リング誌7月号から「DOUBLE JEOPARDY(井上尚弥は二つの関門を突破できるか?)」。

記事は、年末にWBAフェザー級王者ニック・ボールとの対戦が内定と伝えられていた時期に書かれたもののようで(実際には井上陣営が回避)、ボールやWBC王者ラファエル・エスピノサとの対戦展望もありますがここでは、ジュニアフェザー級での中谷潤人戦に絞って、粗々でご紹介。

スクリーンショット 2025-06-29 20.38.41

*****バンタム級とジュニアフェザー級でUndisputed champion(議論する余地のない王者=他の誰にも王者を名乗らせない王者)になった井上尚弥は圧倒的なパフォーマンスを見せつけてきた。

水槽の中に獰猛なコブラと生贄のネズミを入れたあとに起きることが、リングの上で繰り返されたのだ。

しかし、この1年で井上はルイス・ネリとラモン・カルデナスにダウンを喫してしまった。

2015年にリング誌の Trainer of the Yearに選ばれたジョー・ギャラハーは「ダウンすることを大袈裟に取り上げる必要はない。多くのエリートファイターはダウンした後に逆襲のパフォーマンスを見せてきた」と擁護するが、井上がキャリアの終盤に来て難しい時期を迎えているのは間違いない。

9月14日にはムロジョン・アフマダリエフ、そして来年には中谷潤人との無敗のPFPファイター対決が期待されている。

井上vs中谷は日本ボクシング史上最高のマッチメイクになる。

井上はPFPリストに長らく回遊し、一発殿堂もある。十分な評価を固めている。それなのに、さらに階級を上げてガーボンタ・デービスとの対戦を煽るファンもいるが、もっと現実を見つめるべきだ。

中谷との試合は非常に興味深い。

井上をプロモートする大橋秀行は「中谷は階級を上げるとさらにパワーアップするだろう」と警戒する。

中谷のトレーナーをつとめるルディ・エルナンデスも「井上は中谷のようなファイターと対戦したことがない。そして、我々も井上のような相手と戦ったことがない」「個人的には井上がPFP1位だと考えている。この最高評価を得ている時期に、彼を倒したいんだ。井上は衰えていたから負けた、とは誰にも言わせたくない」と、モンスターを高く評価している。******




「ダウンしたことを大袈裟に取り上げる必要はない」というのは、その通りなんですが、井上のケースはネリとカルデナスという評価が低いだけでなく、一発強打を持たないはずの相手に一撃で転がされたのが気になります。

東京ドームとTモバイルアリーナという特別な舞台で気負っていたのは間違いありませんが、苦手のクロスレンジに不用意に入ってしまったのは気負いだけだったのでしょうか。

ルディの「両者にとって厳しい試合」という見立てはその通り。

井上のキャリアで最強は、直近の試合で悪戦苦闘した39歳バージョンのオマール・ナルバエス。無敗のままフライ級とジュニアバンタム級の2階級制覇、それぞれ二桁防衛しながらPFPには無縁という〝離れ業〟をやってのけたアルゼンチン人の評価はそもそも高くなく、ノニト・ドネア戦でのチキンな闘いぶりでメディアやファンから軽蔑されたボクサーでした。

そのドネアも井上が勝ったのは、すでに傷モノの36歳と39歳の劣化版。

一方の中谷が勝利した最強は、IBF王者の西田凌佑。中谷と戦わなくても安定政権を築くとは誰も考えていない西田でしたが、強烈な勝負根性で向かってきました。西田に続くのは、井上に惨敗したドネアに完勝したアレハンドロ・サンティアゴか。

結果論的な見方では、倒せなかったという意味でも、ファン・フランシスコ・エストラーダを追い詰めたアルヒ・コルテス、井岡一翔を苦しめ、ガラル・ヤファイからWBC暫定フライ級ストラップを強奪したフランシスコ・ロドリゲスJr.かもしれません。

いずれにしても、両者は現役PFPファイターや、未来の殿堂入りが見込まれる超強豪との手合わせはゼロ。

井上にとっても、中谷にとっても、互いにキャリア初のPFPファイター。

試合が終わって「Fight Of The Year 決定」、勝者が「Fighter Of The Year 決定」という名勝負を期待しています。