全階級の全ボクサーの中でも最も身体能力が高いとされてきたアンソニー・ジョシュアが、どっからみてもダルマチックなアンディ・ルイスJr.に4度も倒されてTKOに沈みました。

「ヘビー級のレベルは過去最低」。 それは、80年台後半のマイク・タイソンの時代から指摘され続けて今に至ります。

そもそも、スポーツは技術の世界です。後の時代の方が蓄積された技術を応用でき、練習方法もより合理化しています。

「前の時代の方がレベルが高い」 なんて懐古主義の老人がほざく戯言だ。…本当にそうでしょうか?

数字で判断できる陸上男子100mは、アリよりもタイソン、それよりもクリチコの時代が確かに進化しています。

しかし…それはメジャースポーツの男子100メートルだからです。

そうでない走り幅跳びなどの種目は、練習方法やシューズなどのギアが進化しているにもかかわらず停滞・退化しているのです。
18m95マイク・パウエル米国1991年8月30日
28m90ボブ・ビーモン米国1968年10月18日
38m87カール・ルイス米国1991年8月30日
48m86ロベルト・エミアンソ連1987年5月22日
58m74ラリー・マイリックス米国1988年7月18日
68m74エリック・ウォルダー米国1994年4月2日
78m74ドワイト・フィリップス米国2009年6月7日
88m73イルビング・サラディノ パナマ2008年5月2日
98m71イバン・ペドロソキューバ1995年7月18日
108m68フアン・ミゲル・エチェバリア キューバ2018年6月30日
「ボクシングだけはマイナー化しても進化する」なんて誰にも言えないでしょう。ましてや、ボクシングは少なくとも80年代から凋落一方なのですから、そのレベルの低下ぶりは走り幅跳びの比ではないかもしれません。

リング誌がヘビー級のレベルを10年区切りでABC評価した The State of the Heavy weight division〜A Look At Boxing's Premier Weight Class Decade から米国の誇りがいかに凋落していったかを辿ります。



【1892〜1899年】=GRADE:B
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1892年7月9日、ルイジアナ州ニューオーリンズはオリンピッククラブ。

銀行員上がり(アントニオ・ニエベスみたいですね)のジェームズ・J・コーベットがベアナックルの伝説ジョン・L・サリバンを21ラウンドでノックアウトした瞬間に、近代ボクシングは幕を開けました。

ベアナックルの時代が長かったとはいえ、まだまだ黎明期のボクシング。今のMMAと同じ頃合いの夜明けの時代でした。 

ミドル級王者のボブ・フィッツモンズがコーベットを倒した(1887年3月17日)のもこのディケイドの出来事です。

左ジャブやダッキング、ウィービング…ボクシングの基礎技術が開発・定着したこの時代のボクサーたちは現代に招けば、たちまち先進技術を吸収する素養があることは疑いようがありません。

デオンティ・ワイルダーは20歳でボクシングを始め2年10ヶ月後に五輪で銅メダルを獲得しましたが、フィッツモンズやジム・ジェフリーズらならもっと短い時間でもっと綺麗な色のメダルを持ち帰ったでしょう。

薄いグローブで思い切り体重を乗せて殴りあう彼らのパワーは、現代では凶器でしかありません。

これは言ってはいけないのは分かっていますが、アンディ・ルイスJr.がジェフリーズやフィッツモンズとガチで戦ったら……やめましょう。

この100年間が無駄だったなんて、あまりにも悲し過ぎます。