圧倒的に強いが、人気はない。弱い相手ばかりと戦っている。

ゲンナディ・ゴロフキンが背負っていた重い十字架を、下すときが、ついにやってきました。

2017年、誰もが認めるミドル級の強豪、WBA王者ダニエル・ジェイコブスを迎えての統一戦。この試合後に、高級時計メーカーHUBLOTが、GGGを親善大使としてシポンサー契約を結んだと発表しました。

そして、念願のメガファイト、カネロ・アルバレスとの対戦も正式決定。2010年に世界王者になってから7年、GGGを翻弄してきた潮目は確実に変わりつつあります。

しかし、この7年間でGGGは35歳になり、衰えの足音は確実に大きく聞こえてきました。

昨年のケル・ブルック戦ではスピードに戸惑い、力任せのフィニッシュにしか持ち込めませんでした。

ジェイコブスを仕留めきれないばかりか、相手の体格に手こずったのも、ミラクルマンが打たれ強いアゴを持っていたからではありません。

3年前のGGGなら、あれほどカネロを押し込めば、決定的なパンチを何発かはヒット出来たでしょう。

反射の衰えは明らかで、防御面では不用意なパンチをもらうシーンが増え、自慢の攻撃でもタイミングと精度に狂いが生じて、いわゆる当て勘が鈍ってしまいました。

来年5月6日に予定されているカネロとの再戦では、36歳になるGGGの劣化は進み、そのときまだ27歳のカネロは更に強化版となっているでしょう。

再戦でもジャッジは、人気者に追い風を送るでしょう。そして4人目のジャッジ「時計」もまた、カネロ贔屓の判定を下すことは間違いありません。

ジェイコブスを迎えるまで「一人も強い相手と戦っていない」GGGは、本人の責任では無いとはいえ、これまで歴史的な評価に値するレガシーを築くことが出来ていません。歴代2位の19連続防衛、階級記録の17連続KO防衛…いずれも内容の無い数字だけです。

快進撃を続ける無敵の選手を「負けるのが怖いから」と有力選手や人気選手が対戦を避けるなんて、他のスポーツではありえません。その選手が衰えるまで、対戦を引き延ばすなんてことはありえません。

そんなスポーツの根元に関わる最も重大な部分を歪めることが平気で許されてしまうのが、プロボクシングの世界です。


【カルロス・モンソンは幸せでした。一団体時代の名残で議論する余地の無い王者であったがゆえに、彼を倒さなければ王者になれない環境では、対戦相手は逃げることはできませんでした。】

リング誌2015年7月号で特集された「ミドル級最強は誰か?」。テディ・アトラスら「トレーナー」、ハロルド・レダーマンら「メディア」、ブルース・トランプラーら「マッチメイカー」、クレイグ・ハミルトンら「歴史家」の4部門の専門家が仮想対決の結果をもとに投票した企画で、当時全盛期のGGGは「ワイルドカード」で参加。

シュガー・レイ・ロビンソンが優勝、マービン・ハグラー、ロイ・ジョーンズ、カルロス・モンソン、ジェイク・ラモッタに続いて、GGGは6位に入りました。7位はバーナード・ホプキンス、8位ジェームズ・トニー、9位ニノ・ベンベヌチ。

しかし、この6位は現役選手にエールを送る、明らかなボーナスランキングです。何しろ、最も重要な「誰に勝ったのか?」という命題にはGGGは沈黙するしか無いのですから。

今、この企画があれば、GGGはホプキンスより上に行くことは無いでしょう。



来年5月、メキシコ最大のお祭り、シンコデマヨでカネロに敗れるようなら、GGGは「弱い相手とばかり戦って19度防衛した王者」として記憶されてしまうかもしれません。

ゲンナディ・ゲンナディビッチ・ゴロフキン。

偉大なカザフスタン人の名前が、理不尽なプロボクシングの仕組みの不憫な犠牲者として歴史に刻まれるなんて、受け入れがたいことです。

カネロに勝たねばなりません。3人のジャッジにも、時計にも勝たねばなりません。

そして、何よりも、不条理に腐敗したプロボクシング界の闇に、打ち勝たなければなりません。