2022年で廃刊となったリング誌ですが、DIGITAL MAGAZINEの形態ではしぶとく〝発行〟を続けています。

昨年は1月号、2月号、4月号、5月号、6+7合併号、8+9月合併号、11月号と7〝冊〟を〝発行〟。

今年も1月号、2月号と続いています。

1月号はFighter Of The Yearに選出した井上尚弥を単独カバー。

そして2月号はオレクサンデル・ウシクとタイソン・フューリーのフェイスオフを表紙に「POSTPONED(延期…)」がテーマ。

スパーリングで負ったとされる、フューリーの右目上の深いカットは自傷ではないかという疑惑も持ち上がっていますが、この史上空前のメガファイトのAサイドは35歳のジプシーキング。勝手にやって下さいませ。

このフューリーの工作?で、多くのブッカーでオッズが逆転、ウシク有利の掛け率まで現れました。

ウィリアム・ヒルでもフューリー4/5(1.8倍)、ウシクはEVS(1倍)。

ウシクは約220ポンド、フューリーは約280ポンド、60ポンド!差で争われるUndisputed championshipなんて前代未聞、驚天動地です。しかも、軽い方が優勢と見られているなんて…。

こんなことをされては、当日のリバウンドがー、複数階級制覇がー、PFPがーと、敏感に階級が語られるその他16階級の立場がありません。

ウシクが勝てばオールタイムPFP1位でも文句なしという声も上がっていましたが、もはや勝っても番狂せにならない数字になってしまいました。

現在、PFP上位を争っている井上尚弥やテレンス・クロフォード、カネロ・アルバレスらはウシクが引退するまでPFP1になれない、なんて事態が起きそうです。

PFPは弱者の言い訳、弱者の駆け込み寺であったはずなのに、そこに本物の強者が土足で上がり込むなんて、今後はどんなに強くてもヘビー級をPFPから外さなければなりません、真面目な話。





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日曜日の昼下がり、リング誌2月号(デジタル版なのに2月18日発行の2月号ってどうなのよ?)からお届けするのは、「POSTPONED の憂き目にあった過去のメガファイト」の記事ではなく「SINGLE COMBAT〜IN THE EMOTIONAL AFTERMATH OF HER TWO-DIVISION TRIUMPH, MIYO YOSHIDA BECAME BOXING’S NEWEST HERO(シングルマザーの戦い〜吉田実代は2階級制覇を成し遂げ、感動的な物語によって新しいヒロインになった」。

そうです。このブログでも取り上げた女パッキャオ、吉田実代です。

2022年8月、シングルマザーの吉田は8歳の一人娘・実衣菜の手を引いてニューヨークに乗り込みました。

元WBOジュニアバンタム級王者とはいえ、すぐにチャンスが巡ってくるはずもありません。それでも再び世界王者に返り咲くことを目指して、ニューヨークを選んだのでした。

殿堂入りのプロモーター、ルウ・ディベラと、名門グリーソンズ・ジムの所有者ブルース・シルバーグレイドは彼女を歓迎してくれました。

運が良い、としか言いようがありません。何のツテもない女子ボクサーが受け入れてくれるメンツではありません。

渡米第1戦はフライ級でインディヤ・スミスに判定勝ちを収め、11月7日に行われた2戦目でバンタム級のIBFインターコンチネンタル王者決定戦へ出場。優勢に試合を進めていたと思われましたが、結果は99−91/98−92/96-94と不可解な判定でシュレッタ・マトカーフに敗北。

「これでしばらくチャンスは来ない。あと2〜3年かかるかな」(吉田)と、誰もが幸運の歯車がここで軋んだと思いました。

30歳を超えた吉田は元王者の肩書をすり減らしながら、噛ませ犬扱いのキャリアになると。

しかし、この試合をIBFのダリル・ピープルズがリングサイドで見て「面白い選手だ」と感じていたのです。

そして…。

レジス・プログレイスvsデビン・ヘイニーのビッグファイト(12月9日:サンフランシスコ・チェイスセンター)のアンダーカードにセットされていたIBFバンタム級王者エバニー・ブリッジスの防衛戦の相手が試合3週間前に負傷。

吉田に勝利しているマトカーフにオファーが行くのが順番ですが、ヘイニーをプロモートしているディベラがピープルズ会長に「うちに面白い試合をする日本人がいる」とダメ元で持ちかけました。

ピープルズの「知ってるさ、ミナ・ヨシダだろう?先月試合をしたばかりだが、大丈夫なのか?」という言葉が終わる前に、ディべラはIBF会長の両手を掴んで握手していました。

ディベラが吉田に伝えると、予想通りの即答。

「やります、絶対にやります」。




DAZNとマッチルームのイベントでお馴染みのデビッド・ディアマンテは「戦うシングルマザー」と日本語で紹介、ディベラが仕込んだ粋なプレゼントでした。

7−1と圧倒的不利と見られた35歳のシングルマザーはキャリア最高のパフォーマンスを見せ、人気者の世界王者を下して2階級制覇に成功!

日本の女子ボクサーとして史上初めて米国でタイトルを奪取する快挙のオマケ付きでした。


Then the indelible image from that night, and perhaps the most memorable one of 2023, as a tearful Mina hugged her mother in the middle of the ring. They’d made it. A single mom and her daughter, on top of the world. In a negative business full of people jaded by dealing with nonsense day in and day out, this was an early Christmas gift.


この夜の忘れ難い、いや2023年で最も記憶に残る光景は、リングの真ん中で嬉し泣きにむせぶ実衣菜が母親と抱き合うシーンでした。

大観衆も、この偉業が二人で成し遂げられたことに気づくのです。

毎日、毎日、くだらないことに明け暮れる陰湿なボクシング界で、アメリカンドリームをつかんだ母娘が抱き合う姿は、少しだけ早い、最高に素敵なクリスマスプレゼントでした。

リング誌は吉田を「The Most Inspirational Female Fighter award(最も感動的な女子ボクサー)」に選出。日本の女子ボクサーではもちろん初めてのことでした。

吉田は「日本だけでなく、世界中に私のことを知って欲しいと思って戦ってきた。今夜はそれが少しだけできたかな」とインタビューに答えると、ディベラとジムジムメイトたちに感謝しました。

I’m actually sort of glad I got to see everything the way it unfolded with her daughter and saw what the public saw. It inspired me. And it takes a lot after 35 years of this miserable, wretched business for something to inspire me.

そのディべラは「彼女が何を成し遂げたのか、そしてそれがどんなに困難な道だったかを多くの人に伝わったことが、とにかく嬉しい。この惨めで腐ったボクシング界に、私が35年もしがみついている理由は、こういう素晴らしい光景を見ることが出来るからだ」と、やはりその感動を語っています。



実衣菜は母親のようなプロボクサーになることを目指して、練習を始めているそうです。

「日本ではシングルマザーでプロボクサーというと、危ないからやめなさい、子供がかわいそう、安定した企業に勤めなさいと言われてしまうけど、米国ではみんな応援してくれるから、すごくやりやすい」(吉田)。

そして、実衣菜については「私よりずっと才能がある」と評価。

次の感動は、この二人が母娘で世界チャンピオンになる光景かもしれません。