その若者のことを認める人はほとんど誰もいなかった。

よってたかって絶対無理だと断定された。


プロはそんなに甘くないと、切り捨てられた。メジャーでそんなもんが通用するわけがないと、嘲笑された。


目を見張る特大ホームランを打てば、打者に専念しろ。豪速球と鋭い変化球で一流打者を手玉に取ると、やっぱり投手を選べ。

世間の声は、いつも彼がやろうとすることを否定した。


二兎を追う者は一兎をも得ず。結局、中途半端な成績しか残せないと、彼の未来は勝手に決めつけられた。


二つともで信じられない成績を残すと、ようやく世界は気付いた。

間違っていたのは、俺たちの方だったと。


きのう、疲労と消耗で強靭な肉体が悲鳴を上げたとき「やっぱりあんなことを何年も続けるなんて不可能なんだ」と、再び世界は彼のことを疑い出した。

信じられない光景を何度も何度も何度も見せてもらったくせに、世界は性懲りも無く、また「やっぱり無理なんだ」と、信じられなくなった。


先月、29歳になったばかりというのに、これほど「絶対無理」という非承認を集めた若者はいない。

「絶対無理と言われたことだけをやれ」。

高級腕時計のCMで、そう言い放った彼だったが「人から認められるとか、認められないとか、そこには興味はありません」と、ぼそっとつぶやいた。



私は面白いことをするヤツが、無条件で大好きだ。

彼は認められるとか、認められないとかに興味がないのは、私でもわかってる。そして世界は気づいていないが、世界が彼を否定すればするほど、疑えば疑うほど、私はますます面白くなってきたと身を震わせるのだ。


彼に、その言葉を向けるのは軽すぎるかもしれないというコメントをいただいた。

それでも、そういうことだ。


がんばれ。