ヘビー級以外の16階級では、体格差が絶対的なアドバンテージになることはあり得ません。

中谷潤人が長いリーチで、相手の射程距離外からパンチをつなぐことができるのは、相手の踏み込みを食い止め、自分の距離を作る技術があるからです。

逆に、懐に入り込まれると長いリーチと射程は不利にしかなりません。

マニー・パッキャオがオスカー・デラホーヤやジョシュア・クロッティ、アントニオ・マルガリートと明らかに体格が違う相手に対して「体が小さい方が有利に見える」(ESPN)ようなパフォーマンスを披露したのは、距離を自由自在に操ることが出来たからです。

体重差が同じか小さいなら、全ては距離を保てるか、距離を潰せるかの問題です。

マイク・タイソンが実践したように、同じ体重なら小さい方が筋肉量が分厚く、短いリーチはパンチの回転力と着弾までのスピードで優位に立てます。

しかし、大型化が進む現代のヘビー級でタイソンが戦うとすると、体重で圧倒的不利となり、下の階級のボクサーがそのまま上の階級に挑むような悲惨な結果になるでしょう。

パッキャオもフライ級のまま、ジュニアミドル級まで侵略したわけではありません。

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154ポンドのジュニアミドル級の前日計量では、ウェルター級の147ポンドにも満たない144ポンドでしたが、キャッチウエイトは151ポンド、アントニオ・マルガリートとの差は〝わずか〟7ポンドに過ぎませんでした。

パッキャオやフロイド・メイウェザーは特異なサンプルですが、彼らも含めて複数階級制覇は体重を増やすことによってのみ成し遂げられてきました。

しかし、ヘビー級で当たり前に行われているハンデキャップマッチは次元が異なります。

パックメイは、人気階級ではスピードとテクニックを対戦相手をいなすことに使い、スペクタクルな試合はすっかり影を潜めてしまいました。

しかし…ヘビー級では軽量のデオンティ・ワイルダーは右一発に大きく依存した攻撃的なスタイルで〝階級の違う〟大男を薙ぎ倒しているのです。

17階級時代ですら「階級が一つ違うとパワーも打たれ強さも全く違う」(長谷川穂積)というのに、ヘビー級では現実のリング内でも大きな体重差があるというのに、どうしてワイルダーのような芸当が出来るのでしょうか?

スピードとテクニックに大きく依存しているとはいえ、ワイルダーよりさらに軽いオレクサンダー・ウシクでも「その他16階級」ではあり得ない、現実にそこにある体重差を易々と乗り越えています。

細切れ軽量級では「1階級違うと全く違う」のに、ヘビー級ではどうして何階級も違うハンデキャップマッチで逆転現象が当たり前に起きているのでしょうか?