大谷翔平。

大坂なおみ。

錦織圭。

小平奈緒。

紀平梨花。


…世界で活躍する日本人が珍しくない時代です。

世界で活躍した彼らの多くは、凱旋帰国すると外国人記者クラブで会見を開きますが、ボクシングの選手が海外で勝利してもそこに呼ばれることはほとんどありません。

西岡利晃や井上尚弥は、米国で世界タイトルの防衛戦に勝利を収めました。

しかし、その相手はとっくにピークが過ぎて引退勧告まで出されていた元ビッグネームと、全く無名の銀行マンという世界戦の舞台に上がる資格があるのかどうかさえ怪しいボクサーでしたから〝世界と戦った〟とは到底言えません。

しかし、プエルトリコで次世代エースの一人と期待されたクリストファー・ディアスを攻め落として世界王者になった伊藤雅雪も、中国の国民的英雄ゾウ・シミンを大番狂わせでノックアウトした木村翔も、外国人記者には大きな関心事にはなり得ませんでした(木村は事実上の〝世界最大メディア〟新華社通信では大きく報道されています)。
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日本でボクシングの世界チャンピオンの扱いが軽すぎるのは、なぜなのでしょうか?

ボクシングはマイナースポーツだから?

いいえ、もし日本人がデオンティ・ワイルダー に勝ってWBC世界ヘビー級王者になって凱旋したら、間違いなく外国人記者クラブで会見でしょう。

ヘビー級でなくとも、全盛期のマニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーからウェルター級のベルトを強奪しても、有楽町電機ビル20階のそこに呼ばれるのは間違いありません。

そう考えると、ボクシング自体はマイナーとはいえ、欧米でも注目されている階級のスターに勝てば外国人記者クラブの関心を集められると思われます。

井上は世界チャンピオンで、日本人として初めてリング誌の単独カバーを飾りました。

しかし、この〝快挙〟は「井上が世界の扉をこじ開けた」というよりも「落ちぶれた米国のボクシング専門誌が極東の富裕国にすり寄った」というのが真実でしょう。

もし、米国ボクシングの惨状の進行が3〜4年早まっていたら、山中慎介や内山高志がリング誌をカバーしていたはずです。

そう考えると、軽量級ボクサーはたとえ世界チャンピオンでも、世界の関心事ではない、という悲しい事実に突き当たります。

悲しい、と書きましたが、それは「井上のWBSSはラスベガスの大会場やマジソンスクエアでやって欲しい」と妄想する蒙昧な人々にとっては悲しいということです。

どこでやろうが、ラスベガスやニューヨークでやるから凄いとか、そんなことは関係なく、軽量級を愛しているボクシングファンにとっては、今こそこのクラスのビッグファイトを日本で根付かせるチャンスに見えます。

「アスリートは海外の大舞台で活躍するするのがカッコいい」。

野茂英雄が海を渡りMLBに旋風を巻き起こし、中田英寿がセリエAで中心選手として活躍したことで、ボクシングの世界でもファンはもちろん、選手までもが「軽量級でもラスベガスがメッカ」という全く根拠のない、論理的に飛躍し過ぎの妄想が渦巻き始めてしまうのです。

この「アメリカやヨーロッパに本場があって欲しい」という願望が、メイウェザーやパッキャオらがラスベガスでとんでもないメガファイトを繰り広げているから「軽量級もラスベガスで活躍したら何億、何十億も稼げるのだ!」と、盲目的・痴呆的に変換されてしまったのです。

メディアもそれが妄想だと知りながら、妄想を焚きつけるような報道に走りました。

最近では「井上尚弥が高額賞金トーナメントWBSSに出場する」というのがその典型です。

欧米で関心の低いバンタム級のトーナメントに巨額の資金が投じられるなんてありえません。

しかし、欧米では大きなビジネスになり得ない軽量級でも、このクラスから多くの伝説を輩出してきたアジアでは事情が変わって来ます。

「スーパーフライ興行は面白い、大きく触発された。ただし、HBOは間違いなく失敗する。選手も格安報酬でモチベーションは低い。何より軽量級ファンは米国にはいないも同然。しかし、アジアでは全く違う土壌がある」。

One Fighting Championship の共同代表チャトリ・シットヨートンの言葉です。

「スーパーフライはアジアがやるべきイベントだった。我々はこれから総合格闘技だけでなく、ボクシングにも動く」。

その言葉通り、今年に入ってシーサケット・ソールンビサイを引き抜き、マニー・パッキャオともボクシングの試合出場を前提に巨額の選手契約を結びました。

外国人記者クラブの会見は「世界に発信したい日本のニュース」を取り上げます。

井上が日本やアジア開催の軽量級メガファイトに勝利し、大きな人気と話題を集めたら、ありもしないラスベガスの白昼夢など見なくとも、有楽町電機ビルに招かれるでしょう。

軽量級の〝ラスベガス〟は、アジアにあります…あるとしたら、生まれるとしたら、それはアジアしかありえません。

その舞台が日本だといいのですが…。

次回は、日本から盟主の座を奪わんとするタイとシンガポール連合の「アジアの事情」です。