティングティンコ  
2024年06月08日 00:56

軽量級のJrのクラスの選手が本場の最優秀選手賞を受賞。
素晴らしいのですが、うーん時代の違いですね。
海外のボクシングファンは井上尚弥が受賞したこと
納得しているのでしようか?

◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

IMG_1487


もちろん「時代」はあります。

米国か英国を主戦場にしないファイターにシュガー・レイ・ロビンソン賞が贈られるなんて、20世紀には考えられませんでした。

欧米のカジュアルなボクシングファンのレーダーから、興味・関心的に外れていた「軽量級」、そして地理的に捕捉することが出来なかった「アジア」のボクサー、井上尚弥が専門家やコアなマニアから評価されたことは日本のボクシングファンにとって素直に嬉しいものです。

もちろん、この〝日本的な快挙〟が現地ではほとんどっ報道されていないという現実は寂しいかもしれませんが、そもそもが没落する一方のマイナースポーツが開催する年間表彰式です。ニューヨーク・タイムズでも記事にしません。

ニューヨーク・タイムズのスポーツサイト、The Athleticですら触れられていないのが悲しい現実です。

大体からして、日本でボクシングファンを自認していて、SUGAR RAY ROBINSON AWARDを知っていた人がどれくらいいるでしょうか?

もちろん、世界評価を正確に報道せず、Fighter of the YearよりもPFPを先に紹介し、そっちが年間最高選手賞であるかのような誤解を与えるメディアが悪いのですが。

正確に報道すると米国ではマイナースポーツ、その中でも軽量級は無視された存在であることを隠蔽する意図があるのでしょうが。

今回の表彰式は6月と、このマイナースポーツの中でも最も大きなイベント「殿堂式典」と重なってしまい、年間アワードの表彰式は専門メディアですらほとんど扱われていません。

21世紀を迎えるとき、リング誌は「これ以上没落することはない。ここからはかつての人気や威厳を取り戻していくだけだ」とボクシングには上がり目しかないと意気込みましたが、悲しいかな、ボクシングの凋落は底なしでした。

まあ、でも私たちはメジャースポーツだから、米国で人気があるから、ボクシングが好きなのではありません。マイナースポーツでも、表彰式が行われているニューヨークでも全く騒がれていなくても、大きな感動を与えてくれるから、このスポーツが大好きなのです。



21世紀になってからのSUGAR RAY ROBINSON AWARD=Fighter of the Yearリストを、フェリックス・トリニダードから井上尚弥までざっと振り返ってみましょう。

2000 — Felix Trinidad
2001 — Bernard Hopkins
2002 — Vernon Forrest
2003 — James Toney
2004 — Glen Johnson
2005 — Ricky Hatton
2006 — Manny Pacquiao(Asia)
2007 — Floyd Mayweather
2008 — Manny Pacquiao(Asia)
2009 — Manny Pacquiao(Asia)
★Joe Louis Fighter of the Decade 2000: Manny Pacquiao

2010 — Sergio Martinez
2011 — Andre Ward
2012 — Nonito Donaire(Asia)
2013 — Floyd Mayweather
2014 — Terence Crawford
2015 — Floyd Mayweather
2016 — Carl Frampton
2017 — Vasiliy Lomachenko
2018 — Oleksandr Usyk
2019 — Canelo Alvarez
★Joe Louis Fighter of the Decade 2010: Floyd Mayweather Jr.

2020 — Teofimo Lopez Jr.
2021 — Canelo Alvarez
2022 — Dmitry Bivol
2023 — Naoya Inoue(Asia)

※青字は現役ファイター



「人気階級」「米国が主戦場」「ウエルター級のスーパースター」という前時代のトレンドを引きずっていた2000年代から、2010年代になると「アジアの軽量級」という一般のファンからはほとんづ無視された存在のノニト・ドネアに光が当てられました。

さらに、英国をホームに米国でメキシカンとのビッグファイトを行ったフェザー級のカール・フランプトン、やはりフェザー級からキャリアをスタートし米国にファンベースを持たないワシル・ロマチェンコ、そのロマチェンコと同じウクライナ人でクルーザー級のオレクサンデル・ウシクが年間最高選手賞に輝きます。

カジュアルなボクシングファンの間では決して人気者ではないばかりか、人気階級とも言えないドネアやフランプトン、ロマチェンコ、ウシクがFighter of the Yearに選ばれるという新たな潮流が突き詰められ、行き着いたのが井上尚弥でした。

…これを言い出すと「米国人でウエルター級のテレンス・クロフォードも人気がないぞ」と指摘されるでしょうが、ボクシングの衰退を考慮してもクロフォードはあまりにも例外です。

こうして振り返ると、21世紀になってからヘビー級の選手は一度もSUGAR RAY ROBINSON AWARDを手にしていない現実に軽い驚きを覚えてしまいます(リング誌では2020年にタイソン・フューリーがテオフィモ・ロペスとダブル受賞)。

近い将来、この潮流が究極に濾過され、ストロー級の重岡銀次朗が海外で一度も戦わずにSUGAR RAY ROBINSON AWARDを受賞するという日が来るかもしれません。