日本史上最大の試合。

選手の報酬や、世界の関心という点ではまさにその通りでした。

しかし、このイベントは「カネロ・アルバレス」のような高収益のビジネスではありません。一部では、赤字という報道もあります。

ビジネスという意味では、6月に東京ドームで行われる那須川天心vs武尊のキックボクシングが〝日本史上最大の試合〟かもしれません。

ただ、そもそも、この試合は最初から商売抜きで生命が吹き込まれた、完全無欠の夢でした。

その意味では「日本史上最大の試合」ではなく、正確には「日本史上最大の夢」だったのです。

この舞台は、2012年のロンドンで村田が金メダルを獲った瞬間から、日本のボクシングファンにとって〝約束の場所〟だったのです。

当初は「プロ転向はない」と明言していた村田を、業界の垣根を越えて説得に走り、チームを立ち上げた人たちの〝プロジェクトX〟は、私たちの夢を乗せて2013年にデビュー戦を迎えます。

あれから、ちょうど10年の節目の年に、彼らはついに約束を果たしました。

そして、村田は私たちの夢を賭けるのにふさわしいファイターであったことを、その舞台で証明してくれました。

村田もまた、約束を果たしてくれたのです。


2019年には「12月にカネロ・アルバレス戦が内定」とも報じられました。2021年12月29日には「ゴロフキン戦が決定」、チケットまで販売されたというのに。

日本側が主導権を握るにはあまりにも巨大な資金が必要で、深いコネクションが蠢く世界ミドル級タイトル。

そこに、パンデミックまでが覆いかぶさり紆余曲折、波乱万丈の10年間でした。

試合が決まった時点で、プロジェクトチームと日本のボクシングファンは勝利を手にしました。

そして、私たちの夢を乗せて最後まで堂々と戦った村田もまた、単なる敗者であるわけがありません。
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ゴロフキンがリングから降りると、向かった先は自身ではなく村田のドレッシングルーム。

「ムラタ!ムラタ!」と呼びながら、金メダリストの姿を見つけるとWBAベルトを「これは君のものだ。君とは何かを奪ったり奪われたりする関係じゃない」。

ゴロフキンは、対戦相手のことが好きで好きでたまらないのでしょう。

彼の中でリングの中で拳を交えることは、すなわち刎頸の交わりになる、ということなのです、きっと(カネロ以外)。

だったら、なんであんな残酷な強打を全く躊躇なく打ち込むんだ!?と私なんかは思ってしまいますが、拳を〝交え終えた〟ら、刎頸の交わりに変わるのかもしれません。

なんという恐ろしいゴロフキン・ルール。

そして、なんという素晴らしいゴロフキン・ルール。

ベルトも返してくれるし、ゴロフキンしか似合わない変な柄のガウンももらえます。

私もゴロフキンと戦ってみたくなりました(大嘘)。




ゴロフキンと村田、そしてこの試合の成立に尽力、奔走した方々には感謝と尊敬しかありません。

私たちは2022年4月9日の夜を一生忘れません。