物心ついた頃には、その投手はすでに広島のエースでした。

しっかり振られた右腕から投じられた白球は、捕手が構えたミットに吸い込まれていきました。

20勝を挙げて最多勝のタイトルに輝いた1982年は、よく覚えています。

その前年、1981年は江川卓がやはり20勝で最多勝。「しばらく江川の時代が続くだろう」と誰もが覚悟していました。

19勝の江川に競り勝ちました。

もう、あれほどコントロールの優れた投手を、私たちは見ることができないかもしれません。

65歳。早過ぎます。




その投手の現役時代を、私は全く知りません。

コーチや解説者でしたが、正直、特に印象に残っていません。

それでも、そんな私でも、その名前をフルネームで覚えているのです。

中日の大エースであったことを、日本で初めてフォークボールを投げたことを知っています。デビューから9年で200勝を積み上げたことも知っています。

97歳。伝説が人生を全うしました。