ボクシングは最古のプロスポーツです。

その起源、古代ローマ時代まで遡ることはしませんが、現代につながる系譜として19世紀の英国まで時計の針を逆回しします。

19世紀、ベアナックルの時代。テレビもラジオもない時代。試合は町の広場で行われ、円形のロープを張って、その中で二人のボクサーが戦いました。
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現在、四角いのに「リング」と呼ばれるのは、この当時リングが円形であったことの名残というのが通説です。

しかし、1860年に行われた史上最初のメガファイト「トム・セイヤーズvsジョン・ヒーナン」で両者が対峙しているのは、明らかに四角いリングです。

おそらく、黎明期のボクシングには明確なルールはなく、リングにしても円形や四角が混交していたのでしょう。

当時のファイトマネーは、試合を主催するパブや売春宿が客から集めた懸賞金から支払われていました。

そして、複数の店が懸賞金を持ち寄る場合は、資金を管理する委託人がその役割を担いました。プロモーターの誕生です。

多くの懸賞金が集まる〝ビッグファイト〟にはプロモーターの存在が欠かせません。

酒場や売春宿の経営者、ギャンブル好きの貴族がプロモーターの仕事を引き受けるようになりました。

プロモーターは懸賞金や傘下のボクサーの管理のために会社組織、協会組織の形をとるようになります。

ただし、この時代のボクシングは違法でした。

それでも法の網をくぐり抜けて、ボクシングを愛好する貴族たちにベアナックルの試合を提供する賭博場・ペリカンクラブのようなリングもありました。

1865年にはクイーンズベリー・ルールによって、グローブが登場、ベアナックルは衰退を辿り、ボクシングのルール整備が進みます。

そして、1891年にナショナル・スポーティング・クラブ(NSC)が設立されると、ボクシングはついに「公認」されます。英国王者にはスポーツ愛好家のロンズデール伯爵からベルトが寄贈されるようになりました。
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これが、有名なロンズデールベルト、ボクシングはもちろん、プロレスやキックボクシング、MMAの王者に贈られるチャンピオンベルトの起源です。

ベアナックルの試合に金を賭けて興じるペリカンクラブが閉鎖され、興行を独占するようになったNSCはルールやボクサーの管理に本格的に乗り出します。

ベアナックル全盛の1865年にグローブ着用のルールを明文化させたクイーンズベリー卿、チャンピオンベルトを考案したロンズデール伯爵…英国ボクシングの黎明期を語るとき、上流社会に生きる貴族の存在は欠かせません。

プロモーター、プロボクシング興行において欠くことのできないこの仕事は英国では貴族が担ってきたのです。

そして、その役割を米国ではマフィアが独占しました。

貴族とマフィア。対極に見える両者は実は同根、同じ穴の狢です。

それゆえに、両国のボクシングは当然の齟齬と、奇妙な符合を見せながら発展、今日に至るのです。