人の二倍も三倍もある大きな、バケモノに、はらわたを食われた仲間の死体を何度も見た村人たちは、あまりの恐怖に半狂乱になっていた。



村を助けるために呼び寄せた聖人は、小さな赤毛の老人だった。

村人はがっかりした。

あんたじゃダメだ。



聖人は、寝るときも火を消すな、と言った。村人は半信半疑だった。

その夜も化け物は現れたが、火を越えて近づこうとはしなかった。



聖人はあいつに名前を付けようと言った。

トラ、と。

村人は言いつけを守って、寝るときも火を消さなかった。

バケモノは毎晩現れたが、火を見ると巣に帰って行った。

いや、もう村人たちはバケモノとは呼ばなかった。

トラがまた来たよ。そう笑う子供までいた。

火の明かりに照らされるとトラの大きさが、毛色が、目が、丸見えだった。

火を燃やし、名前を付けたことで、バケモノは強い牙と顎を持っていて、猫よりもずっと大きいが、牛よりもずっと小さい、火を恐れるトラという動物だとわかった。



ある日、聖人は言った。

今夜は火を消そう。そろそろ、そのときだ、と。

村人の誰もが、大声でわめき、反対した。

そんなことをしたらトラがまた襲いかかってくるじゃないか、と。



聖人は、裸の人間と裸のトラが戦っては勝ち目はないが、裸では戦わない、と答えた。

そして、人間の方が強い、ということをトラにわからせなければならない、と聖人は言葉をつないだ。



それでも、村人はこのまま毎晩火を焚いて、引き分けのままで十分だ、と譲らなかった。



聖人の優しい目が、鬼の目に変わった。


雨季が来たら、どうするつもりだ。

火なんて燃やせないぞ、お前たちは、雨季まで生きられたら、それで満足なのか?、そう聞いた。



男たちはうろたえ、女たちと、子どもたちは泣き叫んだ。

それでも、トラと戦うしかないことに、誰もがおののきながらも、覚悟した。腹をくくった。



火を消した夜の村に、飢えたトラがジリジリと近づいてきた。

深く掘った落とし穴の上に餌を蒔いていた。穴の底には鋭角に切った竹を張り詰めていた。



トラの皮膚は石よりも硬いんじゃないか、切り立った竹など通用しないんじゃないか、トラには血も涙も無いんじゃないか、そう恐れる村人もいた。

しかし、そんな彼らでも迷いはなかった。

雨季になって、火を燃やせずに、食い殺されるくらいなら、戦って食い殺される方がましだと。





トラの群れは一匹残らず、落とし穴に落ちた。穴から這い上がってきたトラは一匹もいなかった。

バケモノの皮膚は石よりも硬いというのは、迷信だった。その全身には人間と同じ赤い血が流れていることを、断末魔には涙を流すことを、村人はその目に焼き付けた。



村人から尽きることのない感謝の言葉を捧げられた聖人は、私じゃない、お前たち全員がぶらぼうだと繰り返した。

聞き慣れない、ぶらぼうという言葉は村中にあふれて、はやって、こだました。



聖人が村を去る日も、ぶらぼうの叫びが大地に響きわたった。

村人は、最後に一つだけ聞かせてほしいと、聖人にたずねた。

あなたは、どうしてトラを恐れなかったのか、と。


聖人は、当たり前だと、笑った。

私は、トラの穴にいたんだよ、と。

トラがどれほど強いのかを、実はお前たちよりも私の方が、よく知っている。

そして、トラが絶対に勝てない相手じゃないことを、完全無欠の最強でないことを、同じくらいによく知っているのだよ。















GK 1 川島 永嗣  ストラスブール
GK 12 権田 修一  清水エスパルス
GK 23 シュミット ダニエル シントトロイデン
DF 2 山根 視来  川崎フロンターレ
DF 3 谷口 彰悟  川崎フロンターレ
DF 4 板倉 滉 ボルシアMG
DF 5 長友 佑都  FC東京
DF 16 冨安 健洋  アーセナル
DF 19 酒井 宏樹  浦和レッズ
DF 22 吉田 麻也  シャルケ04
DF 26 伊藤 洋輝  シュツットガルト
MF 6 遠藤 航 シュツットガルト
MF 7 柴崎 岳 レガネス
MF 8 堂安 律 フライブルク
MF 9 三笘 薫 ブライトン
MF 10 南野 拓実  モナコ
MF 11 久保 建英  ソシエダ
MF 13 守田 英正  スポルティング
MF 14 伊東 純也  スタッドランス
MF 15 鎌田 大地  フランクフルト
MF 17 田中 碧 デュッセルドルフ
MF 24 相馬 勇紀  名古屋グランパス
FW 18 浅野 拓磨  ボーフム
FW 20 町野 修斗  湘南ベルマーレ
FW 21 上田 綺世  セルクルブルージュ
FW 25 前田 大然  セルティック