ボクシングの世界には、何年かに一度、忘れた頃に報じられる、そんな種類のニュースがいくつかあります。

「ベアナックル」もそんなテーマの一つです。

昨日、ESPNが「引退から丸2年経ったポール・マリナッジが、ベアナックルの試合をプロモートする「Bare Knukle Fighting Championship(BKFC)」と2年契約を締結した」と報じました。

プロボクサーで16年のキャリアを持つ38歳のマリナッジが、6月にニュージャンプシャー州マンチェスターでベアナックルの〝デビュー戦〟を飾るというのです。

BKFC創始者のデビッド・フェルドマンは「我々が興行を打つベアナックルはボクシングルールに準じるが、ボクシングとの最大の違いはグローブを着けずに裸の拳で殴り合うことだ」と説明。

マリナッジは「リングに復帰する気はなかったが、ベアナックルからの誘いは魅力的に思えた。ボクシングを始める前はストリートファイトに明け暮れていたが、そのときは当然ベアナックルだった。〝原点〟に戻るような気持ちになれるだけでなく、ベアナックルで私のボクシング技術が大きく活かせると確信した。今は6月のデビューが楽しみで仕方が無い」と現在の心境を語りました。

引退後は解説者として熱弁をふるってきたマリナッジでしたが「ベアナックルだと拳をひどく負傷してしまうと心配されるが、この古くて新しいスポーツには未来がある。少しずつ人気が集まり始めているこの発展途上のスポーツに私が貢献できることは大きいはずだ」と〝グローブを外してリングに上がる〟異例のカムバックにやる気満々です。

フェルドマンも「マリナッジはこのスポーツの看板として多くの注目を集めてくれるはずだ」と期待を寄せています。

マリナッジは2017年3月にサム・エジントンにノックアウト負けして引退していましたが、フロイド・メイウェザーが仕掛けた「世紀の茶番劇」(コナー・マクレガー戦)を前にマクレガーのスパーリングパートナーを務めていました。

このスパーリングでマクレガーが「マリナッジをダウンさせた」と発言、マリナッジは「あんなド素人に倒されるわけが無い」と反論。

誰もそのシーンを見ていない〝幻のダウン〟を巡って対立を深め、マリナッジはキャンプを離れます。

4月6日のベアナックル興行では、マクレガーの友人でトレーニングパートナーのアルテム・ロボフもデビュー戦が予定されており、マリナッジの6月デビュー戦の有力な対戦相手候補と見られています。

マリナッジとマクレガーの確執・因縁を背景にしたギミックが仕掛けられるということですね。

当のマリナッジは「ロボフは雑魚、興味は無い。マクレガーもド素人だが、カネにはなる」とMMAのスーパースターをベアナックルの世界に引っ張り込みたい算段です。

マリナッジはBKFCのジュニアミドル級(ボクシングより1ポンド重い155ポンドリミット)で戦う予定で、2分5ラウンドが基本、タイトルマッチは2分7ラウンドで行うとされています。

ボクサー時代はそのフェザータッチ(パンチがない)で有名だったマリナッジですが、拳の故障にはたびたび悩まされており、その点からも「マリナッジにベアナックルが出来るのか?」と懐疑的な声も上がっていますが「拳の問題は全く無い。このスポーツでこそ私は無双できるだろう」と強い自信を見せています。


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19世紀後半に制定されたクイーンズベリールールは、ベアナックルで戦っていたボクシングをよりスポーツライクな色彩塗り替えました。

それは嘉納治五郎によって柔術が柔道に、さらにJUDOへと整備(あえて「昇華」という言葉は使いません)された経緯に似ているかもしれません。

このベアナックル、米国では細々とその命脈を繋いできました。

とはいえ、明るい未来など望むべくもなく、絶滅はしていないというレベルの細々とした営みです。
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1892年9月7日、クイーンズベリールールで行われた世界ヘビー級タイトルマッチ。サリバンvsコーベット。足を止めて打ち合うことしか知らない伝説のベアナックラーは、フットワークに乗ってジャブを繰り出す近代ボクシングに翻弄され、21ラウンドKO負けを喫してしまいます。

再びシーラカンスの時代が巡ってくるとは、考えられません。

しかし、今でも米国のボクシングファンの間で、最後のベアナックル世界王者ジョン・L・サリバンの伝説が愛情を持って語り継がれています。

多くの日本人は柔術と聞いてもピンと来ませんが、米国人はベアナックルに対して冷めることのない郷愁を抱いているのでしょう。

昨年から立ち上げられたBKFCが大きなムーブメントにはならずにフェイドアウトしてしまっても、また新しいベアナックルの試みが繰り返されていくはずです…。