WBAジュニアフライ級王者ローマン・ゴンサレスにファン・フランシスコ・エストラーダが挑戦した2012年11月17日(カリフォルニア州ロスアンゼルス・スポーツアリーナ)の試合が、第1章。

25歳のチョコラティトがユナニマス・デジション(110-118/112-116/112-116)で5度目の防衛に成功したものの、ガジョ(闘鶏)の異名通りの勇敢な戦いぶりを見せた22歳のメキシカンが勝っていたと推すメディアもあるほどのクロスゲームでした。

しかし、世界戦でも全く人気のない軽量級は「HBOにもShowtimeにも見向きもされなかった」(当時を振り返るボクシングマガジン2021年5月号)。

その後、無敗の連勝記録を46戦全勝まで伸ばしたチョコラティトはPFP史上最軽量、フライ級で1位評価に輝き、その座をなんと2年間も守ります。

それでも、米国では軽量級が注目される舞台はありません。

PPVのビッグファイトや大会場でのメインはお呼びではなく、ゴンサレスは「ファイトマネーが100万ドルにも遠く届かないPFPキング」(リング誌)という悲哀を味あわされます。

そして、ジュニアバンタム級で階級の壁にぶち当たったチョコラティトはシーサケット・ソールンビサイに連敗。

引退の危機にさらされるニカラグアの小さな巨人に対して、エストラーダはそのシーサケットに勝利してPFPのレギュラー選手になると、ジュニアバンタム級選手のPFPラッシュを牽引するフロントランナーになりました。

高い世界評価を得たガジョも「プロボクサーにとって最も不幸なことは小さな体で生まれてしまうこと。専門家の評価は嬉しいが、私は注目とカネが欲しい」と嘆きます。

「終わった」という声も囁かれたニカラグア人は、WBAジュニアバンタム級王者カリド・ヤファイに挑戦。キャリア初のアンダードッグでリングに上がりましたが、大方の予想を覆す出色のパフォーマンスで無敗の英国人を9ラウンドでストップ。

そのヤファイも「私がミドル級なら住む家も乗る車も何もかもが違っていた」と、軽量級の不幸を呪っていました。

そして、陽の当たることがない軽量級にもかかわらず、一般のボクシングファンには関心がないメディアの妄想ランキング上だけで傑出した世界評価を集めるという捻れた境遇の中、二人は、PFPファイター同士として再び拳を交えます。

2021年3月13日、初戦から9年の歳月を経て両者は再び世界タイトルマッチのリングに上がります。

会場はテキサス州ダラスのアメリカンエアラインズセンター。 DAZN が世界に配信したものの、ラスベガスやニューヨークの大会場とは無縁。セミファイナルにはWBAジュニアフライ級王者・京口紘人も登場したイベントです。

再戦は初戦を上回る大激闘。

スター選手がチキンな牽制を交換して塩分過多の試合が多い中量級や、動きが遅くすぐスタミナ切れするヘビー級では絶対に見られない、高度な技術と無尽蔵のスタミナを惜しみなく発揮した36分間でした。

オフィシャルはエストラーダから見て113-115/117-111/115-113のスプリットデジションで雪辱。

しかし、初戦とは逆に「チョコラティトが勝っていた」と、多くのメディアがジャッジに不満を示し、BoxRecのファン採点「116-112でチョコラティト」が妥当に見えました。

そして、初戦から10年。来月3日に二人はラバーマッチを迎えます。




リングが組まれるのは、アリゾナ州グレンデールのヒラ・リバー・アリーナ。NHLのアリゾナ・コヨーテズの本拠地で、キャパ1万7000人。

第2戦に続いてDAZN が世界に配信します。

オッズは、前戦で惜敗のチョコラティト勝利が8/15(1.53倍)、ガジョが6/4(2.5倍)。

二人ともPFPランキングから外れ、ローマン・ゴンサレスは35歳、ファン・フランシスコ・エストラーダは32歳になりました。

マイナースポーツのボクシング、その中でも圧倒的少数派とはいえ、軽量級の面白さを理解出来るコアなマニアは世界中に存在します。

そして、軽量級の名勝負が行われるのは日本だけではありません。




欧米のボクシングファンがその魅力を理解できない(気づくことができない)軽量級のディープな世界を耽溺できる日本のファンは、幸せです。