カネロvsジェイコブス、つまらない試合でした。

「ハードコアなボクシングオタクでもあの試合を楽しむのは難しかった。彼らは素晴らしい危機管理能力を36分間も飽きることなく披露してくれた。二人は自分たちがどれほど用心深いかを、これでもかと見せつけてくれたのだ。ただ、今度からそれをやるなら人気(ひとけ)のないところで二人だけでやって欲しい」(ESPN)。

何十億円ももらっておいて、勇気を見せないなんて最低です。

試合内容については思い出したくもないので、本題です、減量についてです。

昨日、ジェイコブスは「当日計量で170ポンドから1ポンド上回るごとに罰金25万ドル」の契約を活用しました(契約を破ったのではありません)。

ボクサーの健康と安全を守るため減量による衰弱状態からの回復時間を与えることを目的に、1990年代半ばに当日計量から移行された前日計量でしたが、四半世紀を経て「安全対策」以上に、いかに効果的にリバウンドするかという「戦略」としての意味も大きくなりました。

減量はそもそもからして「より弱い相手、より小さな相手と戦う」ことを目的とした「戦略」の意味を持っています。
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階級制、減量は公平な条件で戦うための絶対ルールのはずでしたが、前日計量によって新たな不公平が生まれ、ボクサーの健康と安全のための前日計量の意味すら脅かしています。

例えば、井上尚弥は「俺って53キロくらいが一番体が動いて力もみなぎるんや」という、他のスポーツでは常識の「ベスト体重」の考え方でバンタム級を選んでいるわけではありません。

試合のたびに10kgを超える減量を敢行し、前日計量から一晩で5kg以上リバウンドしてリングに上がるという健康上、非常に悪いことを繰り返しているのは「より弱い相手、より小さな相手」を求めるためです。

誤解してほしくないのですが、これはヘビー級を除いた世界中のボクサー全員に共通したことです。柔道やレスリング、総合格闘技…およそ階級制を敷くスポーツで減量がないなんてことはありえません。

下の表は、日本のファンにお馴染みの選手のリバウンド状況です。

マニー・パッキャオは、アントニオ・マルガリート戦の150ポンド、68.0kg契約で前日計量で5.3ポンド2.4kgアンダー、当日でも2.0ポンド0.9kgアンダーでした。

当日体重でも余裕で前日計量クリアなのに、この体重変化の意味は誰にも理解できません。彼とフロイド・メイウェザーは「より弱い相手、より小さな相手」を求める減量の根本概念が欠落している異常者です。

彼らが求めているのは「より楽してカネになる相手」ですが、ここでは変質者の話は置いておきましょう。
2017年選手前日当日増加増加率
4月23日井岡一翔50.8kg56.6kg5.8kg11.42%
8月15日山中慎介53.5kg58.2kg4.7kg8.79%
8月15日ルイス・ネリ53.5kg58.6kg5.1kg9.53%
10月22日比嘉大吾50.7kg54.2kg3.5kg6.90%
10月22日村田諒太72.5kg77.1kg4.6kg6.34%
12月31日京口紘人47.5kg51.5kg4.0kg8.42%
12月31日カルロス・ブイドラゴ47.1kg55.0kg7.9kg16.77%
      
2018年選手前日当日増加増加率
5月25日井上尚弥53.5kg59.5kg6.0kg11.21%
5月25日ジェイミー・マクドネル53.5kg65.3kg12.0kg22.42%
10月7日井上尚弥53.5kg58.5kg5.0kg9.35%
リバウンドはどの程度が効果的なのかは個体差によりますが、一般的には8〜13%が最適ゾーンといわれています。

20%を超えるとよほどの適性がない限りパフォーマンスの大幅な低減につながると考えられており、昨年5月のジェイミー・マクドネルは異常な状態だったと推測されます。

リバウンド効果が最も期待できる最適ゾーンに収めてくる井岡、山中、井上、京口は、減量苦の程度がわかりませんが、数字上は体重コントロールが非常に上手い選手と言えるでしょう。

ただ、IBFがルール化している「当日10ポンド4.53kg以上のリバウンド」のハードルには全員アウト!です。

19日にエマニュエル・ロドリゲスのIBF王座に挑む井上が心配になりますが、完全Aサイドの井上に10ポンドルールは適用されないはずですが…。

昨日のジェイコブスは前日160から173.6ポンドと13.6ポンド6.17kgもリバウンドしたと騒がれましたが、その増加率は最適ゾーンギリギリの8.5%に過ぎず、10%を超えてゾーンのど真ん中を射抜く井岡や井上を大きく下回る数字でした。

日本の東西エースは、世界的にもリバウンドの達人と言えそうです。

しかし今後、IBF的なリバウンド制限が他の団体でもルール化されるようなことがあると、リバウンド名人たちは深刻な窮地に立たされるかもしれません。