Undisputed champion〜議論する余地のない王者。

プロボクシングの世界では当たり前に使われる言葉ですが、他のスポーツでは滅多にお目にかかれません。

Undisputed championは、直訳すると「議論する余地のない王者」。

わかりにくい言葉です。

例えば、井上尚弥を「議論する余地のない王者」と呼ぶことには全く問題がないように思えますが、その使い方は間違いです。

こうした勘違いから、5〜6年前までは山中慎介らをリングアナウンサーが「議論する余地のない王者」と紹介する勘違いも時折見られました。

現在、日本のメディアで目立つ「比類なき王者」という和訳も誤解を招くわかりにくい言葉です。

Undisputed championとは、議論する余地のない王者=他の誰にも王者を名乗らせない王者=完全統一王者、ということです。

もちろん、ボクシングの承認団体はいくらでもありますから「誰にも王者を名乗らせない」なんて無理です。

例えば、ワールド・ヤマネ・ボクシング・チャンピオンシップ(WYBC)のタイトルもUndisputed championになるための必要なピースとして考えてあげたいのですが、さすがのボクシング界もそこまでヒマではありません。

残念ながらWYBCにかまってるヒマはないのです。

そこで、アルファベット承認団体のWBAと WBC、IBF、WBOの4つのベルトを同時に保持した段階で、Undisputed championと呼ぶことが米国の共通認識になっています。

承認団体は一つ残らず腐敗しています。

同一団体・同一階級で世界王者を複数設定している場合は、上位タイトルを持つ王者一人しか認めないことになっています。

WBAでスーパー王者がいる場合は、レギュラー王者を認めません。


IBF王者テオフィモ・ロペスがWBA/WBO王者ワシル・ロマチェンコに勝利したとき、日本のメディアはライト級4団体統一と書きましたが、あのときのロマチェンコが保持していたWBCはフランチャイズタイトル。

防衛義務のない王座に座る者を「王者」と呼ぶことは出来ません。

プロボクシングの世界は数えきれないほどの常識や、矜持を捨ててきました。

4団体17階級などという、狂気の沙汰はそんな世界が行き着いた場所です。

それでも、ボクシングがチャンピオンシップ制度を取る限り、絶対に譲れないルールがあります。

それは同一団体で世界王座を設定することが許されるのは、一つの階級に一つだけ、という最後の常識です。

もちろん、腐敗した承認団体は同一階級に複数の世界タイトルを作りますが、そんな暴挙をまともなファンやメディアは認めません。

スーパー王者が存在する場合のWBAのレギュラー王者は「セカンド王者」であり、防衛義務のない WBCの名誉やダイアモンド、フランチャイズもタイトルとして認められません。

人気者のテオフィモがロマチェンコと戦うとき、WBCのマウリシオ・スライマンは「フランチャイズは上位タイトルで、 WBCのUndisputed titl。今回はロマチェンコにとって防衛戦になる」と、「防衛義務はない」と言い切った前言を覆しました。

また、テオフィモとロマチェンコをプロモートするトップランクと提携関係にあるESPNも中継スタジオに4つのベルトを並べて、この試合がUndisputed championshipであることを強調したのです。

テオフィモが大番狂わせで勝利すると、リング誌などは「テオフィモはUndisputed championではない」と記事の中で断りましたが、日本のメディアのほとんどは「4団体統一」と報じました。

Undisputed championなんてよくわからない、それなりの正しい意味があるから17階級あるんじやないの?そもそもチャンピオンシップ制度って何?…そんなの、どうでもいい、という人も多いでしょう。

ただ「ラスベガスのT-Mobileアリーナやニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン、バークレイズセンターのメインイベントでメガファイトを戦い勝利する」のが、日本ボクシングの目標の一つであるなら、アメリカのスタンダードを知るべきです。

その考え方と日本はズレていないか?ズレているとしたら、それはアメリカの方が間違ってることか、それともこっちが間違っているのか?

例えば、軽量級をミゼットボクシングと馬鹿にして、まともに扱わない米国市場は間違っています。

その裏返しになりますが、軽量級でも米国の最高の舞台が用意されるというのも大間違いです。

井上尚弥は大きな勘違いから米国市場に迷い込みましたが、日本に戻りました。

そして、Undisputed Champion まであと1試合、あと27日に迫りました。