悲しいかな、24日に名古屋で行われたWBO世界フライ級タイトルマッチ、遅ればせながら録画観戦です。
田中恒成の入場曲はフレディ・マーキュリーのI was born to love you。木村翔は竹原ピストルのFoever Young。いやいや二人とも、素晴らしい選曲です。
田中は、もっと上手に戦える技術を持っているのに、その戦いの中で相手の良さも引き出そうとすることが、ままあります。それは、あたかもプロレスラーのように。
いわゆる〝メキシカン・スタイル〟なのですが、エリートには有るまじき性癖です。
対する、チャンピオンの木村は生粋の〝メキシカン〟。
この舞台が西海岸で、二人がメキシコ人か、メキシコ系アメリカ人なら、間違いなく年間最高試合の筆頭候補に挙げられたでしょう。そして、二人の人気が沸騰していたのは間違いありません。
今から12年も前、2006年に二人のメキシコ人、ジョニー・ゴンザレスとフェルナンド・モンティエルが WBOバンタムのタイトルを争った時、リング誌をはじめ多くのメディアが「マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレスの後継者候補。素晴らしい試合になる」と煽りましたが、内容はどちらも危険を恐れて冒険をしない塩分過多の凡戦、期待は幻滅に変わります。
ファンもメディアも「これからスターダムの坂道を登ろうとするボクサーにはあるまじき小さな心。二人とも大成はしない」と一刀両断しました。
現実にはその後、ゴンザレスは二階級制覇。モンティエルも三階級制覇を成し遂げましたが、彼らと「バレラとモラレス」が比較される日は二度と訪れることはなく、二軍のままキャリアを終わろうとしています。
ジョニゴンもモンティエルも「絶対に負けられないという思いが先行してしまった」と、あの試合を回想するように、同国人対決にはプライドや意地や見栄が複雑に絡み合います。
そうした、見えない呪縛を振り解いて「負けたくない」なんてマイナス思考ではなく、「あいつに絶対に勝つんだ」と真っ向勝負を展開したバレラvsモラレス、木村vs田中は素晴らしいスピリットの持ち主です。
一発殿堂の「バレラとモラレス」と、「ジョニゴンとモンティエル」や、まだまだこれから実績を積み上げる段階の「田中と木村」を並列に語るべきではないかもしれません。
それでも、バレラとモラレスにあって、ジョニゴンとモンティエルに欠落していたものを、田中と木村が見せてくれたことは事実です。
読売新聞の「内山高志の目」で自身も二度の日本人対決を経験している内山が「歴史に残る日本人対決」と評価し たのも頷けます。
内山は116−112と試合を採点、「田中が引かずに(フッカーの木村に対して)すぐにストレートを打ち返した。木村はもう少し(速く着弾できる)ジャブやストレートを当てることができれば展開は変わっていた」と勝負のポイントに挙げています。
確かに、その通りですが、ジャブやストレートを起点に攻撃を組み立てていては、木村の〝暴風雨スタイル〟は成り立ちません。それじゃ、暴風雨じゃないのです。
木村に〝タラレバ〟があるとしたら、海外での前戦から二ヶ月も経たない短いスパンで、キャリア最強の相手をアウエーで迎えなければならなかったことでしょう。
この試合間隔の短さが、木村にとってプラスだったのかマイナスだったのかと考えると、マイナス要素の方が大きかったのは間違いありません。
もっとフレッシュな状態で、中京の俊才と戦わせたかった…。
もちろん、こんなタラレバはファンがのたまう戯言に過ぎません。
木村翔は、負けたのです。
ボクシングにおける敗北は、他のスポーツのそれとは全く意味合いが、重大さが異なります。
他のスポーツでは敗北は簡単に忘れられ、乗り越えることも出来ます。
たったの1敗ですら 、ジョージ・フォアマンやトーマス・ハーンズはその軛に苦しみ続けました。
しかし、木村翔のこの敗北は、少なくともファンにとっては「また、あなたの面白い試合が見たい」というリクエストの熱量を引き上げるのに十分過ぎる、大きな〝勝利〟を収めた試合でした。
この夜の木村は、田中の引き立て役では、決してありませんでした。
月並みな言い方、ベタベタで申しわけありませんが、この試合のBiggest Winnerは、田中ではありません。もちろん、木村でもありません。
ボクシングファンです。
ファンを勝者にしてくれる試合なんて、滅多にありません。
そんな、貴重な試合を見せてくれた二人に感謝、感謝、感謝です。
結果も内容も知ってしまった試合だけに、色んなバイアスがかかってましたが、個人的には115-113で田中勝利でした。
どっちに振るか迷うラウンドが初回からありましたし、ドローも納得です。
間違いなくクロスゲームでしたが、いわゆる〝ラスベガス・スコア〟なら田中の117-111もありかもしれません。
まー、とにかくいい試合でした。
このブログでもよく取り上げてますが、軽量級の魅力を説き続けているESPNの編集委員で元リング誌編集長のナイジェル・コリンズっておじいちゃんがいます。
彼もこの試合を見たでしょうが、きっと「これがボクシングだ」と狂喜乱舞したはずです。
2ラウンドの田中のカウンター、お見事でした。あのダメージから反撃したチャンピオン木村の逞しさは、同じくお見事でした。
このブログでもよく取り上げてますが、軽量級の魅力を説き続けているESPNの編集委員で元リング誌編集長のナイジェル・コリンズっておじいちゃんがいます。
彼もこの試合を見たでしょうが、きっと「これがボクシングだ」と狂喜乱舞したはずです。
2ラウンドの田中のカウンター、お見事でした。あのダメージから反撃したチャンピオン木村の逞しさは、同じくお見事でした。

田中は、もっと上手に戦える技術を持っているのに、その戦いの中で相手の良さも引き出そうとすることが、ままあります。それは、あたかもプロレスラーのように。
いわゆる〝メキシカン・スタイル〟なのですが、エリートには有るまじき性癖です。
対する、チャンピオンの木村は生粋の〝メキシカン〟。
この舞台が西海岸で、二人がメキシコ人か、メキシコ系アメリカ人なら、間違いなく年間最高試合の筆頭候補に挙げられたでしょう。そして、二人の人気が沸騰していたのは間違いありません。
今から12年も前、2006年に二人のメキシコ人、ジョニー・ゴンザレスとフェルナンド・モンティエルが WBOバンタムのタイトルを争った時、リング誌をはじめ多くのメディアが「マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレスの後継者候補。素晴らしい試合になる」と煽りましたが、内容はどちらも危険を恐れて冒険をしない塩分過多の凡戦、期待は幻滅に変わります。
ファンもメディアも「これからスターダムの坂道を登ろうとするボクサーにはあるまじき小さな心。二人とも大成はしない」と一刀両断しました。
現実にはその後、ゴンザレスは二階級制覇。モンティエルも三階級制覇を成し遂げましたが、彼らと「バレラとモラレス」が比較される日は二度と訪れることはなく、二軍のままキャリアを終わろうとしています。
ジョニゴンもモンティエルも「絶対に負けられないという思いが先行してしまった」と、あの試合を回想するように、同国人対決にはプライドや意地や見栄が複雑に絡み合います。
そうした、見えない呪縛を振り解いて「負けたくない」なんてマイナス思考ではなく、「あいつに絶対に勝つんだ」と真っ向勝負を展開したバレラvsモラレス、木村vs田中は素晴らしいスピリットの持ち主です。
一発殿堂の「バレラとモラレス」と、「ジョニゴンとモンティエル」や、まだまだこれから実績を積み上げる段階の「田中と木村」を並列に語るべきではないかもしれません。
それでも、バレラとモラレスにあって、ジョニゴンとモンティエルに欠落していたものを、田中と木村が見せてくれたことは事実です。
読売新聞の「内山高志の目」で自身も二度の日本人対決を経験している内山が「歴史に残る日本人対決」と評価し たのも頷けます。
内山は116−112と試合を採点、「田中が引かずに(フッカーの木村に対して)すぐにストレートを打ち返した。木村はもう少し(速く着弾できる)ジャブやストレートを当てることができれば展開は変わっていた」と勝負のポイントに挙げています。
確かに、その通りですが、ジャブやストレートを起点に攻撃を組み立てていては、木村の〝暴風雨スタイル〟は成り立ちません。それじゃ、暴風雨じゃないのです。
木村に〝タラレバ〟があるとしたら、海外での前戦から二ヶ月も経たない短いスパンで、キャリア最強の相手をアウエーで迎えなければならなかったことでしょう。
この試合間隔の短さが、木村にとってプラスだったのかマイナスだったのかと考えると、マイナス要素の方が大きかったのは間違いありません。
もっとフレッシュな状態で、中京の俊才と戦わせたかった…。
もちろん、こんなタラレバはファンがのたまう戯言に過ぎません。
木村翔は、負けたのです。
ボクシングにおける敗北は、他のスポーツのそれとは全く意味合いが、重大さが異なります。
他のスポーツでは敗北は簡単に忘れられ、乗り越えることも出来ます。
たったの1敗ですら 、ジョージ・フォアマンやトーマス・ハーンズはその軛に苦しみ続けました。
しかし、木村翔のこの敗北は、少なくともファンにとっては「また、あなたの面白い試合が見たい」というリクエストの熱量を引き上げるのに十分過ぎる、大きな〝勝利〟を収めた試合でした。
この夜の木村は、田中の引き立て役では、決してありませんでした。
月並みな言い方、ベタベタで申しわけありませんが、この試合のBiggest Winnerは、田中ではありません。もちろん、木村でもありません。
ボクシングファンです。
ファンを勝者にしてくれる試合なんて、滅多にありません。
そんな、貴重な試合を見せてくれた二人に感謝、感謝、感謝です。
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