現在のボクシング界に「議論する余地のない世界王者」は1人もいません。

議論する余地のない王者、すなわち The Undisputed Champion とは、他の誰にも王者を名乗らせないということです。

しかし、今の世の中には世界タイトルは掃いて捨てるほどに溢れていますから、それらを一つ残らず統一することはほぼ不可能です。

そこで、欧米メディアでは主要アルファベット4団体の統一を持ってThe Undisputed Champion と認めています。

現在、The Undisputed Champion が1人もいないということは、全ての王者は多くの王者の中の1人に過ぎない、つまりa champion ということです。

何の瑕疵もない、文句無しの王者はいないということです。

4団体時代になってから自力で The Undisputed Champion の座に就いたのはバーナード・ホプキンス、テレンス・クロフォード、アレクサンダー・ウシクの3人だけ。

ホプキンスに勝ったジャーメイン・テイラーが〝他力的〟に The Undisputed Champion になっていますが、最低でも2試合の「統一作業」がこのブログでのローカル・ルールということで、除外します。

現在のボクシングシーンで The Undisputed Champion 、完全統一王者が最も価値がある王者と考えて全く差し支えありません。

この3人は、紛うことなき階級最強でした。

しかし、厄介なタイトルが他に二つあるのです。
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一つ目は、リング誌タイトル。

鷲が羽を広げた金色のバックルがチェーンでトリコロールのベルトに巻かれた美しくクラシックなリング誌のチャンピオンベルト。

日本では広く知られていませんが、本場米国はもとよりヨーロッパでも「いろんな団体のベルトではなく、これがずっと欲しかったんだ」(ウラジミール・クリチコ)という憧れの象徴です。

リング誌は、アルファベット団体よりも歴史があるだけでなく、チャンピオン制度を持つ公明正大なランキングを作成、王者の権威と説得力はアルファベット団体とは次元が違います。

一方で、厳格なチャンピオン制度は、複数階級制覇全盛の潮流などから空位が多くなるという弊害を起こしていますが、一つの階級に何人も王者がひしめくよりははるかにマシです。

ちなみに現在の空位は全17階級中9階級と過半越え。残る8階級でジュニアフライの京口紘人、バンタムの井上尚弥らが王者として承認されています。
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二つ目は、Lineal Champion 。

「王者を倒した者だけが王者」というチャンピオン制度の根幹を頑なに保守する考え方です。

このタイトルには承認団体などありませんから、ベルトも存在しません。目に見えないタイトルです。

そして、その定義も広義(王者に勝てば Lineal Champion ) から狭義(正統な王位継承以外は認めない)まで、その概念は曖昧きわまります。※

多くの場合、アルファベット団体よりも格上のリング誌王者やLineal Champion が、アルファベットのピースを一つも持っていない、なんてことはありえません。

しかし、ヘビー級のLineal Champion マイケル・スピンクスや、フェザーとジュニアウェルターのリング誌とLineal Champion マニー・パッキャオ、ミドル級のリング誌と Lineal Champion カネロ・アルバレス、ヘビー級のLineal Champion タイソン・フューリーが、アルファベット主要団体のピースを一つも持っていないというレアケースがありました。

このうち、パッキャオを除くケースでは、格下のはずのアルファベット団体の王者の方が明らかに強いと評価されていたという大きなネジレが生じていました。

かつて、世界王者はすべからく Undisputed Champion でありLineal Champion だった時代がありました。

日本だと白井義男やファイティング原田がそうです。 

現在、井上尚弥が史上4人目の「自力による The Undisputed Champion 」を目指しています。

王が溢れる世の中で「他の誰にも王を名乗らせない」という The Undisputed Champion が特別で貴重な存在でないわけがありません。

もちろん、パッキャオのような人気者はThe Undisputed Championなど興味がありません。Lineal Champion も貪るようなビッグネーム狩りの結果論でしかありません。

The Undisputed Champion がスーパースターになれないホプキンスやクロフォード、ウシクといった地味な実力者の存在証明のツールだとしても、大きな価値があることは誰も否定出来ません。

そして白井や原田がたった1試合で手にした The Undisputed Champion を、井上は3試合以上もかけて掴み取ることになります。

1団体8階級(原田は10階級)時代にThe Undisputed Champion になり防衛までやってのけた白井と原田の偉大さは認めざるをえませんが、 The Undisputed Champion になるまでの経緯は井上の方が遥かに困難で、彼はその複雑なプロセスを乗り越えたのです(まだなってないのに気が早いですが)。

何度も書いてますが、王者になるプロセスだけなら、どちらが素晴らしいかといえば井上です。道なき道を切り拓いたのですから(まだ半分しか取ってないのに気が早いですが…)。

前置きが長くなりました。

バンタム級のThe Undisputed Champion とLineal Champion を総括してゆきます。



※マニー・パッキャオが持つ〝世界記録〟は史上唯一の8階級制覇(2位は「6」のオスカー・デラホーヤ)と Lineal Titles 4階級制覇(フライ級/フェザー級/ジュニアライト級/ジュニアウェルター級 )の二つです。
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しかし、このLineal Titlesには「5階級説」もあってWikipedia ↑ などではこの立場を取っています。

てなみに、パッキャオはフライ=チャチャイ・ダッチボーイジム、フェザー=マルコ・アントニオ・バレラ、ジュニアライト=ファン・マヌエル・マルケス、ジュニアウェルター=リッキー・ハットン、ウェルター=ティモシー・ブラッドリーの五人からLineal Titles を奪っています。

さすが、レコードメーカーのパッキャオです。「Lineal Titles とは何なのか?」という問題にぴったりの参考資料です。ヒント満載ですが…。

Q:パッキャオは、Lineal Titles 5階級制覇なのか、それとも4階級制覇なのかを「ロッキー・マルシアノ」を使って説明せよ。