井上尚弥がバンタム級に参戦したのは2018年5月25日。

WBAセカンド王者(本当の王者はライアン・バーネット)のジェイミー・マクドネルに挑戦したときのことでした。

日本では「10年無敗の絶対王者」などという倒錯の冠が付けられたマクドネルでしたが、今回のポール・バトラーほど酷い評価ではありませんでしたが、誰もが階級最弱王者と見ていました。

そして、初防衛戦はファン・カルロス・パヤノ、2度目の防衛戦はIBF王者エマヌエル・ロドリゲス。

ロドリゲス戦は英国遠征で、井上はセミファイナル。メインに登場したのはホームのジョシュ・テイラーでした。

そうです、あのイベントは将来、バンタム級とジュニアウェルター級でUndisputed championになる二人が揃い踏みしたのでした。

それなのに、あの夜のグラズゴー、 The SSE Hydro arenaのスタンドには上階席を封鎖された寂しい風景が広がっていました。二つの世界戦がセットされていたというのに。

全く人気のないバンタム級で日本人とプエルトリコ人の無名対決、ジュニアウェルター級は英国で「10ストーン」と人気のあるクラスですが、テイラーにはリッキー・ハットンの強さも華やかさもありません。

英国では、バーネットが例外的に人気があったとはいえ、ミドル級から上の重量級とは比較すべくもなく、バンタム級は過去も現在も、おそらく未来永劫、不人気クラスです。

いいえ、未来永劫、不人気のままなのは英国だけでなく米国でも同じです。

それでも、大きな括りの中では「不人気」の範囲内でも、浮き沈みはあります。

井上尚弥の他は有象無象という現在のバンタム級シーンは、ESPNに言われるまでもなく、見るべきもののない砂漠階級です。

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「GBPの呪い」の一つ「生え抜きの選手は世界王者になれない」を最初に覆したのが、アブネル・マレスでした。ショータイムのバンタム級最強トーナメントで優勝、PFP入りしたマレスは、フェザー級で電子版4位まで登りましたが…過大評価?

2010〜2016年には、アンセルモ・モレノ、フェルナンド・モンティエル、ノニト・ドネア、アブネル・マレス、レオ・サンタクルス、山中慎介がPFP10傑に名前を連ね、ジョゼフ・アグベコと亀田興毅もPFP圏内に迫っていました。

井上が進出する前のバンタム級は、人気者も実力者も割拠、決して砂漠階級ではなかったのです。

もちろん、全ては偶然の巡り合わせ、幸運か不運か、です。

米国で見向きもされないはずの軽量級に、なぜか大人気を誇るPFPファイターのメキシカンが3人もいたというマニー・パッキャオはまさに強運にもほどがあります。

バンタム級の井上は、逆に不幸にもほどがあります。高評価を集めていたロドリゲスは、世界戦を重ねるごとに幻滅されてしまいました。

直近の試合でゲイリー・アントニオ・ラッセルを破ったのが、ロドリゲスの最高の勝利ですが、そういうことです。もはや、普通のホープ相手でアンダードッグの扱いです。

井上が、あと5年早く生まれていたら…それなりに活況を呈したバンタム級で戦えていたのに。もちろん、相手のレベルが違いますから、現在のような圧勝・楽勝ばかりではなかったでしょうが、面白い試合を演出できたはずです。

あるいは、もう少し我慢してジュニアバンタムにとどまっていたら、115ポンドはPFPファイターが湧き出ていたというのに。

全ては、巡り合わせ、運です。

軽量級への敬意がほとんど払われない米国で、メキシカンの歴史的グレートが1人どころか3人も雁首揃えて待っててくれたパッキャオ。

バンタム級の歴史で問答無用の存在であるエデル・ジョフレと、絶妙のタイミングでランデブーしたファイティング原田。

パッキャオや原田のような一発殿堂も超越したグレートは贅沢にすぎるにしても、井上だって、せめて現役のPFPファイター級とは対戦したいでしょう。



井上は、このまま「砂漠の絶対王者」のままキャリアを終えてしまうのでしょうか?