日本時間の白昼に、私たちが見たUndisputed Super-Middle weight championship。番狂せが起きましたが大番狂せではありません。

専門家予想では最も多くの支持を集めた「テレンス・クロフォードの判定勝ち」に終わったのですから、ある意味で番狂せとも言えないかもしれません。

さて、この試合の事実だけを12ラウンド制で拾い上げると。。。。。

【ROUND1】2025年バージョンのカネロ・アルバレスとテレンス・クロフォードが対決した。

35歳のカネロに37歳のクロフォード。全盛期同士の対決と考える人は皆無。

しかし…カネロの鈍足は重い枷をはめられたようでしたが、クロフォードのフットワーク、ボディワークは見事でした。懸念された〝トムとジェリー〟ファイトではなく、打撃戦にも応じて科学的に戦って見せた。



【ROUND2】クロフォードは実質21ポンドも重い階級に挑戦し、成功した。

スーパーミドル級を主戦場にするカネロに、ジュニアミドル級で1試合しかこなしていない、クロフォードはウエルター級から数えると21ポンドも増量して挑んだ。

「スーパーミドルのリミットにこだわらず、軽く仕上げるべき」という多くの識者の意見を無視して、前日計量をカネロと同じ167ポンド1/2(75.97kg)で秤を降りたクロフォードの肉体改造はマイケル・スピンクスやマニー・パッキャオに並ぶ偉大な成功。



【ROUND3】ラスベガスは永遠にカネロを愛す。

サウジアラビアが主導するメガファイトは、オレクサンデル・ウシクのケースから「ジャッジは公正」と考えられていたが、オフィシャルのスコアはカネロに寄り添っていた。

115−113の1ラウンド差はもちろん、116−112のスコアも考えられない。



【ROUND4】クロフォードの対戦相手の質にはもう文句をつけられない。

クロフォードはエロール・スペンスJr.に続いて、2人目の現役PFPファイターも明白に撃破。カネロは2度のFighter Of TheYearにも選出され、PFPキングにも2年間君臨した文句なしの強豪。

スペンスもカネロも勢いを失った時期とはいえ、それを差し引いても明白な勝利を二つ並べたクロフォードの評価は爆上する。



【ROUND5】カネロはスーパーミドル級で初めて苦戦を強いられた末に、敗れた。

168ポンドで圧倒的な存在感を示してきたメキシカンが、何もできないままにアフリカーナ・アメリカンの軍門に降った。

フロイド・メイウェザー、ドミトリー・ビボル、そしてクロフォード。3つの黒星の中で、最もレガシーを傷つけられた敗北だった。



【ROUND6】10年ぶりの重要な試合だった。

クロフォードがスターかどうかはさておき、あらゆる意味で「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」以来のボクシング界の最高決定戦だった。

この勝利がクロフォードの評価にもたらす恩恵はあまりにも大きい。



【ROUND7】米国ボクシングは羅針盤を失った。

カネロが敗れたことで、米国ボクシング市場は最大のスターを失い、クロフォードでは後継者になれない。

モハメド・アリからシュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスーーー常にマーケットを牽引してきたスターの系譜がついに途絶えた。

スポーツライクなメガファイトは規模を縮小、茶番劇がますます横行する。



【ROUND8】カネロはデビッド・ベナビデスとは戦わない。

試合後に再戦を希望していたカネロだが、この試合で失ったものはもう取り返せない。カネロの価値は下落した。

長年、対戦を回避してきたベナビデスとのメキシコ対決の賞味期限(というか消費期限か?)は完全に切れた。



【ROUND9】クロフォードのムーンショットはこれ限り。

クロフォードは〝パッキャオ路線〟を走ってライトヘビー級に乗り込むには年を取り過ぎた。

カネロという勝てば現代最大のハイリターンを手にしたいま、ジャロン・エニスのようなハイリスク・超ローリターンとの対戦は全く意味がなくなった。

このまま勝ち逃げも考えられる。



【ROUND10】カネロ人気はこれが最後の大花火。

アレジアントスタジアムには想定以上の7万人以上が詰めかけた。カネロの久しぶりのKO劇を期待した多くの観客は、熱中時代の終焉を感じ取ったはず。カネロの夏は完全に終わった。

そして、井上信者は本物のラスベガスを見てしまった。



【ROUND11】クロフォードはPFPキングに返り咲く。

クロフォードの素晴らしいパフォーマンスは、ウシクのように圧倒的不利な現実の体重で見せたものではなく、スーパーミドル級の体重で鈍化したスーパーミドル級の王者を翻弄したもの。

しかし、ウシクが一度も倒していない現役PFPファイターを2人倒したクロフォードにはキング復帰への証明書が発行された。



【ROUND12】認定団体は追い詰められた。

「WBA、WBC、and IBF!Undisputed heavy weight champion of the world!」。マイク・タイソンらのリングコールのように、コレクションしたベルトの認定団体を紹介されるのが常でした。

しかし、今日の試合でコールされたのはRing magazineだけ。アルファベット団体のデタラメランキングと、デタラメタイトルマッチが、ボクシングの地位を貶めているのは明らかで、そこにメスを入れないと「ボクシングの復活」(トゥルキ・アル=シャイフ長官)など、おぼつきません。

いまだに「世界ランカーは強い」「世界1位は強い」と思い込んでいるファンもいますが、認定団体を喜ばせるだけです。また「階級が細分化されているのは正しい意味がある」というのも大間違いで、クルーザー級以外の水増し階級は廃止、UFCの8階級にクルーザーを加えた9階級が理想です。