瞬間最大風速で語ると、田中将大の24勝0敗や、佐々木朗希の13者連続を含む19奪三振を取っての完全試合は、21世紀のNPBの中で特別な光を放っています。

しかし、彼らと同じように山本由伸も、私たちが2人目を見ることが出来ない投手でしょう。

3年連続投手四冠。瞬間最大風速ではなく、3シーズンにわたってこれほどの成績を収める投手は歴史上、山本しかいません。

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そんな歴史に残る名投手を、タイガースはなぜ粉砕できたのでしょうか。

もっと突き詰めると、山本はこれで日本Sは4戦先発して勝ち星なし。どうして「普段どおり」の実力を発揮できないのでしょうか。

〝番狂せ〟の類型に当てはめると【Overestimation and Underestimation】。

世間の山本への天井知らずの評価に、岡田は「難攻不落ゆうても6つも負けてるやん」と口を尖らせました。そして、だらしない歴史を迷走してきた超人気球団への過小評価。

しかし、それだけではありません。

ど素人が簡単に分析できる話ではありませんが、タイガースは「日本シリーズ初戦、相手は山本で普段どうりになんて、いかんよ」(岡田)と〝緊急事態〟と捉えていたのに対して、おそらく山本は「普段どおりのピッチングをしたら大丈夫」という意識があったのではないでしょうか。

「予祝」までして優勝を意識しまくり、開幕から歴史的な連敗を喫して沈んだ昨シーズンのタイガース。

今年は「アレ」と漢字二文字の目標意識をカタカナ2文字のオブラートにくるみ、日本シリーズになると「普段どおりにはいかんよ」。

リーグ三連覇、昨年の日本一、史上初の3年連続四冠投手…成功体験に彩られたバファローズ側が「普段どおり」から逸脱する理由は、探す方が超難題です。

一方で、タイガースという最も特殊なチームで現役時代を送り、2005年の日本シリーズでこれ以下はないという悪夢を見せつけられた岡田は「過剰な意識」や「普段通り」が地獄への罠であることを思い知らされてきました。

同じ関西のチーム。甲子園と京セラドームは電車で30分あまり、車で20分ちょっとの距離。しかし、両者の歴史、染みついた文化、そして何よりも現在のチームの性格は全く異なります。

先制点は渡邉諒のポテンヒット、初戦はタイガースに運もありました。山本が先発したバファローズに8−0で勝つなんて、とんでもない番狂せ、超常現象です。

昨夜の〝番狂せ〟で「普段どおりにはいかんよ」が「普段どおり」に勝ったと決めつけるのは早計です。

「普段どおりにはいかんよ」は弱者の戦略、「普段どおり」は強者のそれです。

まだ、7分の1しか終わってません。昨夜の8点は1点も持ち込めずに、今夜は0−0からのプレーボールです。1勝1敗になったら、タイではなく空気は逆転してしまうでしょう。

そして、何よりも史上初の3年連続四冠投手はもう一度マウンドに上がるはずです。


それにしても、タイガース。あれほどの大勝を収めても、ファンですら猜疑心を拭いきれない、ある意味恐ろしいチームです。