2018年でボクシングビジネスから撤退したHBOが、多くのファンに名残惜しまれた要因はいくつもあります。

HBOがなくなってもSHOWTIMEがある、プレミアムケーブルが離れてもネット配信企業が受け継ぐ。テレビで気軽に見れなくなる、ボクシングのマイナー化がさらに進んでしまうという懸念を考えなければ、HBOはプラットフォームの一つに過ぎません。

私がHBOに思い入れがあるのは、ビッグファイトの番組宣伝で制作される「24/7」のレベルの高さでした。これで一つの作品、と感心する出来栄えのものも少なくありませんでした。

「FIRE POWER(試合のタイトル)」の24/7も印象に残っている作品の一つです。

脚の長いストゥールに座って向き合ったマニー・パッキャオとミゲール・コットが、貧しかった少年時代を語り合いあうチャプターでは、お互い海辺の街で暮らしていたことで共感して微笑み合って、会話が弾むのです。

彼らは役者でもないし、演技の才能なんてないはずなのに、台本があるはずなのに嘘みたいに自然に語り合っているのです(二人とも母国では国民的英雄で映画やドラマに出演してるからど素人ではないとはいえ)。

もし、この二人のことを知らない人が見たら…幼馴染みが昔話を楽しんでいるようにしか見えなかったでしょう。

そして、この二人のことを知ってる人にとっては「おいおい、こんな形で〝嵐の前の静けさ〟を演出するなんて、この作品の監督は天才か?」とワクワクするしかないのです。

最近の〝格闘技?〟の煽りがダメとは言いませんが、同じことばかりだと飽きちゃいます。

さらに、最高に戦慄するのはとんでもないレベルに達している二人のファイターが、決戦とは関係のない身の上話で笑い合ってるシーン、それほどゾクゾクするものはない、ということです。

あの24/7でパッキャオとコットが罵り合って、ストゥールを相手に投げつけたり、殴り合おうとするのを関係者が止めたり、そんなストーリーでもそれなりに面白いとは思いますが、本当に戦慄するのはそれじゃないんですよね。

最後は、話の尽きない二人がカメラに目を向けて「もう終わり?」と名残惜しそうにハグして「試合が終わったら続きを話そうぜ」と別れるのです。

全てが台本通りの演出なのはわかっていても「この試合はとんでもないことになる」と確信してしまう、完全にHBOの思い通りにされちゃってるのでした。


さて、なんでこんな話をしたかというとABEMA ボクシング 【公式】の「【禁断すぎる】『井上尚弥ってどんな存在?』井岡一翔に聞きづらいことどんどん聞いてみたら…!12.31井岡一翔vsホスベル・ペレス ボクシングWBA世界S・フライ級タイトルマッチ」を見たからです。

もちろん、これも24/7と同じ〝番宣〟です。

DAZNなんかもビッグファイトではHBOの24/7を真似て番宣を流していますが、優れた作品と呼べるレベルのものは皆無です。

HBOとDAZNではボクシングに捧げてきた時間や情熱が違いますから、DAZNやアマプラにすぐ同じことができるわけもないのは当然です。

これから、時間をかけて、ネット配信でしかできない〝24/7〟を作り上げていただければ、最高です。



話が横道に逸れる前に、本題に戻します。

https://www.youtube.com/watch?v=beXq3JJEo0s

ABEMA ボクシング 【公式】の「【禁断すぎる】「井上尚弥ってどんな存在?」井岡一翔に聞きづらいことどんどん聞いてみたら…!12.31井岡一翔vsホスベル・ペレス ボクシングWBA世界S・フライ級タイトルマッチ」です。

これはアリです。

DAZNと違って、良い意味での最初っからHBOの24/7なんて全く意識してません。ステージが違います。

もちろん、ABEMAはこの路線でずっと進むとしてもOKなのかというと、ちょっとわかりませんが。

とりあえず「井岡一翔とTKO木下のダチのしゃべくり」。これはありです。

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話はちょっと変わって、ファン・フランシスコ・エストラーダとの対戦について。

エストラーダは1年間試合を行わなかったため、BoxRecなどのランキングから名前が消えています。これによって、BoxRecでは1位が中谷潤人、2位が井岡一翔と日本のファイターがワンツーに躍り出ています。

井岡とエストラーダは相思相愛。井岡はPFPファイターに定着しているエストラーダの評価の高さをリスペクト、エストラーダはジュニアフライ級時代から「日本で井岡と戦いたい」と夢を語っていました。

この相思相愛が破談になった原因は、価値観の違いに尽きます。

「日本でやるのも悪くはないが、米国なら(軽量級でも盛り上がる)ザ・フォーラムが最高」と語った34歳の井岡に対して、33歳のメキシカンは「フォーラムよりも日本の方が盛り上がるし、報酬が全く違う」とカネへのこだわりをあらわにしました。


エストラーダが10年以上も井岡に〝恋〟していたのは、軽量級が評価される日本への憧れもあったでしょうが、本質的にはカネへの執着です。

一方で、井岡がエストラーダに〝好意〟を寄せたのは、その評価の高さであり、カネの優先順位はずっと下でした。

軽量級において、日本のスター選手からしたら「無名の強豪」は眼中にありません。そして「無名の強豪」にとっては、日本のスター選手は対戦したい憧れの存在なのです。

まあ、これは仕方がないですね。