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DONAIRE’ LONG COUNT
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2019年11月7日。

さいたまスーパーアリーナは2万人を超える有料入場者でフルハウス。軽量級がメイン、それもバンタム級で2万人も入るのは世界中どこを探しても日本だけです。

軽量級ゆえに不遇に甘んじてきたノニト・ドネアもメインで1万人以上の観衆の前で戦うのは、初体験だったでしょう。

ゲート収入は未発表ですが普通に考えて2億円レベル。これもラスベガスやニューヨークでは想像もできない数字です。

世界中の軽量級の選手が「日本で井上と戦いたい」と声を上げたのも無理はありません。


圧倒的なオッズと予想通りに、IBF王者井上は勝利を収めました。ただし、その展開は誰も予想していないものでした。

予想を裏切ったのは、12ラウンドに渡ってリングにいた3人です。

カットと骨折に苦しんだ井上。大健闘のドネア。そして不可解なジャッジを犯したレフェリー。
 

この試合でもありえないロングカウントが数えられてしまいました。

「それだけはもらわないように」と最大の警戒をしていたはずの左フックを早々に浴びた井上は、眼窩底骨折と右鼻孔下を骨折。衝撃で右目上をカットしてしまいます。

そこにヒットしたわけではないパンチでカットしてしまったのは、今後が心配です。ドネアのパンチ力ではなく、明らかにカットしやすい薄い皮膚、そしてもしかしたら脆い骨、です。

ドネアのパンチがそこまで強力なら今までの対戦相手は全員骨折して血だるま、目尻を衝撃でカットしているはずです。

それでも、試合は井上が主導権を握りながら進みます。

9ラウンドにはドネアの右ストレートで井上がダウン寸前の大ピンチに陥るなど、目の離せない展開が続きました。

そして、迎えた11ラウンド。

井上の右アッパーから左のボディがドネアの右の胴体、ストマックを斬り抜きました。ポーカーフェイスのドネアの表情がついに歪み、背中を見せてロープ伝いに逃げるとしゃがみこみます。

もちろん、ダウン。

本来なら打撃を受けたダメージで背中を向けたその時点で「ダウン」。そこからカウントを取るべきでした。

しかし、アーネスト・シャリフ主審は背走するドネアをかばうように体を入れて、井上の追撃を遮断。

「ローブローだと勘違いしたのではないか」というシャリフに同情的な意見もありますが、ベルト付近にヒットした微妙なパンチとは全く違います。

さらに、明らかなロングカウント。

もし、シャリフが正しいレフェリングをしていたら、ドネアはカウントアウトされていたでしょうか?

レフェリーのカウントを聞きながら立ち上がってきたドネアの姿を見れば、あそこでカウントアウトされることはなかったでしょう。

しかし、余分に与えられた5秒前後の回復時間は、再開後のモンスターの猛攻を凌ぐことができた理由の一つと考えられます。

幸い、ジーン・ターニーとバスター・ダグラスのケースとは違い、ドネアのロングカウントは勝利には結びつきませんでしたが、明らかに間違ったジャッジでした。

そして、12ラウンド判定。井上勝利に十分な内容だったにもかかわらず、一人のジャッジ(ロバート・ホイル)は1点差の114−113と採点。このスコアリングも苦い後味を残します。

彼のスコアでは、11ラウンドにダウンがなく井上の10−9ならドローだったことになります。


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B
oxing would not be Fun without Controversy. 

ボクシングに議論を呼ぶ判定は付き物、だから面白い。


本当にそうでしょうか?

全面的には受け入れることはできません。何よりも「議論を呼ぶようなジャッジ」は排除する方向で取り組んでいかなければなりません。

それでも、ここで紹介したロングカウントと採点については「ボクシングに議論を呼ぶ判定は付き物、だから面白い」という言葉を、完全に否定することはできないかもしれません。

また、そのときは明らかな誤審にしか見えなかったジャッジが長い時間で濾過されると正しかったかもしれないとも思えて来る場合もあります。




…もし、デンプシーが速やかにニュートラルコーナーに下がっていたら…バリーはカウントを10まで数え上げ、デンプシーの歴史的評価はさらに上になっていたでしょう。

……しかし、彼が羽織っている神話のガウンは今ほど豪奢で分厚くなかったかもしれません。

 

…あと2秒で勝利していたテーラーは、あの試合を境に全く別のボクサーになってしまいました…もしかしたらスティールの〝不可解なストップ〟は実は早すぎたのではなく、むしろ遅すぎたのかもしれません。



…あのとき、クレメンツが正しく「10−6」と採点していれば、パッキャオvsマルケスのリマッチはなく、もちろん衝撃的なフィナーレまで連なる4試合に及ぶ大叙事詩は紡がれなかったかもしれません。



…そして、さいたまスーパーアリーナの11ラウンド、シャリフが正確にカウントを数えていたら…36歳のフィリピン人が最後の1秒まで勇敢に戦い抜いた感動を私たちは目撃することができなかったかもしれません。