フェザー級から無敗のままジュニアウェルター級までの4階級を制覇したマイキー・ガルシアは、ウェルター級に挑んだ5階級目で苦い敗北を味わってしまいます。

舞台はAT&Tスタジアム、FOXがPPVで仕掛けたビッグイベント、リングサイドにはこのスタジアムで初めて戦ったファイター、マニー・パッキャオも招待されていました。

タイトルだけでなく、勝者がパッキャオとのメガファイトのチャンスを掴む、というカネと名誉も絡んだ試合は、当時も階級最強候補の一画でミドル級まで視野に入れているIBF王者エロール・スペンスにマイキーは何も出来ずに押し切られてしまいます。

浜田剛史は「階級の壁というよりもスペンスの壁」と表現しましたが、試合が行われた2019年3月19日時点での他団体王者はWBOがテレンス・クロフォード、WBCがショーン・ポーター、WBAスーパーがキース・サーマン、WBAセカンドに至ってはマニー・パッキャオという豪華さ。

誰が相手でも、マイキーにとって非常にリスキーな挑戦でした。

とはいえ、それはウェルターの〝階級事情〟。他のクラスなら、王者が5人いると一人くらいは穴王者を見つけられるものです。

2013年前後まで遡ると、このハイレベル階級でも生粋の穴王者エイドリアン・ブローナーや、Bレベルのロバート・ゲレーロ、マルコス・マイダナらがベルトを巻いていました。

井上尚弥はマイキーの挫折を見て「階級を上げて潰されたら意味がない」と語りましたが、潰されるという危険に立ち向かうような階級上げに、多くの人は身勝手なロマンを感じるものです。

マイキーのように、ロマンの香りを発散させながら美しく散ったファイターを振り返ります。
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幻に終わった「パッキャオvsスペンス」。「階級の壁」という常識をあざ笑うように越えていったフィリピン人の〝栄光への脱出〟。私たちはまたいつか〝パックマン〟と巡り会える幸運に恵まれるでしょうか?

「階級の壁」。承認団体や階級の数が膨れ上がる以前は、世界タイトルの価値は重く、その牙城を守るのが王者の生き方でした。

それでも、アーチー・ムーアらライトヘビー級の名選手にとって、ヘビー級への挑戦はまさに〝栄光への脱出〟でした。


これからご紹介するのは、4Belt-Eraでも複数階級制覇が当たり前になった21世紀以降の〝美しく散ったファイター〟たちです。