まだ記憶に新しい、井上尚弥のバンタム級完全統一。

井上が118ポンドに乗り込んだのは2018年5月25日、WBAセカンド王者ジェイミー・マクドネルに挑戦したときでした。

減量大失敗で重篤状態だった英国人を92秒で轟沈した井上は、この試合が16戦目。この時点でのバンタム級シーンは、ゾラニ・テテが1位で井上はいきなり2位に格付けされていました(リング誌)。

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階級最強候補のライアン・バーネットは3位、そのバーネットがIBF王座を放棄し、対戦を先延ばしにしタイトルを獲得したのが4位のエマヌエル・ロドリゲス。

5位には完全劣化バージョンとはいえ、PFPファイターのアンセルモ・モレノを大番狂せで破ったファン・カルロス・パヤノ。

WBSS開幕前のこの段階では、英国の人気者バーネットに、プエルトリコのホープ10傑にも数えられたロドリゲスという楽しみなターゲットが二人存在しましたが…。

バーネットは圧倒的有利予想だったノニト・ドネア戦を腰椎すべり症で落とし、ロドリゲスもジェイソン・モロニー戦で信じられないほどの気持ちの弱さとディフェンスの欠陥を曝け出してしまいます。

残る興味はマクドネルと同じ長身のバンタムながら、実力評価は遥かに高いテテでしたが、WBSS準決勝のドネア戦を怪我を理由に棄権。口頭で約束された報酬と、書面の報酬の格差に絶望し、WBSSの欺瞞に怒りを抑えきれなかったのが、棄権の本当の理由と言われています。

そのテテは、ジョンリール・カシメロにまさかの大番狂せでノックアウト負け。

井上のバンタム級統一ロードの前に立ち塞がるのは、このランキングには名前の見当たらない全盛期から8年過ぎたドネアと、一発屋カシメロになってしまいます。

井上にとってバンタム級を焼け野原にして完全統一するのは、最後に残された相手がポール・バトラーという心身ともに穴王者、造作もない作業になってしまいました。

勝つ気のないバトラーに井上が「何しに来たんだ?」と吐き捨て、松本人志は「全然、バトラーじゃなかった」と呆れ果てた試合で、バンタム級の完全統一は幕を閉じてしまいます。

ワールド・ベースボール・クラシックのフィナーレを「これ以上の物語はない」と評した沢木耕太郎の言葉を借りると、井上のバンタム級統一は、その強さが頭抜けていることを考慮しても「これ以下はない」という見応えのないものに終わってしまうのです。