ボクシングの試合は、基本的にカネがある方のホームで行われます。
常識的に考えれば、挑戦者は王者の牙城に攻め入るべきです。あるいは、ホーム&アウエーで2試合。
しかし、そんなお花畑の寝言はボクシングでは通用しません。
日本人が戦った世界戦のほとんどが国内で行われていることからも、誰にでもわかることです。
もちろん、外国人の王者や挑戦者にとってもファイトマネーが高い日本で戦えることは望むところ、理想的なWin−Winの関係です。
しかし、ある意味でボクシングよりも世界に対して閉鎖的だった野球やサッカーが、米国や欧州の「最高峰の舞台」を目指すようになり、80年代までギリで「世界で戦う日本人」の象徴だったボクシングは置いてけぼりを食っています。
世界チャンピオンの前にヘンテコなアルファベットがくっ付き、いつも日本で行われる世界タイトルマッチを繰り返す…。
興行側は「野球やサッカーのような最高峰の本場で戦う姿を見せなければならない」と考えるのは当然で、選手側も「欧州のトップリーグやMLBで活躍するように、ラスベガスで戦いたい」と希求するようになりました。
最も高額のチケットは転売されて35万1000ドル。米国のメガファイトから伝えられるニュースに「バンタム級でも似たことが起きる、だって同じボクシングだから」という無知な発想も刺激しました。
サッカーや野球は、日本にはありえないような大きな舞台が海外に存在します。
しかし、日本人にとって、特に軽量級のボクシングではそんなものは一切存在しません。歴史上、一度も存在したこともありません。
ビッグイフですが、もしマニー・パッキャオが日本人なら、オスカー・デラホーヤ戦までのほとんどの試合は日本で挙行されていたでしょう。
「デラホーヤ以降」は日本では用意できないファイトマネーがPPVで保障される米国のリングがメインになるでしょうが、それでも日本での凱旋試合は定期的に行われたでしょう。
フロイド・メイウェザー戦は、日本のメディアや企業が総力をあげて〝村田諒太〟を凌駕する巨大な神輿を組み上げ、東京ドームに強引に招致したかもしれません。
プロボクシングはアマチュアではありません、プロである限りカネがある場所で戦うのは当然、そこで用意される報酬が視聴者から集金したPPV であろうが、ハメドや西岡、井上のような母国からの手厚いバックアップであろうが関係ありません。
選手報酬で1位でない大坂なおみが世界最高報酬の女子アスリートに君臨しているのは日本企業から巨額のスポンサー収入を得ているからです。
東欧や南欧、東南アジア、アフリカ、中南米で生まれるのと、日本で生まれるのとではその収入は全く違うのです。
日本の有力プロモーション、巨額のテレビ放映権という後ろ盾がないままの井岡一翔の値段(2018年9月8日:THE SUPER FLY@カリフォルニア州イングルウッド)は、2万5000ドルでした。
当時、三階級制覇の井岡は日本やアジアのボクシングファンで知らない人はいないビッグネームでしたが、軽量級への関心が異常なまでに低い米国では全く無名。アジア人であるハンディを差し引いても10万ドルの値札はとても付けられないのが現実です。
昨年末の「井上尚弥vsジェイソン・マロニー」で、その報酬について大橋秀行会長は「コロナの中でも当初の提示どおりの100万ドル。このまま防衛戦を重ねていけば天文学的な数字になる」と語ってしまいましたが、トップランクやカリフォルニア州アスレティックコミッションから井上の報酬は明らかにされていません。
現在、スター街道を走っているテオフィモ・ロペスがトップランクが次戦の報酬として提示した125万ドルに不満を爆発させたニュースを聞いて、井上信者は何を思うのでしょうか。
ESPN本体ではなく配信サービスで提供されたバンタム級の試合で100万ドル。リング誌やESPNなどの専門メディアでも戦前予想や記事も極めて少なく、ひっそりと行われひっそりと終わったあの試合で100万ドル。
前例は少ないものの、ハメドのケースと構造は同じです。パッキャオのように力づくでアメリカをねじ伏せる方が格好良いのは当然ですが、ボクシングはビジネスの世界。
高額の〝憧れ料〟は、日本のファンを喜ばせる〝演出料〟です。
日本人なら誰でも〝演出料〟を支払ってくれるスポンサーはつくわけではありません。日本で認められたから、世界への切符が用意されるのです。売れないミュージシャンに、ニューヨークでレコーディングのご褒美なんてありえません。
プロとして胸を張って良いことです。
テニス世界ランク40位以下の錦織圭が、世界アスリート長者番付で並み居るスター選手を抑えて40位にランキングされているのを揶揄する人はどこにもいません。
当たり前です、何も恥ずかしいことをしていないのですから。むしろ、プロとして全く誇らしいことです。
では、どうして西岡や井上には批判も出てしまうのでしょうか?
簡単な話です。「米国に需要があって100万ドルが用意された」ような誤解を意図的に誘導したからです。最初から、ありのままで良かったのです。
「あのタイソンやパッキャオが上がったMGMグランドのリングに西岡が上がります。これ、本当に大変なこと、大偉業なんです」ではなく「ビッグファイトでお馴染みのガーデンアリーナではありません。ボールルーム(宴会場)です。報酬も日本の半分以下と聞いています。しかし、ここでラファエル・マルケスと戦う価値はそんなものでは測れません」で良かったんです。
それにしても、日本人は恵まれています。
トップランクの秘蔵っ子としてついにスターの階段に足をかけたテオフィモ・ロペスですら自分の待遇に不満を爆発、ボブ・アラムへの不信感をあらわにしています。
テオフィモが日本人なら…井上ですら100万ドルですから5〜6倍の収入が約束されていたでしょう。
23歳のテイクオーバーは自身が望んだとはいえ、ジョージ・カンボソス戦の競争入札の結果に「600万ドルで落札してくれたトリラーに感謝する」と喜ぶ一方で、3社競札で最低価格を提示したトップランクに「正直、傷ついた。マッチルームが参戦すると聞いて、トップランクは戦ってくれると思ったのに」と幻滅しています。
“(Top Rank president) Todd duBoef once said a couple of years ago that the promoters don’t need the fighters. I’m sure he’s thinking about that now. We’ll see.”
「これはビジネス。ファイターがプロモーターを必要としているように、プロモーターもファイターを必要としているはずだ。しかし、数年前にトップランクのトッド・デュボフ会長は『プロモーターにファイターは必要ない』と口にした。今もそのつもりなら、こっちもそのつもりだ」。
喧嘩腰です。
スター育成に定評のあるトップランクは、テオフィモも温室促成栽培で売り出します。
「ブルックリン育ちのホンジュラス移民の子」として、デビューはパッキャオの前座を用意。WBCコンチネンタル・アメリカ、NBAF、USBAなどのタイトルを与えながら15戦目で世界挑戦、16戦目でPFPキングのロマチェンコ攻略と、トップランクが路線図に描いた線路を着実に(vs中谷正義は違うけどな!)トレースしてきました。
トップランク側には「うちが育てなきゃ今頃どうなってたかわからない」という自負があるでしょう。
テオフィモには「俺がトップランクのエースじゃねえのか?」という自信があるでしょう。
選手とプロモーターの確執、これは永遠になくなることはありません。
〝アリ法〟以前の〝奴隷契約〟の時代よりはマシとはいえ、無名相手とはいえテオフィモの完全統一王座の初防衛戦。125万ドルはないと思います。
競札でトップランクの提示額が飛び抜けて低かったというのも、そりゃショックでしょう。
日本に呼んであげましょうか、テオフィモ。もちろん、リング誌を含めた5つのベルトは置いて帰ってもらいますが。
常識的に考えれば、挑戦者は王者の牙城に攻め入るべきです。あるいは、ホーム&アウエーで2試合。
しかし、そんなお花畑の寝言はボクシングでは通用しません。
日本人が戦った世界戦のほとんどが国内で行われていることからも、誰にでもわかることです。
もちろん、外国人の王者や挑戦者にとってもファイトマネーが高い日本で戦えることは望むところ、理想的なWin−Winの関係です。
しかし、ある意味でボクシングよりも世界に対して閉鎖的だった野球やサッカーが、米国や欧州の「最高峰の舞台」を目指すようになり、80年代までギリで「世界で戦う日本人」の象徴だったボクシングは置いてけぼりを食っています。
世界チャンピオンの前にヘンテコなアルファベットがくっ付き、いつも日本で行われる世界タイトルマッチを繰り返す…。
興行側は「野球やサッカーのような最高峰の本場で戦う姿を見せなければならない」と考えるのは当然で、選手側も「欧州のトップリーグやMLBで活躍するように、ラスベガスで戦いたい」と希求するようになりました。
最も高額のチケットは転売されて35万1000ドル。米国のメガファイトから伝えられるニュースに「バンタム級でも似たことが起きる、だって同じボクシングだから」という無知な発想も刺激しました。
サッカーや野球は、日本にはありえないような大きな舞台が海外に存在します。
しかし、日本人にとって、特に軽量級のボクシングではそんなものは一切存在しません。歴史上、一度も存在したこともありません。
ビッグイフですが、もしマニー・パッキャオが日本人なら、オスカー・デラホーヤ戦までのほとんどの試合は日本で挙行されていたでしょう。
「デラホーヤ以降」は日本では用意できないファイトマネーがPPVで保障される米国のリングがメインになるでしょうが、それでも日本での凱旋試合は定期的に行われたでしょう。
フロイド・メイウェザー戦は、日本のメディアや企業が総力をあげて〝村田諒太〟を凌駕する巨大な神輿を組み上げ、東京ドームに強引に招致したかもしれません。
プロボクシングはアマチュアではありません、プロである限りカネがある場所で戦うのは当然、そこで用意される報酬が視聴者から集金したPPV であろうが、ハメドや西岡、井上のような母国からの手厚いバックアップであろうが関係ありません。
選手報酬で1位でない大坂なおみが世界最高報酬の女子アスリートに君臨しているのは日本企業から巨額のスポンサー収入を得ているからです。
東欧や南欧、東南アジア、アフリカ、中南米で生まれるのと、日本で生まれるのとではその収入は全く違うのです。
日本の有力プロモーション、巨額のテレビ放映権という後ろ盾がないままの井岡一翔の値段(2018年9月8日:THE SUPER FLY@カリフォルニア州イングルウッド)は、2万5000ドルでした。
当時、三階級制覇の井岡は日本やアジアのボクシングファンで知らない人はいないビッグネームでしたが、軽量級への関心が異常なまでに低い米国では全く無名。アジア人であるハンディを差し引いても10万ドルの値札はとても付けられないのが現実です。
昨年末の「井上尚弥vsジェイソン・マロニー」で、その報酬について大橋秀行会長は「コロナの中でも当初の提示どおりの100万ドル。このまま防衛戦を重ねていけば天文学的な数字になる」と語ってしまいましたが、トップランクやカリフォルニア州アスレティックコミッションから井上の報酬は明らかにされていません。
現在、スター街道を走っているテオフィモ・ロペスがトップランクが次戦の報酬として提示した125万ドルに不満を爆発させたニュースを聞いて、井上信者は何を思うのでしょうか。
ESPN本体ではなく配信サービスで提供されたバンタム級の試合で100万ドル。リング誌やESPNなどの専門メディアでも戦前予想や記事も極めて少なく、ひっそりと行われひっそりと終わったあの試合で100万ドル。
前例は少ないものの、ハメドのケースと構造は同じです。パッキャオのように力づくでアメリカをねじ伏せる方が格好良いのは当然ですが、ボクシングはビジネスの世界。
高額の〝憧れ料〟は、日本のファンを喜ばせる〝演出料〟です。
日本人なら誰でも〝演出料〟を支払ってくれるスポンサーはつくわけではありません。日本で認められたから、世界への切符が用意されるのです。売れないミュージシャンに、ニューヨークでレコーディングのご褒美なんてありえません。
プロとして胸を張って良いことです。
テニス世界ランク40位以下の錦織圭が、世界アスリート長者番付で並み居るスター選手を抑えて40位にランキングされているのを揶揄する人はどこにもいません。
当たり前です、何も恥ずかしいことをしていないのですから。むしろ、プロとして全く誇らしいことです。
では、どうして西岡や井上には批判も出てしまうのでしょうか?
簡単な話です。「米国に需要があって100万ドルが用意された」ような誤解を意図的に誘導したからです。最初から、ありのままで良かったのです。
「あのタイソンやパッキャオが上がったMGMグランドのリングに西岡が上がります。これ、本当に大変なこと、大偉業なんです」ではなく「ビッグファイトでお馴染みのガーデンアリーナではありません。ボールルーム(宴会場)です。報酬も日本の半分以下と聞いています。しかし、ここでラファエル・マルケスと戦う価値はそんなものでは測れません」で良かったんです。
それにしても、日本人は恵まれています。
トップランクの秘蔵っ子としてついにスターの階段に足をかけたテオフィモ・ロペスですら自分の待遇に不満を爆発、ボブ・アラムへの不信感をあらわにしています。
テオフィモが日本人なら…井上ですら100万ドルですから5〜6倍の収入が約束されていたでしょう。
23歳のテイクオーバーは自身が望んだとはいえ、ジョージ・カンボソス戦の競争入札の結果に「600万ドルで落札してくれたトリラーに感謝する」と喜ぶ一方で、3社競札で最低価格を提示したトップランクに「正直、傷ついた。マッチルームが参戦すると聞いて、トップランクは戦ってくれると思ったのに」と幻滅しています。
“(Top Rank president) Todd duBoef once said a couple of years ago that the promoters don’t need the fighters. I’m sure he’s thinking about that now. We’ll see.”
「これはビジネス。ファイターがプロモーターを必要としているように、プロモーターもファイターを必要としているはずだ。しかし、数年前にトップランクのトッド・デュボフ会長は『プロモーターにファイターは必要ない』と口にした。今もそのつもりなら、こっちもそのつもりだ」。
喧嘩腰です。
スター育成に定評のあるトップランクは、テオフィモも温室促成栽培で売り出します。
「ブルックリン育ちのホンジュラス移民の子」として、デビューはパッキャオの前座を用意。WBCコンチネンタル・アメリカ、NBAF、USBAなどのタイトルを与えながら15戦目で世界挑戦、16戦目でPFPキングのロマチェンコ攻略と、トップランクが路線図に描いた線路を着実に(vs中谷正義は違うけどな!)トレースしてきました。
トップランク側には「うちが育てなきゃ今頃どうなってたかわからない」という自負があるでしょう。
テオフィモには「俺がトップランクのエースじゃねえのか?」という自信があるでしょう。
選手とプロモーターの確執、これは永遠になくなることはありません。
〝アリ法〟以前の〝奴隷契約〟の時代よりはマシとはいえ、無名相手とはいえテオフィモの完全統一王座の初防衛戦。125万ドルはないと思います。
競札でトップランクの提示額が飛び抜けて低かったというのも、そりゃショックでしょう。
日本に呼んであげましょうか、テオフィモ。もちろん、リング誌を含めた5つのベルトは置いて帰ってもらいますが。


コメント
コメント一覧 (3)
あの内容で最強を叫ばれても不愉快なだけです
しかも中谷に辛勝してからあんまり成長もしてない気がします
この分だと中谷と再戦なんかしたら普通に負けかねないですし、怪我が完治したロマチェンコなんか論外です
ロペス自身も自分が薄氷の上に立っていると内心では理解しているからこそ、今の内に大金を稼げるだけ稼ごうとゴネてるんじゃないですかね?
例の老人が言っていた「ロペスに600万ドルの価値は無い」という台詞も、今回は的を射ているんじゃないかと
フシ穴の眼
が
しました
サッカーなら、ワールドカップと欧州CL、野球ならワールドシリーズですね。
しかし、ボクシングの場合は階級や団体が多く、国によって人気階級に違いがありわかりにくい。
フシ穴の眼
が
しました