*****ESPNから「人類対ウイルス〜パンデミックに立ち向かうアスリートたち」の拙訳です。*****
無敗のまま引退した世界王者。
それは、ロッキー・マルシアによって造形された〝勝ち逃げ〟と翻訳できるキャリアの締めくくり方です。
ミシェル・アボロも多くの人々が幻想を抱く、無敗のまま引退した世界王者の一人です。
To retire from boxing, she would join Rocky Marciano and a handful of others in boxing's history to retire as an Undefeated World Champion.
ナイジェリア人の血を引くアバロは、ロンドンのハンマースミス生まれ。
1995年に1ラウンドKOでプロデビューすると、そこから5連続でジャッジに勝利を委ねることなく快進撃。IBFヨーロッパ、IBFジュニアフェザー級王者を獲得、2001年11月にIBF王座の3度目の防衛に成功してから19年以上もリングに上がっていません。
こんな表現になってしまうのは、アボロが正式の引退を表明していないからです。
しかし、ボクシングファンでもアボロをよく知らない理由は「19年前のジュニアフェザー級王者」だからでも、「米国や英国ではないドイツ主戦場にした」からでもありません。
ミシェル・アボロは女性だからです。
英国では1996年まで女子ボクシングが禁止されていました。仕方なくアボロはロンドンを離れてオランダでキックボクサーとして生計を立て、それからドイツで念願のプロボクサーになりました。
ドイツ時代はクリチコ兄弟やゲンナディ・ゴロフキンらビッグネームが練習するジムに通い、彼らから多くの刺激を受けたといいます。
そして、家族のつてから上海に移住したアボロはトレーニングジム「アボロ・アカデミー」をオープンしていました。丁寧な指導は評判となり、ジムの経営は軌道に乗ります。
今年1月23日に春節を祝うために家族は実家のある深圳に旅立ちました。
しかし、数日も経たないうちにジム近所の住人が新型コロナに感染。ジムは無期限の閉鎖を余儀なくされます。
アマチュアとプロで活躍するボクサーたちも含めて270人以上いた練習生は自宅待機に、ジムの収入は絶たれてしまいます。
3月中旬、中国政府からようやく許可が下り、消毒滅菌に細心の注意を払いながらスタッフとレッスンを減らしてジムを再開しました。
今でもアボロは毎週、感染対策への取り組み状況を説明した申請書を提出。中国政府から次の週の運営許可を得てなんとかジムを維持しています。
ジムに入れるのは7名まで、ソーシャルディスタンスを守り、マスク着用を義務付けています。
「衛生管理には最大の注意を払っている。レッスンごとに、ジムを清掃・消毒を徹底。これは未来を約束するため。もし、このジムから感染者が出たらジ・エンドだから」。
アボロは4年前にキッズクラスからジムをオープンしました。「この国の子供たちは有り余るエネルギーのはけ口がないことが多い、そのことに気づいたから」。
ロックダウンの間も、アボロは週4日のオンラインクラスでコーチしていました。
「私たちの商売、売り上げはみんなが払ってくれる月謝が全て。そこを切られたら少ない貯金を切り崩していくしかない。再開したときに、また戻ってきてくれるために出来ることはなんでもした」。
3月中旬にジムを再開してから1ヶ月、練習生たちのうち200人が戻って来ました。
レッスンは少人数ながら1日4グループを実施。人と人との距離を取った個人練習ではマスクをつけなくても良くなりましたが、それでもスパーリングなど体が接触する練習は一切禁止のままです。
アバロの楽しみは離れてしまった家族とネットで話すことです。3歳の娘ブルーは、どうして会えないのか理解できません。
家族がいつ上海に帰れるのか、まだわかりません。「6月には許可が下りるという話もあるけど…まだ家族は深圳、私は上海。もう少し我慢するしかない」。
実は、アボロは重度の乳がんを克服したサバイバーでもあります。
「人生に逆境は付きもの。私は死んでいたかもしれないけど、化学療法と放射線治療のおかげでいまここで生きている!」。
「パンデミックは大きな逆境かもしれないけど、乗り越えるしかない。まだ戦いが終わったわけじゃない。とにかく絶対に負けるわけにはいかない」。
上海は本当に少しずつですが、普通の生活が戻りつつあります。
この戦いに打ち勝ったとしても、また新しい敵が私たちの前に立ち塞がるかもしれません。
「ロックダウンの間もいろんな噂がSNSで氾濫、根拠のない馬鹿げた話を真に受ける人もいるけど、冷静に考えて。それは誰が言ったの?どこから広がったの?」。
ボクシング界でも「5Gの電波にさらされるとコロナウイルスに感染する」というデマを信じたアミール・カーンが拡散。
テレンス・クロフォードは「新型コロナはただの風邪。知人で死んだ人はいない」と発言、「メディアの陰謀」とまで決めつけました。
「何の根拠もないSNSの情報を鵜呑みにしてしまう軽率な人にはならないで。目の前に確かに迫っている敵をしっかり見つめて戦うこと。そうしたら必ずまた一緒になれるから」。
無敗のまま引退した世界王者。
それは、ロッキー・マルシアによって造形された〝勝ち逃げ〟と翻訳できるキャリアの締めくくり方です。
ミシェル・アボロも多くの人々が幻想を抱く、無敗のまま引退した世界王者の一人です。
To retire from boxing, she would join Rocky Marciano and a handful of others in boxing's history to retire as an Undefeated World Champion.
ナイジェリア人の血を引くアバロは、ロンドンのハンマースミス生まれ。
1995年に1ラウンドKOでプロデビューすると、そこから5連続でジャッジに勝利を委ねることなく快進撃。IBFヨーロッパ、IBFジュニアフェザー級王者を獲得、2001年11月にIBF王座の3度目の防衛に成功してから19年以上もリングに上がっていません。
こんな表現になってしまうのは、アボロが正式の引退を表明していないからです。
しかし、ボクシングファンでもアボロをよく知らない理由は「19年前のジュニアフェザー級王者」だからでも、「米国や英国ではないドイツ主戦場にした」からでもありません。
ミシェル・アボロは女性だからです。
英国では1996年まで女子ボクシングが禁止されていました。仕方なくアボロはロンドンを離れてオランダでキックボクサーとして生計を立て、それからドイツで念願のプロボクサーになりました。
ドイツ時代はクリチコ兄弟やゲンナディ・ゴロフキンらビッグネームが練習するジムに通い、彼らから多くの刺激を受けたといいます。
そして、家族のつてから上海に移住したアボロはトレーニングジム「アボロ・アカデミー」をオープンしていました。丁寧な指導は評判となり、ジムの経営は軌道に乗ります。
今年1月23日に春節を祝うために家族は実家のある深圳に旅立ちました。
しかし、数日も経たないうちにジム近所の住人が新型コロナに感染。ジムは無期限の閉鎖を余儀なくされます。
アマチュアとプロで活躍するボクサーたちも含めて270人以上いた練習生は自宅待機に、ジムの収入は絶たれてしまいます。
3月中旬、中国政府からようやく許可が下り、消毒滅菌に細心の注意を払いながらスタッフとレッスンを減らしてジムを再開しました。
今でもアボロは毎週、感染対策への取り組み状況を説明した申請書を提出。中国政府から次の週の運営許可を得てなんとかジムを維持しています。
ジムに入れるのは7名まで、ソーシャルディスタンスを守り、マスク着用を義務付けています。
「衛生管理には最大の注意を払っている。レッスンごとに、ジムを清掃・消毒を徹底。これは未来を約束するため。もし、このジムから感染者が出たらジ・エンドだから」。
アボロは4年前にキッズクラスからジムをオープンしました。「この国の子供たちは有り余るエネルギーのはけ口がないことが多い、そのことに気づいたから」。
ロックダウンの間も、アボロは週4日のオンラインクラスでコーチしていました。
「私たちの商売、売り上げはみんなが払ってくれる月謝が全て。そこを切られたら少ない貯金を切り崩していくしかない。再開したときに、また戻ってきてくれるために出来ることはなんでもした」。
3月中旬にジムを再開してから1ヶ月、練習生たちのうち200人が戻って来ました。
レッスンは少人数ながら1日4グループを実施。人と人との距離を取った個人練習ではマスクをつけなくても良くなりましたが、それでもスパーリングなど体が接触する練習は一切禁止のままです。
アバロの楽しみは離れてしまった家族とネットで話すことです。3歳の娘ブルーは、どうして会えないのか理解できません。
家族がいつ上海に帰れるのか、まだわかりません。「6月には許可が下りるという話もあるけど…まだ家族は深圳、私は上海。もう少し我慢するしかない」。
実は、アボロは重度の乳がんを克服したサバイバーでもあります。
「人生に逆境は付きもの。私は死んでいたかもしれないけど、化学療法と放射線治療のおかげでいまここで生きている!」。
「パンデミックは大きな逆境かもしれないけど、乗り越えるしかない。まだ戦いが終わったわけじゃない。とにかく絶対に負けるわけにはいかない」。
上海は本当に少しずつですが、普通の生活が戻りつつあります。
この戦いに打ち勝ったとしても、また新しい敵が私たちの前に立ち塞がるかもしれません。
「ロックダウンの間もいろんな噂がSNSで氾濫、根拠のない馬鹿げた話を真に受ける人もいるけど、冷静に考えて。それは誰が言ったの?どこから広がったの?」。
ボクシング界でも「5Gの電波にさらされるとコロナウイルスに感染する」というデマを信じたアミール・カーンが拡散。
テレンス・クロフォードは「新型コロナはただの風邪。知人で死んだ人はいない」と発言、「メディアの陰謀」とまで決めつけました。
「何の根拠もないSNSの情報を鵜呑みにしてしまう軽率な人にはならないで。目の前に確かに迫っている敵をしっかり見つめて戦うこと。そうしたら必ずまた一緒になれるから」。
アボロの戦いはこれからも続きます。




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フシ穴の眼
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