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アスリートは、鮮やかな季節を持っています。

才能を芽吹かせる春から、技量を研磨し、経験を熟成させ、全盛期の夏を迎え、秋の坂道を降り、引退の冬に舞台から退場する。

ファイターの場合、全盛期に強力なライバルに恵まれないことは、最悪の不幸です。

あるいは、全盛期を不可抗力によって奪われてしまう悲劇もあります。

モハメド・アリが不当な収監で、25〜27歳の貴重な3年7ケ月もの歳月を失うことがなければ。

シュガー・レイ・レナードが網膜剥離によって、全盛期の実質5年あまりもの間、リングから遠ざかっていなければ。


アリやレナードとは真逆に、運命の女神に愛されたのがマニー・パッキャオでした。

メキシコの歴史上でも屈指の強豪・ピッグネームと総当たりの戦争を繰り広げ、ウェルター級進出時にはオスカー・デラホーヤが死に場所を探していたという、出来過ぎにも程がある舞台装置が、プライムタイムに用意されたのです。

全ては運命です。

そして、現在のこのパンデミックもまた多くのアスリートにとって過酷な運命です。

パンデミックがなければ、村田諒太は昨年末に東京ドームでカネロ・アルバレスを沈め、今年は再戦でテキサスやフロリダの巨大スタジアムで赤毛のメキシカンを返り討ちにしていたかもしれません。

井上尚弥は昨年4月にジョンリール・カシメロを粉砕、その年のうちにバンタム級コレクションをコンプリートして、今頃はジュニアフェザーのストラップをいくつか手にしていたかもしれません。

現在、ベーブ・ルースとの対決を圧倒的に優位に進めて米国を熱狂させている大谷翔平も、パンデミックがなければ日本でいくつものツアーが組まれて、エンゼルス・スタジアムに日本人が大挙して詰めかけていたでしょう。

しかし、村田と井上は、大谷と同じようには考えられません。

大谷はパンデミックの中でも出来ることは全てやっています。

しかし、日本人で史上最大のメガファイトを演じる可能性のある村田と、バンタム級統一からさらに陽の当たる場所を目指す井上はどうでしょうか?

競技が違うとはいえ、村田と井上の試合消化の鈍さは腹立たしいほどです。

ミドル級のマッチメイクはただでさえいくつも障害があるのに、コロナ禍で簡単に試合が組めるわけがない。

井上の米国でのマッチメイクを主導するトップランクは必要以上に対戦者選びに慎重になっているから、日本ではどうしょうもない。

こんな状況下です。言い訳はいくらでもあるでしょう。

しかし、せっかくの夏を何もせずにいたずらに浪費している、そう見えてしまうのは焦ったファンの杞憂でしょうか。

ノンタイトル戦でも構わないんです。ファンにとっても彼らにとっても、それがベターだと思います。

特に、井上の場合は試合のダメージがなければ、スケジュールを変更して格落ち相手の防衛戦や、ノンタイトル戦を挟むのも悪くないはずです。

ミドルの村田に至っては、次にいつ日本に現れるかわからない、途轍もない才能です。

とにかく、勿体ない。