まず、事実として井上尚弥はキャリア初のダウンを喫してしまいました。

ルイス・ネリはキャリア通してのKO率は77%ですが、山中慎介との2試合を除くと世界戦は3戦2勝1敗で勝った2試合はクロスゲーム、KOはありません。KO率0%です。高いKO率はキャリア序盤や、水準の低い相手に稼いだ幻覚の数字です。

さらに、一発で試合を終わらせるパンチャーとは口が裂けても言えない連打型、主審のストップ待ちのファイターです。

井上はそんなネリに、以前から弱点の一つと指摘されていたクロスレンジでの攻防で一発で倒されたのです。

今夜が、非常に力が入る特別な舞台であったことを差し引いても「ネリにクロスレンジで一発で倒された」事実は変わりません。

また、スタッツ上は完全に主導権を握っていたように見えた第2ラウンド以降も、井上の防御が危なかしく見えたのは「第1ラウンドの残像」という錯覚だけではないでしょう。

逃げ回る水準の低い相手ばかりと戦う中で、「クロスレンジ」「ディフェンス」という宿題がほとんど解決されないまま先送りされてきたのは間違いありません。

もちろん、クロスレンジが得意なファイターなど、現役では全盛期のローマン・ゴンサレスくらいです。また、超攻撃型の井上と専守防衛型のファイターを並べて「防御が課題」というのも、どうかと思います。

2012年のプロデビューから超軽量級、12年間も過酷な減量で骨と肉を削り続け、まだ27戦とはいえ攻撃型ファイターとして被弾も少なくない31歳の肉体に何が起きているのか?

これを、劣化のサインと診ることは大きな間違いではないでしょう。

相手がネリで良かった。

そういうことかもしれませんが、これが終わりの始まりになるかもしれません。

もちろん、井上がPFPトップを争う完成度の高い攻撃型ファイターであることは間違いありませんが…。