藤波朱理が期待通りにパリ五輪で金メダルを獲得、137連勝と言う驚異の記録を伸ばしたことにお祝いと尊敬を込めて。

プロボクシングでも、藤波のように世界から大きな注目を集められますように。




レスリングの連勝記録は1964年東京五輪フリースタイル・フェザー級王者の渡辺長武が189連勝、藤波のコーチを務める伊調馨もやはり189連勝(不戦敗を除く)、吉田沙保里が119連勝など〝大型連勝〟が目立つスポーツです。

プロボクシングのヘビー級ではロッキー・マルシアノがデビューから49連勝をマーク、全戦全勝無敗のまま引退。この記録は「無敗のまま引退した王者の連勝記録」であり、連勝記録としてはデビュー以来87連勝したフリオ・セサール・チャベス、同じく54連勝(53KO!)無敗のカルロス・サラテなど「無敗のまま引退」の縛りを外すと何人かのボクサーがマルシアノを上回ります。

また、マルシアノの「無敗のまま引退」記録は、フロイド・メイウェザーが「50」まで伸ばしましたが、非ヘビー級のため大きな注目を集めることはありませんでした。

「記録」「数字」というのは対戦相手の質によってその中身が吟味されるべきもので、練習試合まで含めた「高校通算本塁打記録」などは選手評価の参考値の域を出ません。

マルシアノにしても、まともなメディアでヘビー級最強の評価を得ることはありません。

「中身の吟味」で、額面通りに受け止められていないのは王貞治の世界記録「868本塁打」も同じ。

王の偉大さには文句のつけようがありませんが、868本塁打は箱庭球場・飛ぶボール・圧縮バット、そしてMLBで全く通用しなかった選手がタイトルを獲ることが珍しくない日本野球のレベルという環境の中で生み出された記録でした。

今後、868本塁打を更新する選手が登場するのか?と考えると、多くのファンはそんな強打者なら日本で王の記録に挑戦するよりもMLBに行くべきと考えるでしょう。



さて、日本ボクシングの「数字の記録」で真っ先に思い浮かぶのは、具志堅用高の日本人と(当時)ジュニアフライ級の連続防衛記録「13」です。

井上尚弥や重岡銀次朗らが目指した「13」は、40年以上も更新されないままです。

王の「868」と違って「13」は一応〝世界〟の記録ですが、いずれの数字も日本国内で作られたもの。米国や世界でまともな注目を浴びることは一切なかった日本国内限定の世界記録。

1980年代初頭までは〝国内産の世界記録〟が大きなわだかまりもなく受け止められる、そんな時代でした。

プロボクシングは、21世紀になっても〝国内産〟が世界で大きく評価されていると勘違いしているファンが多く取り残されている奇天烈なスポーツです。

さらにタイトルの粗製濫造・大量生産と前日計量によって、安易な階級制覇がボクシング界の主流となっており、同一階級で連続防衛に傾注するファイターはヘビー級を例外に非常に稀有な存在になっていることも「13」の更新にどこまでの意味があるのかを不透明にしてしまっています。

軽量級で複数階級制覇の数字を伸ばす、PFPランキング(箱庭球場や圧縮バットと同じロジック)を上げることと、人気階級にクサビを打ち込むこと、どちらが本物の世界により大きなインパクトを与えるのか…考えるまでもなく答えは決まっています。

サッカーも野球も20世紀の終わりに「本物の世界」への扉が開かれました。

もちろん、軽量級は偽物の世界ではありません。しかし、米欧ではほとんど無視されています。「米欧の評価なんてどうでもいい」という潔いスタンスなら、全く構いません。

しかし、そうではなくラスベガスのT -モバイル・アリーナやニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン、ロンドンのウィンブリー・スタジアムでメインを張れる人気階級で活躍することの価値を認めるなら、そこから目を逸らしてはいけません。

PFPに複数の日本人がリストアップされ、バンタム級のストラップを日本人が独占する一方で、ウェルター級のタイトルは歴史上たったの一つも手に出来ていないーーー。

それが単なる偶然などではなく、米欧の人気階級だから日本で好き勝手出来なかったというのが最大の理由であることを、ずっと長い間、見えないふりをしてきたのが、ボクシング界でありボクシングメディアであり、ボクシングファンです。