WWEは米国でも「SHOW」、日本でも「公演」という言葉を使っている通り、スポーツではありませんが広義の格闘技には入るでしょう。

明日、大阪エディオンアリーナのリングに元UFCバンタム級王者ロンダ・ラウジーが登場します。

1978年、藤波辰爾(当時は辰巳)が「WWWF(スリーダブリューエフ)ジュニアヘビー級王座をマジソンスクエアガーデンで大番狂わせで奪取、とんでもない快挙を達成した」というワールドプロレスリング(テレビ朝日)の一方的な報道に、WWWFもジュニアヘビー級も聞いたことがなかったくせに「藤波って人が何だかすさまじいことをやってのけた」と、居ても立っても居られず、野球部の夕練を抜け出し、金曜夜8時に藤波の凱旋試合を見たのを思い出します。

あのWWWFがWWEです。

当時はNWAやAWAという老舗二団体から大きく水をあけられ後塵を排する第三団体でしたが、いやあまさかの超大発展を遂げました。いまやNWAとAWAの方がどこへ消えたのかわからないですね。

プロレスのアイデンテティが揺らぐ中で、中途半端なことをせずにショウに徹したのが成功の最大要因でしょう。

さて、ロンダ・ラウジーです。2008年北京五輪の女子柔道70㎏級で銅メダルを獲得した、米国女子柔道のパイオニアです。その後は将来に迷い、2009年には日本に柔道留学するもたった四日で嫌気がさして帰国。

2010年に総合格闘技に転身すると、一気にブレイク。 女子部門がなかったUFCは彼女のために世界女子バンタム級を創設、そこでも初代王者となり快進撃を続けます。

その人気と報酬は、もはや女子格闘技選手はおろかあらゆるスポーツの女子選手をも凌駕し、巨大なムーブメントを巻き起こしました。

彼女は、かつて旋風を巻き起こしたクリスティ・マーティンや、現在のクラレッサ・シールズら女子プロボクサーは足元にも及ばないステイタスを築き上げたのです。

ラウジーは2015年には「フロイド・メイウェザーにも簡単に勝てる」と豪語、「真剣にプロボクサーになる」という発言から、リング誌は2016年1月号で創刊95年の歴史の中で初めてボクシングとは関係のない人物、つまりラウジーを表紙にしました。
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リング誌は8ページにわたる大特集を組み、ゴールデンボーイ・プロモーションのオスカー・デラホーヤも「GBPは会社創設以来最高の条件でロンダを迎える用意がある」と発言、その商品価値はメイウェザーもパッキャオも超えるかもしれないと言われました。

度重なるメイウェザーへの挑発は大きな話題を呼び、マネーは無視を決め込んでいましたが、あのあざとい商売人のセンサーが世間の異常な盛り上がりに反応しないわけがありません。

マネーは「MMAファイターとの試合はきっとカネになる」と、コナー・マクレガーとの世紀の茶番劇につなげたのは容易に想像がつきます。

しかし、人生の絶頂からラウジーは一気に転げ落ちてしまいます。2015年、元ボクサーのホリー・ホルムの左ハイキックに沈み、パウンドの餌食になって惨敗。

2016年にはアマンダ・ヌネスに一方的に殴られ、わずか48秒で惨敗。ホルム戦で噴出した「打撃に弱い」という弱点は、ラウジーを恐怖のどん底に落としいれ、精神まで蝕むほどでした。

その絶頂期の圧倒的な強さと、より強い相手を前にしたときの信じられないほどの脆弱さ、精神的な弱さの悲劇的なコントラストは「女性版タイソン」と揶揄されました(タイソンは「俺とそっくりだ」とずっとラウジーを応援しています)。

ドナルド・トランプは「人間として出来てないラウジーが惨敗するのを見るのは気分がいい」と言い放ち、デラホーヤは「彼女はボクシングには向いてないね」と手の平を返します。

打撃の恐怖と、手の平を返す世間にノイローゼになりながらもラウジーは前に進みます。
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今年4月8日のレッスルマニア34でプロレスデビュー。 リングに上がったその瞬間に、360度から超大歓声が浴びせられ、WWEの看板選手の座を掴みました。

ラウジーは「MMA創世記に現れた精神的にも技術的にも未熟な女子格闘家」かもしれません。

しかし、特に米国においては史上屈指の女子アスリートとして永遠に記憶されます。

多くの日本人の感性からは「真剣勝負で通用しなくなってプロレス転向」と〝惨めな都落ち〟に映るかもしれませんが、全く違います。

二つの惨めな敗北を喫した2015〜2016年をカウントした2017年度の「World Fame 100 世界で最も影響力のあるアスリート100人(ESPN)」ですら彼女は16位に付けているのです。
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このランクは全女性アスリートの中でも1位(2位はセリーナ・ウィリアムスの19位、ちなみに我らが錦織圭は20位)、コナー・マクレガー(25位)、 マニー・パッキャオ(59位)、カネロ・アルバレス(89位)を抑えてMMA、ボクシングを含めた格闘技部門でも1位でした。

そんな、史上最強の女性チャンピオンが明日、エディオンリーナのリングに上がるのです。

私は、明日も東京で仕事です。観戦できる人が、本当に羨ましいです。