リング誌7月号はゲスト編集長にタイソン・フューリーを招いた「二人のタイソン特集」。

1988年8月12日。父親ジョン・フューリーから、6ヶ月半の早産でわずか1ポンド!で生まれた赤ん坊は「強くなれ」と「タイソン」の名前を与えられました。タイソン・フューリーです。

1966年6月30日。ニューヨークの治安が今では考えられないほど劣悪だった時代に、最も危険なエリアとされたブルックリン区ベッドフォード・スタイベサントでこの世に生を受けたのがマイク・タイソン。
IMG_3989
IMG_3990
タイソン一家が住んでいたブルックリン区ベッドフォード・スタイベサントの178号棟アパート。

二人のタイソンの見た目は肌の色だけでなく、何から何まで対照的です。

フレームは、フューリーは身長206㎝/リーチ216㎝。対するマイクは178㎝/180㎝(諸説あり)。

そしてウェイトは、フューリーが先日のデオンティ・ワイルダー戦で273ポンド(123.8kg)で仕上げたようにヘビー級史に残る重量なのに対して、マイクは多くの試合を220.7ポンド(100kg)を下回る軽量でリングに上がりました。 

そんな二人の特集をご紹介する前に、マイク・タイソンの歴史的評価について火曜日の昼休み、ちょっと時間を割いてみます。

一言でいうと、日本での評価が異様に高いのがマイク・タイソンです。

2度の来日での過剰な報道に、プロレスや総合格闘技のタイソン招聘への煽りが過大評価を積み重ねていったのです。

リング誌の評価では年間PFPと見て差し支えないBEST FIGHTER POLL で1988年と1989年にトップ評価(ただし全盛期のパックメイのような〝満票〟は集めることはできませんでした)と、無敗時代はその実力が高く評価されていました。

ただ、レベルが激落したヘビー級シーンで突出しているだけで強豪とは戦っていない、という無双状態のボクサーに付き物の批判からは免れませんでした。

とはいえ、ヘビー級です。フライ、バンタムならともかくヘビー級でそれを持ち出すと、他のスポーツでも「今年のペナントはレベルが低かったから首位打者の価値は下がる」ような戯言も言えちゃうことになります。

リカルド・ロペスや井上尚弥には「上のクラスに強いやつがいくらでもいるだろ」とケシかけることは出来ても、ヘビー級でそれを言うのは不条理です。

ただ、マイクの場合は強い相手にはことごとくノックアウトされ、恐怖から反則行為に走るなど精神的な脆さは歴史上でも他に類を見ないレベルでした。

マイクのキャリアで最強はイベンダー・ホリフィールドとレノックス・ルイスですが、その二人にことごとく破壊されたこと、その何もできない戦いぶりは多くの専門家を幻滅させるのに十分でした。

実際に、マイクが活躍した80年代と90年代の「10年区切りのPFP」では80年代で7位に入るのがやっと。タイソンの上にはシュガー・レイ・レナード(1位)、マービン・ハグラー(2位)、サルバドール・サンチェス(3位)、マイケル・スピンクス(4位)、トミー・ハーンズ(5位)、フリオ・セサール・チャベス(6位)が名前を連ねました。

おそらく日本のタイソン信者は「スピンクスより下なんておかしい!」と怒るかもしれませんが、海外では「9位のホームズはタイソンより上でしょ、普通は」というのが多くの見方でしたが、リング誌は「これは80年代区切りのランキング。80年代のホームズは衰えが激しかった」としています。

実際に、現在生きている「存命PFP」ではホームズは10位、タイソンは圏外です。

タイソンについては、自分で考えて練習することができないマイクにあくまで練習の一環としてナンバリングシステム考案したテディ・アトラスが「愚かなケビン・ルーニーは試合でもそのまま打たせている。チェスで先に打ち手を教えるようなもの」「マイクはイメージを膨らませながら練習ができない。ロボットと同じ。しかも心臓が触れたら砕けるほど弱い」と見放しました。

しかし、アトラスは「素質だけなら最高の選手」と認め「考えながら練習ができて、強いハートを持っていたらホリフィールドやルイスにも勝てた」と評価しています。

もちろん、アトラスの評価もタイソンについて回るタラ・レバのオンパレードなんですが。

タイソン信者が名トレーナーと盲信しているルーニーは風見鶏なだけでなく、アトラスの理論を間違って応用する最低トレーナーでした。

ビニー・パチエンザを指導したりもしましたが、他の有名選手からは無視され、悪い話しか聴きませんでしたが、やはりタイソン伝説の恩恵で日本のドキュメンタリーでは「稀代の名トレーナー」と紹介されることが多いのは笑うしかありません。

殿堂入りの際も、タイソンの評価については①強い相手にことごとく負けている。その負け方が最低。②凶悪犯罪の前科が多すぎる…ということから殿堂クラスの業績じゃないと議論されました(結局は一発殿堂)。

個人的には前述のように「ヘビー級は特別」です。そして、80年代後半から90年代にかけて世界のボクシングを盛り上げたのはタイソンです。その功績はあまりにも大きく、一発殿堂が議論になる方がどうかしています。

この、マイクと現代ヘビー級最強と目されるヒューリーのexhibitionが一時期噂されましたが、このご時世でのチャリティとしてならアリとは思いますが…。