銀座裏通りにあるお洒落なミニシアターで映画を観たあと、ふと目に止まったのが「ドムドム ハンバーガー」。

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象のロゴマーク、懐かしい。↓

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あまりにも周囲の風景に溶け込んでいて、今まで気づかなかったのか、それとも最近出来たのかはわかりませんが、ドムドムハンバーガーは昔、むかしも大昔にダイエーのフードコートに入っていたハンバーガーチェーンです。

マクドナルドなど後発のメジャー勢力に駆逐され、ダイエーも沈没してしまった今、なぜ生きながらえていたのかわかりません。

きっと、ドムドムもいろんな紆余曲折の人生を歩んできたのでしょう。

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昔むかし、大昔のチープなイメージはどこへやら、1000円以上が当たり前の高級店に様変わりしていました。

これは俺の知ってるドムドムではない…。

全くの偶然ですが、高校時代に引きこもっていた場末の映画館の近くにもダイエーがあり、ドムドムがあったのです。

そして、そこでちょっとした、ひと夏の思い出がありました。

あの日も、暑い夏の日でした。

ダイエーに入ることなど滅多になかった俺なのに、その日は小腹が空いたのか何かで、映画観ながら食おうとドムドムでバーガーを買ったのでした。

カウンター越しにバーガーとコーラを受け取ると、店員の女の子が「三島先輩、何してるんですか?」と、大きな目をして聞いてきました。

ドムドムのダサい制服が良い意味で似合ってて、すごく可愛い女の子でしたが、見たことがあるようなないような…。

高校からはかなり離れていたエリアで、高校の知り合いに会うわけがない、そもそも高校の知り合いやら友人知人が極端に少ない俺に、こんな可愛い後輩なんていないはず…。

ここで、外国高校のお行儀の悪い喧嘩相手と遭遇しても驚きませんが、まさかまさか、俺の名前まで知ってるその後輩らしき女の子、見たことある気もするけど、誰だか思い出せない…。

そんな俺の戸惑いに気づいた彼女は「岩崎です!村井くんにチョコレート渡してもらった岩崎です」と自己紹介してくれて、その年のバレンタインデーに野球部の後輩にチョコレートをことづけて来た女の子であることをやっと思い出しました。

そして、その日は間違いなく平日でした。

私たちは少し気まずくなったところで、さらに気まずいというか、緊張が走るというか、非常にまずい事態が…。

授業サボって映画観ようとしてる俺と、バイトしてる彼女、そのすぐ近くのテーブルで映画館でしか会ったことのないガラの悪いオッサンがフライドポテトをつまみにビールを飲みながら「あれぇ?彼女おったんかぁ?」と、赤ら顔で話しかけてきたのです。

当時は規制緩和前、フードコートはもちろんダイエーにも酒は売っていなかった時代です。

そのおっさんはいつもクーラーボックスを肩にかけてビールやらウイスキーやら日本酒やらを映画を見ながらあおっていたのでした。

心の中で「なんでお前がドムドムにおんねん?」と呪いながらも、初めて明るい場所で見るそのオッサンが発散する強烈な負のオーラが、純真な女の子(授業サボってバイトしてるけど)には一番見せてはいけないものだとあらためて痛感しました。

暗い映画館の中でも、ちょっとガラの悪いオッサンなのはわかっていましたが、明るい場所で見るとそれが〝ちょっと〟なんてもんじゃないレベルで、ガタイが良いのもよくわかりました。

この暑さの中、薄い麻製のスーツをピシッと着こなし革靴を履いてるファッションはもはや堅気ではありません。

そのあたりも、お行儀が良いとは到底いえない場所柄で「売るな!買うな!覚醒剤」「暴力追放 正義の街」…そんな看板があちこちで叩き割られながら風に揺れているようなところでした(残念ながら過去形ではなかったりして…)。

きっとビビってるやろなあと思いながら、岩崎さんの顔を覗くと「知り合いですか?」と、少し笑みを浮かべながら興味津々にヒソヒソ声で聞いてくるのでした。

しかし、元メジャーリーガーなヤクザだったオッサン(そんなことそのときはもちろん知りませんが、まあそのスジの人、2Aクラスの輩くらいには思ってました)は「ほな、仁義なき戦い、先に行っとるど。可愛い彼女も一緒に連れておいでや」とキリンラガーの小瓶をラッパ飲みしながら、平日のガラガラのフードコートを去っていくのでした。

私は「一緒に来るか?」なんて誘ってないのに、岩崎さんは「ここ夜まで入ってるから」と大袈裟に首を横に振りながら「あの人、知り合いですか?」とまた聞いてくるのでした。

「あんなオッサン、知り合いなわけないやろ。酔っ払ってるか、クスリ打ってラリっとんやろ」と、少し強めに否定した私に、彼女は顔の前で二の腕を立てるとメトロノームのように忙しく振幅させながら「嘘発見器が大きく反応しております」とクスクス笑うのでした。

彼女なんてもちろんいない、引きこもりで女子と話すことも全く慣れてなかった俺にとって、岩崎さんの表情や仕草は感動的に可愛くて、不登校の俺は知らないけど「嘘発見器が大きく反応しております」って、クラスメイトとの会話の中で楽しく使われてるんだろうなあ、とか思い巡らすのでした。

だからといって、明日から真面目に学校行こうなんてツユほども思いませんでしたが。

岩崎さんと後輩はその後、めでたく結婚し、昨年夏にも巨大同窓会みたいな場でご夫婦と会ったのですが、ほとんど話はできず。

それまでも、野球部の後輩の方とは何度か会っていましたが、ドムドムの話は一度も出てきてないので、彼女も話してないのかもしれません。

少なくとも、あの夏の日の直後は「お互い見なかったことにしよう」と、暗黙の了解が交わされた気がします。

ドムドム、私もすっかり忘れていました。

それにしても、東京の銀座のこんなところでドムドムと〝再会〟するとは。

セットで注文すると鰻丼くらい食えそうな値段で、ちょっと躊躇いますが、今度かぶりついてみようと思います。