いよいよ、明日、ニューヨークはバークレイズセンターでゴングが打ち鳴らされるマイキー・ガルシア対エイドリアン・ブローナー。

スーパースター候補と騒がれながらも、マイキーはプロモーターとの契約問題のコジレから、ブローナーは身から出たサビと防御の欠陥が曝け出されたことから、遠回りを余儀なくされた二人の激突です。


【「マイキーとブローナーの未来は明るい」。今から5年前、2012年頃は世界中のボクシングファンが期待していましたが、マイキーはリングの外(契約問題)で、ブローナーはリングの内外で大きな壁にぶつかってしまいました。】

スタイリッシュな人気者マイキーと、リング内外で奔放な野獣ブローナー。この二人の試合は、ちょうど35年前1982年に拳を交えたアーロン・プライアーとアレクシス・アルゲリョが繰り広げたジュニア・ウェルター級の名勝負(第1戦)のような素晴らしい試合になると煽られています。

確かに、140ポンド、ジュニア・ウェルターという階級だけでなく、マイキーとアルゲリョのボクシングはどこまでも美しく、プライアーとブローナーの破天荒な野生も類似しています。また、プライアーとブローナーは同じシンシナティ出身。

共通点はそれだけではありません。マイキーとブローナー、そしてプライアーの3人は身長168㎝、リーチ175㎝と全く同じなんです。ただし、アルゲリョだけは身長178㎝、リーチ183㎝と頭抜けています。

プライアーがジュニア・ウェルター、ブローナーがライト、マイキーがジュニア・ライトと近接した階級からデビューしている一方で、3人よりも10㎝も長身のアルゲリョはバンタム級デビューという点からも、このニカラグア人だけ明らかにシルエットが違います。

そして、明日のニューヨーク決戦の見所は試合だけでなく「ブローナーが140ポンドの体重を作れるのか」という点にも注目が集まりました。

前の試合(エイドリアン・グラナドス戦は140ポンド契約ながらブローナーが体重を落とせなかったことから147ポンドに変更され、試合もグラナドスが勝っていたと見られています)で一悶着を起こしたブローナーは「気を抜いて180ポンド(86.2㎏)まで体重が増えたんだ。そこから40ポンドなんて落とせないだろ?147でも20㎏近く減量したわけだから」「そんな状態だから気持ちも入らないし、体も動かなかったんだ」と言い訳にならない泣き事を並べていましたが、今回は138ポンド3/4で計量を一発クリア。

契約では、1ポンドオーバーにつき50万ドルのペナルティが課せられていましたが、これも払わずに済みました。

この試合はノンタイトルの12回戦(ジュニア・ウェルター級のダイアモンドベルトがかかっていますが、この試合を「階級最高の試合」と認定するとは恐れ入ります、さすがWBCです。もはや「階級最高」の試合にかけるなんて言わなきゃいいんですが…)ですが、トップ戦線に復帰した無敗のガルシアは、キャリア最大のビッグネームとの対戦に無敗のレコードを賭けます。

一方でマルコス・マイダナ、ショーン・ポーターというゴリ押しファイターに二つの黒星を付けられているブローナーは、直近の試合の出来も悪く、評価は急降下、生き残りの一戦となります。

35年前は王者プライアーにアルゲリョが史上初の4階級制覇を賭けて挑む「THE BATTLE OF THE CHAMPIONS(真の王者同士の決闘)」と銘打たれたボクシング史に持つ意味でも大きな試合でしたが、今回は「THE BATTLE OF 〝A〟 CHAMPIONS(数多くの王座が溢れる中で4階級制覇したブローナーと、3階級制覇しているマイキーの戦い)」ですね。


会場は1982年がオレンジボウル(NFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地で2008年に解体されましたが、日本人にとってはサッカーの「マイアミの奇跡」の舞台であり、その跡地に建ったのがマーリンズパーク、イチローがプレーするマーリンズの本拠地として思いれがある土地です)。ここに2万3000人を超える大観衆を集めました。

明日のリングはバークレイズセンター。ニューヨークのスポーツシーンを彩る新しいメッカとはいえ室内競技場、キャパシティは1万8000人ですが、さてどこまでシートを埋めることが出来ますか…。

そして、気になる両者の報酬。プライアーは160万ドル(当時の為替レートで約4億円)、アルゲリョが150万ドル。

対して、マイキーとブローナーはそれぞれ100万ドル(現在のレートで約1億1000万円)と、4分の1、35年という長い時間まで考慮すると悲しいほどのスケールダウンです。このスポーツが辿って来た凋落を如実に表す数字です。マイキーとブローナーには、試合内容で100万ドルは安い!とアピールして欲しいところです。

オッズはプライアーvsアルゲリョが5−4レベルで接近、マイキーvsブローナーは試合が近づき拮抗してきたとはいえ2−1でマイキー有利。

35年前は、美しいボクシングと右強打のアルゲリョを、プライアーが野生的な手数とスタミナで侵攻、14ラウンドTKOで決着をつけました。

【2009年7月1日、自宅で亡くなったアルゲリョ。少し疲れて寝ているだけのようにも見えます。その死因は未だに謎のまま、あの英雄が自殺したとは考えたくないのですが…。前年に首都マナグアの市長に当選していたボクシング界の伝説は、北京オリンピック入場行進で旗手も務めました。このときはフィリピンの旗手がパッキャオ、ボクシングファンにとって晴れがましい五輪マーチとなりました。】

今回も、一発の強打はガルシア、手数でブローナーと同じような展開が予想されています。

大方の予想は、ブローナーが集中力を欠いていき、着実にポイントを重ねるマイキーが終盤ストップか明白な判定勝ちする、というところです。

ESPNの視聴者投票でもマイキー勝利が71%(KO42%+判定29%)、ブローナー28%(12%+16%)と専門家予想に沿っています。

35年前は日本でも戦ったアルゲリョを熱狂的に応援しましたが、今回のマイキーにはそういう思い入れはありません。軽率で薄っぺらなブローナーもイマイチ好きにはなれませんが。

天邪鬼ですが、ブローナーのガチャガチャした連打にマイキーが削られていく展開で、番狂わせを予想します。

とにかく、35年前を思い出させてくれるような、両者噛み合った大激戦を期待したいですね!